◆日米数十隻のDDHが平和秩序を支える
海上自衛隊至高の装備ヘリコプター搭載護衛艦/DDH,ひゅうが型護衛艦をアメリカ海軍へ提示し、全通飛行甲板型駆逐艦カリフォルニア級として提示する、長文化しましたので二回に分け、昨日に続き本日第二回の掲載です。
ひゅうが型を米海軍が採用したと仮定しての艦名について。伊勢型戦艦の就役は1917年ですので、米海軍はカリフォルニア級航空駆逐艦にネヴァダ級戦艦ネヴァダ、オクラホマ。ペンシルヴェニア級戦艦ペンシルヴェニア、アリゾナ。ニューメキシコ級戦艦ニューメキシコ、ミシシッピ、アイダホ。テネシー級戦艦テネシー、カリフォルニア。コロラド級戦艦コロラド、メリーランド、ワシントン、ウエストヴァージニア。等など。日本は伊勢型以前に扶桑型2隻を超弩級戦艦として建造しましたが、これを米海軍に当てはめると更に凄いことに。
ううむ、日本が伊勢型の前の二隻を含んだ場合でも扶桑、山城、伊勢、日向、長門、陸奥、と建造しているだけなのに超弩級戦艦は、サウスカロライナ、ミシガン、デラウェア、ノースダコタ、フロリダ、ユタ、ワイオミング、アーカンソー、ニューヨーク、テキサス、が加わります。流石は今でも大型艦とイージス艦を桁違いに建造している米海軍、昔でも建造している戦艦がやけに多い。閑話休題、艦名候補にかつての戦艦名を挙げることが出来るでしょう、オハイオ級戦略ミサイル原潜と被らないように旧戦艦の名前を充当して見劣りしない大型艦です。また、旧戦艦の名称を受け継いだオハイオ級戦略ミサイル原潜は水中排水量18500tですが、ひゅうが型は満載排水量19000tですので、戦艦の艦名を受け継いでも名前負けしないところでしょうか。
八八艦隊構想として、ヘリコプター搭載護衛艦の増勢を、私見ですが何度か、提示しています。海上自衛隊は護衛艦隊隷下の四個護衛隊群を構成する八個護衛隊について、イージス艦による対弾道弾を含めた防空担当の護衛隊とヘリコプター搭載護衛艦を中心とした対潜担当の護衛隊にわけ、現状の四個護衛隊にのみヘリコプター搭載護衛艦が配備されている現状に対して、海上自衛隊護衛艦隊の護衛隊群護衛隊の任務対応能力共通化を行うべく、ヘリコプター搭載護衛艦8隻とイージス艦8隻による八八艦隊の構想を提示しています。仮に米海軍が護衛艦ひゅうが型を採用すれば、運用研究や米海軍その相互連携の観点から、海上自衛隊のヘリコプター搭載護衛艦増勢に繋がる期待も込めて。
本題へ。沿海域戦闘艦はモジュールの換装で様々な任務に対応することとしていますが、ひゅうが型は運用する航空機を入れ替える事で瞬時に様々な能力に対応する駆逐艦、航空機運用能力は艦艇に最大の多用途性を付与します。F-35Bを12機搭載し戦力投射任務に、MV-22を10機搭載し緊急展開任務に、AH-1ZとUH-1YにCH-53Eを搭載し強襲揚陸艦に、MH-53を8機搭載し航空掃海母艦に、SH-60を15機搭載し対潜巡洋艦に、MH-60とMH-47を甲板係留し特殊作戦母艦に、兎に角航空機を載せ替える事であらゆる任務に対応でき、その素早さは沿海域戦闘艦のモジュール換装所要時間とは比較にならないほど。
このようにヘリコプター搭載護衛艦の利点は非常に多岐に上るものなのですが、大量配備が現実的なのかを考慮しなければなりません。米軍は外国製装備を導入した事例もありますが、高性能であっても運用体系と合致せず導入しなかった高性能海外装備も多いのですからこの点は重要です。そこで、建造費はアメリカ海軍が駆逐艦として大量に建造することは現実的なのか、乗員数は既存の米海軍艦艇よりも大きすぎ人員面の負担は無いのか、運用費用では沿海域戦闘艦と比較し無理しすぎている部分は無いのか、新型艦であるのだがこれまでの米海軍装備体系と離れすぎている部分は無いのか、こうした部分を一つ一つ見てゆきましょう。
