北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

鳥取島根豪雪災害 陸上自衛隊第13旅団へ災害派遣要請!

2011-01-04 18:56:54 | 防災・災害派遣

◆基盤的防衛力の底力を発揮

 2010年大晦日から2011年元日の二日間、日本海沿岸において観測された記録的豪雪はは特に鳥取県と島根県の交通やインフラに対して重大な影響を与えました。

Img_3555_2  京都の舞鶴基地もかなりの積雪でしたが鳥取県大山町では同町を通る国道9号線が25kmにわたり積雪による通行不能状態に陥り、1000両の自動車が積雪に阻まれ孤立する状況となり、島根県松江市美保関町では降雪により孤立集落が発生する事態となり、鳥取県知事、島根県知事より自衛隊に対して除雪と給油支援に関する災害派遣要請が出されています。

Img_3458  舞鶴基地ですが、手前にはミサイル護衛艦みょうこう、海上自衛隊屈指の大型艦なのですが、実はこの前に満載排水量25000㌧、海上自衛隊最大の自衛艦である補給艦ましゅう、が停泊しています。さて、豪雪は勿論、地震津波や火山噴火といった広域災害、豪雨に台風被害事案を専門に扱う“防災・災害派遣”カテゴリを本記事より開設いたします。

Img_3588  プレートの境界線に位置し、巨大火山が並ぶとともに大型台風の通り道であることから災害大国と評されるわが国は同時に世界最高の防災大国であり続けなければなりません、そう考え、これまで“防衛・安全保障”に記載していた災害派遣に関する記事を専用と改め新カテゴリと致しました、よろしくお願いいたします。

Img_4134  豪雪災害派遣。鳥取県知事より元日0300時、米子駐屯地の第8普通科連隊長に対し除雪支援に関する災害派遣要請が出されました。これを受け第8普通科連隊は第一次派遣部隊として0400時、人員18名と車両4両を派遣、続く0640時に人員2名の車両1両が駐屯地を出発しました。

Img_4139  0925時、国道9号線の孤立地域に到達した部隊は暖房等の維持を目的として孤立車両へ給油支援を開始するとともに、1010時、更に第8普通科連隊より人員44名と車両6両が米子駐屯地を出発、1230時より災害地域における除雪作業を開始しました。除雪作業は1630時まで継続され、人員約70名、車両約10両がこの任務に当たっています。

Img_4147  除雪支援の夜間中断後も孤立車両への給油支援は夜を徹して継続され、除雪作業も翌日0700時より再開されました。2日の除雪作業は夜明けを待って予定通り再開され、1253時に鳥取県知事より撤収要請を受領、派遣規模は人員延べ140名、車両延べ30両として任務を完了しました。

Img_4770  島根県では、元日未明からの豪雪により松江市美保関町の一部において孤立集落が発生したため、1450時に島根県知事より出雲駐屯地第13偵察隊に対して除雪支援に関する災害派遣要請が出されました。出雲駐屯地では直ちに同駐屯地に駐屯する第13偵察隊と、中部方面隊直轄の第304施設隊による災害派遣部隊を編成。

Img_4345  1741時に第13偵察隊より人員18名と車両8両、第304施設隊の人員8名と車両2両を含めた人員約30名、車両約10両の災害派遣部隊を出動させています。しかし、災害現場への駐屯地からの距離や豪雪により展開には難航し同日は部隊の移動に費やされる事となりました。

Img_4352  2日、現地に展開した第13偵察隊と第304施設隊の合同派遣部隊は0610時に除雪作業を開始、1042時には増援部隊として第13偵察隊より人員8名と車両5両、第304施設隊の人員11名が駐屯地を出発しました。増援部隊を持って除雪作業は継続され、同日2218時に島根県知事より撤退要請を受領、任務を完了しました。派遣規模は人員延べ約70名、車両延べ約20両です。

Img_8648  豪雪災害に伴う災害派遣は昨年12月26日にも福島県豪雪事案において発生しており、26日1600時に福島県知事により第6特科連隊長に対して除雪支援に関する災害派遣要請が出されています。派遣地域は福島県耶麻郡西会津町町大字野沢地区の国道49号線で国土交通省の除雪能力を超えた豪雪により車両300両が立ち往生しました。

Img_0162  陸上自衛隊ではこの豪雪災害をあらかじめ予測し、災害派遣要請以前の1334時に第6特科連隊より連絡員2名を車両により福島県庁へ派遣しており、加えて派遣要請以前の1338時に情報収集の為連絡員2名を車両により現地へ派遣していました。派遣要請は1600時に出され、郡山駐屯地より第6特科連隊の人員約120名、車両約20両が出動しました。

Img_8652  1750時には更なる災害派遣に備え神町駐屯地より第6師団司令部の連絡員3名が車両により出発、更に1802時に第6特科連隊より人員約120名が車両約20両により駐屯地を出発し、1925時に除雪作業を開始、2240時に福島県知事の撤収要請を受け派遣任務を終了しました。なお、派遣規模は人員約130名、車両約20両となっています。

Img_5082  正月だけでも山陰地方における災害派遣事案があったのですが、このほか正月は3日に熊本県において熊本空港から北九州空港に向け1712時に離陸した小型飛行機の行方不明事案が1715時、熊本空港北東8NM付近において発生しました。こちらについては現在においても派遣が継続中とのことです。

Img_4456  行方不明になったのは二人乗り小型機で遭難の可能性が高くなったことから同日1945時、東京空港事務所長より春日基地の航空自衛隊西部航空方面隊司令官に対し行方不明航空機及び搭乗者の救助要請が出され、熊本空港北東8NM付近に対し部隊を派遣しています。

Img_4342  今回の豪雪事案における災害派遣は自衛隊が全国に部隊を均一に配置するという基盤的防衛力の意義を改めて強調する事となりました。大規模災害は本土武力侵攻事案における奇襲攻撃以上に予測が難しい事があり、予備役部隊では無く現役部隊が配置されていたからこその即応性を発揮できたという印象です。

Img_4763  動的防衛力への転換による自衛隊部隊縮減が政府により強く叫ばれている今日ですが、それならば政府主導の州兵制度のような防災管区隊のようなものを編成し、現役人員を以て自己完結型として有事の際には自衛隊の後方支援に充てられる体制を構築する必要があると思う一方、結局のところ基盤的防衛力を代替可能な動的防衛力というものは、実は蜃気楼のようなものでは無いのか、という不安があります。

Img_8603  毎回の事ですが、今回の災害派遣報道映像を見ても高機動車の走破能力の高さには驚かされます、駐屯地では戦車や火砲の影に隠れがちなこの汎用車両も単価では1000万円前後を要して、民生型のメガクルーザーを自治体が防災用に一両二両買ったという話は聞くのですが、数十両単位で整備し、不整地を突破できる操縦者を確保する事は並大抵のことではありません。

Img_0115  また通信の確保となれば、自衛隊では通信科部隊の通常の行動に含まれているのですが、自治体はNTTや携帯式や車両無線機頼りというのが現状で独自の可搬式搬送装置等は予算的に整備し稼働状態に置く事は不可能に近いでしょう。災害派遣に必要な移動式の給油給水給食支援能力を求めるのにも無理があります、この点は基盤的防衛力から動的防衛力に転換した場合、如何に災害派遣部隊を戦略展開させるのか、言葉では全く計り知れない難題に挑まなければなりません。

HARUNA

(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)

コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする