北大路機関

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浜松基地航空祭2012詳報⑦ 第1航空団のT-4編隊離陸開始と第6航空団F-15機動飛行

2013-12-05 23:45:59 | 航空自衛隊 装備名鑑

◆次々と大空へ飛び立つT-4練習機

 E-767早期警戒管制機の機動飛行に続いて、第1航空団T-4練習機の離陸が始まります。

Himg_3228 T-4練習機は200機以上が生産された国産練習機で、川崎重工が主契約企業、エンジンを石川島播磨重工が担当したオールジャパン体制での開発の末完成した機体で、亜音速機ではありますが、練習機としての基本性能に絞り製造費用を抑えた、戦後の国産機では傑作機の一つに挙げられるもの。

Img_3214 性能としては安定しており、双発機であるため万一の際の飛行性能も、訓練空域の関係上から洋上飛行の多い我が国の練習機として必要な水準を十分満たしており、運動性の高さはアクロバット飛行を行うブルーインパルスでもT-4が運用されていることから、みることができるでしょう。

Himg_3219 1985年に完成した練習機で傑作機ではあるのですが、初飛行から間もなく30年を経る航空機で、航空自衛隊は200機以上のT-4練習機を今度どうするのか、考えねばなりません。延命改修を行うのか、第五世代戦闘機仕様の操縦席へ改修し生産再開を行うのか、新規の後継機を導入するのか。

Img_3222 航空自衛隊はF-4戦闘機の後継機であるF-35がなかなか完成しないことにばかり中も気うが集まりますが、T-4練習機の他、整備委託先の日本航空機の契約終了により早期退役となるB-747政府専用機、既に導入開始から30年を経ているE-2C早期警戒機など、切迫した問題は非常に多い。

Himg_3246 T-4練習機が導入された当時は、プロペラ機であるT-3練習機、ジェット練習機であるT-33とその後継機であるT-4中等練習機、それを経て超音速練習機であるT-2練習機を運用し、その後実戦部隊において機種転換教育を受けていました。これが、練習機として訓練部隊へ実戦部隊の戦闘機二個飛行隊が転用され、戦闘機としての基礎訓練を中等練習機で一部代用し、高等練習機が廃止、今に至る。

Himg_3258 中等練習機へ一本化し、高等練習機を廃止した事例ではNATO諸国でジャギュア攻撃機の高等練習型が過去にありましたがその後統一され廃止、運用費用の低い亜音速機への練習機体系統合は一つの趨勢と言えましたが、日本もその方式を踏襲した一方、米空軍では高等練習機を残し、今に至ります。

Img_3263 高等練習機は、勿論米空軍では単に開発された1950年代の運用体系が不具合がないとして維持されているのでしょうが、我が国で観た場合、有事の際に補助戦闘機として運用できるという非常に大きな利点があり、T-2練習機が松島基地で運用されていた冷戦時代、補助戦闘機としての運用が実際、考えられていました。

Himg_3271 米空軍は航空自衛隊のT-7等、世界の標準的な初等練習機と比較し非常に出力の大きなエンジンを搭載したターボプロップ機、スイス製ピタラスPC-9をT-6Ⅱ初等練習機として採用、ピタラスPC-9は亜音速練習機に匹敵する実技能教育が可能な航空機ですが、このPC-9/T-6Ⅱにより訓練を行ったのち、一挙に超音速機であるT-38,単座型がF-5軽戦闘機として世界中に輸出され有名ですが、こちらを多数配備し、今も運用中です。

Himg_3283 なお、米空軍では、いきなり操縦課程学生をPC-9に乗せるのは無謀ですので、軽飛行機による操縦適性検定を行っています。米空軍は1950年代からT-38を運用しT-38で置き換え1000機以上調達してきました。ただ、近年、そろそろ生産終了から時間がたちすぎたT-38の後継機が必要となり、欧州製A-346,スウェーデン製JAS-39,米韓のT-50を候補として後継機選定を展開しているところ。

Img_3274 こう考えますと、我が国もT-4練習機の後継機選定においては、T-7初等練習機とT-4練習機にF-15やF-2による戦闘機戦闘訓練という体系を、初等練習機と中等練習機の基本操縦課程をPC-9に、中等練習機の戦闘機操縦課程と戦闘機による戦闘機戦闘課程をJAS-39を装備し、四個飛行隊程度のJAS-39を装備してみてもいいのでは、と。