予算ですが、ひゅうが型の建造費は1000億円、インディペンデンス級沿海域戦闘艦の建造費は高騰していますが一応数十隻建造で一隻8億ドル、フリーダム級は同条件で5億ドルに抑える構想、これよりも高く、アーレイバーク級の8億ドルよりはやや高い建造費ではありますが、沿海域戦闘艦と比較し、航空機運用能力が大きい分一隻の任務対応海域が広くなりますので、少数で対応することが可能です。また、ズムウォルト級駆逐艦の建造費30億ドルよりはかなり低く抑えていますし、アメリカ国内の造船所で量産することで建造費を押えることは可能かもしれないものがあります。
技術面ですが、沿海域戦闘艦は技術的に非常に先進的な技術を多数盛り込むと共に艦船建造技術を必ずしも受分有しない関連企業の協力を受けて建造したことから建造に難航し、開発計画の高騰を招きました。しかし、ひゅうが型であれば、一応既に確立した技術に依拠したものですのでアメリカ国内の造船所での生産に大きな技術的問題は生じませんし、沿海域戦闘艦ほど大量建造せずとも必要な海域での優勢獲得に必要な能力を有していますので、先進技術の応用などに未経験の造船所に発注するリスクは生じません。
将来発展要素については、新型機を搭載するだけで性能を一新できます。これだけではもちろん無く、統合電気推進やレールガン搭載などを、現段階で有していませんが、カリフォルニア級航空駆逐艦フライトⅡとして将来的に統合電気推進艦を設計し、カリフォルニア級航空駆逐艦フライトⅡ-Aとして飛行甲板端に垂直発射砲方式や舷側配置でレールガンを搭載することは可能となります。武装ですが、ひゅうが型は艦砲を搭載していません、しかし20mmCIWSを搭載しています。それではあんまりだ、とおもわれるかもしれませんがCIWSのマウント重量は5.4tですので、ズムウォルト級駆逐艦の副砲や沿海域戦闘艦の手法として搭載している57mm単装砲のマウント重量は6.5t、置き換えての搭載は可能でしょう。
協同能力ですが、まず、ひゅうが型護衛艦と沿海域戦闘艦を、単純に一択による結論を出すのではなく、相互補完方式を採ったと仮定した場合を提示しますと、無論子の提示をしますと沿海域戦闘艦を完全に置き換えるものではないという視点に繋がるものではあるのですが、ひゅうが型護衛艦の航空機運用能力の高さが沿海域戦闘艦へのヘリコプターによる必要物資輸送、所謂バートレップ方式により戦闘を支援することが出来まして、近年は従来の弾薬や食料などのドライカーゴに留まらず、燃料のバートレップ輸送の研究が進められていますので実現すれば沿海域戦闘艦の母艦として、非武装の補給艦が入れない海域へ進出することも可能、この連携の能力の大きさは計り知れません。
乗員ですが、アーレイバーク級は323名とフライトⅡAで380名、ひゅうが型は乗員360名、航空機を最大限搭載する場合、整備要員など航空要員が加わり乗員は500名に達するともいわれていますが、基本状態の乗員数はともに300名の真ん中程度ですので、駆逐艦同士で比較した場合アーレイバーク級、ひゅうが型、そこまで大きな違いはありません。流石に乗員数を比較すると沿海域戦闘艦よりははるかに大きい訳なのですが、アメリカ海軍の主力駆逐艦であるアーレイバーク級と比較した場合はそこまで違わないのです。
運用費用を見てみますと、単純には比較できないという前提、若干暴論ですが、機関出力はそんなに違いません。燃料搭載量と航続距離は比較できる情報が手元にないのですが、機関出力から見てみることとします。ひゅうが型護衛艦は速力30ノットを発揮するべく機関出力10万馬力、25000馬力のLM2500ガスタービンエンジン四基を搭載しています。対してLCSのフリーダム級は最高速力45ノットで96000馬力、ロールスロイスplcMT30ガスタービンエンジン二基とディーゼル機関により発揮しています。 また、もう一つのLCS,インディペンデンス級は47ノットの速力を発揮するべくGE-LM2500ガスタービンエンジン二基の7万馬力とディーゼル機関を搭載しています。
