北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

本日は十二月八日(開戦記念日) 今後、我が国は如何にして自由・平和・尊厳を保持できるか

2013-12-08 23:42:42 | 北大路機関特別企画

◆戦後レジーム転換は自発か外圧か、方向性が重要

 本日は十二月八日、1941年の12月8日に日本海軍は真珠湾を奇襲、これにより欧州大戦は太平洋へ拡大し第二次世界大戦へと展開しました。

Fimg_8275 戦後レジームからの脱却、という言葉は首相が常々話しているところではありますが、戦後レジームからの脱却は我が国が主体的に外交政策の転換などを通じ成し遂げるべきものです。しかし、昨今の情勢は、我が国が周辺国より侵略を受けることで外因性の要素を以ての戦後レジームからの脱却を強いられるのではないか、と危惧しているところ。

Kimg_7922 即ち、戦後の国際秩序が、日本が侵略を受けることで戦後という言葉が示す戦争というものが世代交代してしまい、望まない形で変革を結果として求められることにはなるのではないか、ということです。こういうほどに、我が国は現在、隣国から軍事的圧力を受けています。

Bimg_1502 考えてみれば、隣国の圧力は、公海上およびその上空を排他的に占有する手段を以て防衛網を構築することが、環太平洋地域における太平洋の対岸への自衛策となる、と考えていることに起因しているのですが、国際公序は海洋の自由こそが繁栄と共存への配分的正義として共通理解に依拠し、構成されているのですから、これは通りません。

Gimg_1716 特に海洋の自由という国際公序は、我が国がこれに挑戦したことにより太平洋戦争が勃発し、欧州大戦は世界大戦へと発展しました。ですから、隣国が世界史から俯瞰すれば“僅か”70年の時を経て同様の主張を、我が国と同様に国防のため、として主張しても通る訳はないのです。

Avimg_4257 如何に世界の目途とする将来に対して、不可逆の構図を戻そうと努力しているのか、ということはある種我が国の前世紀前半の国家意思の選択を歴史として考えつつ、周辺国の某国についての政策決定を列挙するだけで、滑稽な印象が拭えないほどではあるのですが、軍事力を突き付けられつつ俯瞰する当事者となれば、笑い飛ばす事は出来ません。

Img_6606 他方で、我が国へ軍事的圧力を突き付ける隣国、その隣国は我が国以外のほぼ全方位の国々に対し建国して以来幾度も軍事侵攻を重ねているため軍事的圧力はその他の国に対しても向っているのですが、その隣国が同時に世界最大である人口を資源に経済的発展を遂げている背景には海洋の自由による恩恵を享受したためであること、忘れるべきではないでしょう。

Img_4311 我が国は先の大戦の敗戦を以て、国家機構を平和に主眼を置き大変革を遂げて以来、軍事的に絶対的な平和を前提とし、経済発展に邁進してきました。更に経済力を公共財とし、国際経済と国際金融や世界政治に対しても好影響を齎せるよう尽力は続けてきましたが、隣国がここに軍事力を突き付ける場合、国家には自衛権があり自国民への保護義務があります。

Aimg_1441 こうしたなかではありますが、隣国は海洋の排他的占有と確保こそ自衛権と誤認し、諸国に自国の無理を押し通そうとしている反面、その無理強いは隣国が経済発展の基本資材としている海洋自由を自ら閉じようとしているわけであり、加えて我が国の基本的生存権を蹂躙するものに他ならないのですから、確実に両国摩擦は増大します。

Bimg_9061 言い換えれば、経済発展の必要な国際公共財である海洋の自由を自ら破たんさせ求める隣国の国防体系というものが見えてきません。少なくとも、大洋を二分し排他的に監視すなければならないほど世界はその国際関係の展開に軍事侵攻という選択肢を強いる構造にはありません、そんなことをせずとも何処から自国を守るのでしょうか。

Hbimg_8337 こうした国家意思の選択に際し、基本的な部分で矛盾が生じている国に対しての我が国の国際関係の展開は、非常に難しいものを含まざるを得ません。基本的に我が国の共通理解として、戦争の回避、という部分は為政者に最も求められるものではあるのでしょうが、繁栄と尊厳を放棄してまで、例えば一方的敗北を求めるほど為政者への関心は不合理ではないところでしょう。

Img_1078 そうした背景の下で、我が国は戦後初めて侵略を受け、戦後という我が国の長い平和の時期が終わるかもしれない、という状況に転換しているわけです。そして、我が国としては武力紛争の回避に重点を置き、特に戦争を回避する努力を行いつつ、どうしても譲歩できない部分がある。

Nimg_0354 譲歩できない部分ですが、現時点では軍事的圧力が南西諸島に掛けられているものの、圧力を掛ける隣国は太平洋の二分を求めているため、仮に南西諸島で譲歩したとしても、我が国が西太平洋上に存在する限り、隣国は目標を達成することにはなりません。

Img_2624 即ち、仮に譲歩したとしても西太平洋上を勢力圏に含めるという目標を提示している以上は次の圧力が掛り、南西諸島全域、日米関係、九州島、本州島、小笠原諸島へ圧力は続くでしょう、その都度譲歩は出来ず、守らなければならない、南西諸島の一部を占領しただけでは前述目的は達成し得ないわけですから、ね。

G12img_4857 すると、我が国としては隣国に対し、国際公序を共に支えるステイクホルダーとして共存する事こそを双方の国家利益に叶う、という点を強調し、且つ、国際公序から逸脱した軍事力を背景とした政策を行う意思決定過程に対し、我が国が先の大戦で迎えた破綻に至らないよう、世界と共に歩む道を提示し続けなければなりません。

Himg_3189 もちろん、その前に軍事侵攻を受ける事の無いよう、平時の抑止力を維持しつつ、有事の際の防衛力を整備し、防衛力の体系を維持し近代化を継続する必要はあるのですが、隣国の国際公序からの逸脱による周辺国への緊張という状況は、一種瀬戸際を歩き続けるようなものですのでソフトランディングの道を模索しつつ我が国が侵攻されない体制を継続する必要はあります。

Gimg_2816 不安は残ります、なにしろ、隣国は建国以来、建国後に内戦を行う膨大な犠牲者を出していますし、国内での政治弾圧による犠牲者が物凄い規模に上ると共に、建国間もないころに東の半島での戦争に大規模介入、続いて南部の山岳国を武力併合、西進し国境を拡大し、内戦後の臨時亡命政府との小競り合いを続けつつ更に南部に山脈を越えて侵攻、続いて北進、その後別の南部の国境を越え侵攻、戦争を続けてきまして、侵略を受けていないのはこの国ぐらい。

Eimg_0456 不安が残る一方、その国は未来への道を軍事侵攻という鉄の力だけで閉ざしている訳ではない、という事例が先日あり、希望として残りました。隣国は公海上の飛行を排他的に制限する空域を防空識別圏と言い換え、空域への権力行使を試みたのですが、我が国はもちろんアメリカに欧州や豪州とアジア諸国が一致して反発し、その声に抑えられる形で僅か一両日を経て排他的運用の部分を公式声明で撤回したのです。

Afimg_2873 これだけをもって楽観論とすることはでき無いのですが、開戦記念日だるこの日に、先に我が国が採った行動とその結果への繋がりを考えつつ、結果が破綻であった歴史を隣国が繰り返さず、共に同じ環太平洋の諸国であるという共通点と共に繁栄を並べ、尊厳を守るにはどうすればよいのか、少し考えてみなければ、と思いました次第です。

北大路機関:はるな

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コメント (2)
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