Himg_3287 T-4と比較し、JAS-39は戦闘機ですので調達費も運用費も高価ですが、T-4と違い有事の際に補助戦闘機として転用可能です、JAS-39は性能的に現在でも第一線級の戦闘機ですから、ね。他方でT-4を全てJAS-39へ置き換えるのではなく、PC-9により一部を置き換えるのですから総合的にはT-4よりもPC-9は調達費が低く、運用経費も抑えられています。我ながら無茶な提案だ。

Img_3328 その心は、という事ですが、最早平時だけにしか使えない練習専用機だけでは不十分、というもの。つまり、防空が切迫している航空自衛隊には有事の際に用途が連絡機に限られる練習機だけを運用する余裕が無くなっており、より高度な教育を行うことが出来、補助戦闘機として運用できる高等練習機の位置づけをいう発想は必要なのではないか、という事です。

Himg_3291 第6航空団のF-15戦闘機、二機編隊で小松基地より機動飛行へ展開です。浜松基地にはF-15やF-2が教材としては配備されているのですが、飛行可能なF-15など超音速機は配備されていません、そこで小松基地第306飛行隊のF-15戦闘機が機動飛行へ展開してきました。

Himg_3304 F-15戦闘機は延命改修を受け当面の間維持されます、こういいますのも、戦闘機として非ステルス機には電子機器の能力による共同交戦能力が重視されますので、元々長期間の運用を想定し設計されているF-15は長期間の運用が可能な機体であるためです。それにしてもやはり戦闘機は音が違う。

Himg_3314 戦闘機は長く、長距離戦闘を展開可能なレーダーや多数の兵装搭載能力を付与すると機体が大型化し、その分鈍重となるため、近接戦闘では軽戦闘機の機動性に対抗できない問題がありました。そこで、アメリカは、アメリカらしいというべきでしょうか、力技で対抗します。

Himg_3319 アメリカらしさとは、チタンなど得られる最高度の資材により機体を頑丈で大型に設計すると共に技術上入手できる最高出力のエンジン二基を搭載し、無理やり高機動に対応させるという発想で、この思想が将来の発展への余裕を生み出し、高価な資材は長期運用に耐える構造を機体へ与え、今に至る。

Himg_3334 実のところ、航空自衛隊は近年、戦闘機調達が終了し新規調達を行っていないため、周辺国空軍に後れを取っていると誤解されがちな状況が続いていますが、F-15近代化改修として一機当たり45億円程度を投じて電子機器を総入れ替えしています。

Himg_3371 これは中国空軍のSu-30戦闘機ロシア輸出費用よりも高額で、中国空軍がF-16戦闘機に対抗して開発したJ-10戦闘機のパキスタン輸出提示価格の倍近くにあたります。即ち高度な改修を続けていて、その分、データリンクによる戦闘能力と探知能力は大きく向上しており、能力的には常に向上への努力が投じられている。

Himg_3379 ただ、当然の道理として、いかに高性能な機体でも一機が同時に二方面の空域に展開する事は出来ませんので、航空自衛隊は近代化改修費用と比べてもその半分程度の戦闘機を多数整備する周辺国による平時の示威行為、ピンポンダッシュに近い状況に緊急発進の態勢はひっ迫し、今に至ります。

Himg_3399 先ほど、T-4練習機をPC-9とJAS-39の体制へ転換できないか、という提示を行ってみました背景には、T-4と違い、JAS-39は戦闘機ですので有事の際には戦闘機として補助用途に用いることが出来ます。そして教育用の戦闘機二個飛行隊を第一線に戻すことが出来、これも利点として大きいでしょう。

Himg_3406 もっとも、そんなことを言いますと浜松基地の第1航空団も二個飛行隊のうち片方はジェット練習機からターボプロップ練習機に置き換えなければならない、という提案なのですが、ね。そして、T-7をPC-9に置き換えた場合、海上自衛隊のT-5練習機後継機をどうするのか、という問題も出てきますので単に放言でしかないのですが、航空祭の写真を眺めつつ、そんなことを思いました次第です。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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