ヘリコプター搭載護衛艦は形は違えど水上戦闘艦。軽空母的な装備と解釈した場合、その用途に身構えてしまい、軽空母であれば護衛を点ける必要、補給と整備体系の問題が障壁となるのですが護衛艦である、ひゅうが型は奥の可能性を秘めています。速力30ノット、多数の航空機を搭載できる一方で駆逐艦として様々な任務に対応できる、建造費も現実的であり技術的に確立されているほか海上自衛隊での運用実績も大きい、日本側がアメリカに提示できる防衛協力はこの優れた設計の護衛艦をシステムとして導入を進める事であり、アメリカ側はこの航空駆逐艦という新しい概念の装備を航空母艦の護衛や戦力投射任務に対応できると共に搭載航空機の運用技術を日本に提供し相互の防衛力を強化できる。
利点はこれまでに述べたとおりの多用途能力に加え、艦が大型ですので将来発展性が非常に大きいことが挙げられます。艦載機に新型が開発されたならば即座に能力を一新できるのは航空機運用能力の強みですが指揮通信能力等の向上も大型の船体は充分受け入れることが出来るでしょう。また、もう一つの利点として全通飛行甲板型艦艇のもつポテンシャルで、現在、揚陸艦と軽空母の中間を担う戦力投射艦という概念が新しく各国海軍の中で育ちつつありますが、これら戦力投射艦に拮抗する能力を持つと共に太平洋上でその占有を企図した勢力増勢を行う某新興海軍国の始めるであろう航空母艦による周辺国への示威行動に対し、日米数十隻の全通飛行甲板型水上戦闘艦のポテンシャルは無視できない存在です。
欠点は、沿海域戦闘艦を米海軍が導入しその運用を蓄積しようとしている中に全通飛行甲板型の駆逐艦という新しい装備体系を導入するため混乱が生じる点でしょうが、これは海上自衛隊が研修を受け入れる事でかなり解決することが出来ます。原子力空母ほど航空機は運用できずドック型揚陸艦ほど揚陸支援は行えずイージス艦ほど防空能力は高くありませんが、これらの能力をすべて備え世界最高水準の対潜戦闘能力を持つのが特色というもの。用途は沿海域戦闘艦よりもかなり大型であることで、ステルス性や沿岸部への接近能力では3000tと19000tという大きさの違いが障壁となりますが、航空機運用能力と無人機の積層運用がこれを解決できるでしょう。
欠点、あとは米海軍がスプルーアンス級駆逐艦並に30隻前後を導入すると、横須賀を訪れた際に「やっぱり米海軍は無駄に金持ちだよなあ」、と艦船ファンが海上自衛隊と見比べ落胆し、横須賀基地が全通飛行甲板型駆逐艦だらけになり手狭になるので曳船の要員が絶望するところでしょうが、これは逆に、前者だけは利点ともいえまして、併せて某新興海軍国が航空母艦による軍事的圧力をもって示威行動を採ろうとする際に、アメリカにはやっぱり敵わないや、と抑止する効果が期待でき、武力紛争を回避する要素となるところでしょうか。ただ、相手の戦意を喪失させるという意味は重要です。戦後の今日の視点ですが、もし日本が戦前、空母だけでアメリカは四年間で大型のエセックス級空母24隻建造でき、一年間で50隻のカサブランカ級護衛空母を建造出来ると知れば、もう少し慎重になったでしょうから。
戦艦伊勢と戦艦カリフォルニア。先代の戦艦達は太平洋を挟んで巨砲を突き付けあっていましたが、新世代のヘリコプター搭載護衛艦と航空駆逐艦同士は共に信頼できる同盟国同士、日米連携の象徴と言えるのではないでしょうか。先の大戦では、国際広域である海洋を特に公海において排他的に我が国が占有しようとしたことが摩擦の要素の一つとなりました。国名は伏せますが西太平洋における海洋秩序を排他的に軍事力で組み替えようとする某国は、我が国の戦時中のこうした行動を批判しつつ、我が国と同じ方法を採ろうとしています、それが過ちであると矛盾する行動を続けるならば、我が国は同盟国と共に、そうした行動を平和裏に是正する努力が必要であり、その選択肢として全通飛行甲板型駆逐艦の米海軍配備と海上自衛隊との連携はあるのだと考えます。
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)