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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上防衛作戦部隊論(第四四回):装甲機動旅団編制案の概要 戦略輸送と民間輸送基盤

2016-01-23 22:39:46 | 防衛・安全保障
■戦略輸送と民間輸送基盤
国土防衛を主任務とする自衛隊の戦場は日本本土です。

戦略輸送と展開のための輸送ですが、着上陸から24時間以内には国土の如何なる地域においても一個連隊戦闘団による防御戦闘を開始し、48時間以内には攻勢に転じなければ、現代陸軍の機動力は国家地方中枢地域への浸透の端緒に就かせることを意味します、着上陸地域へ進出掩護の下での装備と補給品を集中、100時間を目処に師団規模の攻勢への展開と数週間程度を目処とした補給品の集積に依拠した戦闘継続基盤を構築できなければなりません。

この戦略機動に関する運用基盤背景についてですが、基本は現在の陸上自衛隊が骨子とする国土防衛基本指針と合致するものですが、広域師団構想の背景は師団の効率化を背景として基盤的防衛力整備を度外視した機動防衛力を念頭としており、連隊戦闘団配置の離隔が大きくなっており必然的に着上陸点から近傍駐屯連隊戦闘団策源地及び段列地域までの距離が延伸、同時に輸送距離が増大することを意味します。

ここで前回示しました重視すべき点としての民間輸送、すなわち陸運と鉄道のこと。鉄道輸送、自衛隊協同転地演習では鉄道輸送が今なお重点的に行われており、ワム、チキ、といった貨車が最後の活躍を見せています、無蓋貨車や長物貨車に戦車を固定し輸送、という方式は61式戦車まで広範に行われていまして、実際、61式戦車は狭軌鉄道貨物輸送を前提に車幅と重量が画定されました、74式戦車については物理的には通行できる区画が多いということですが、基本的には当時検討されていた新幹線貨物輸送を考慮していたとのことです。

当時は列島改造論に基づく全国基幹路線の新幹線化が大きく掲げられており、現実性があった案です。しかし、実現しておらず、さらに大型の90式戦車、10式戦車が制式化されるにいたり、狭軌および新幹線を含めての鉄道輸送は考慮されなくなりました。その一方で73式装甲車と96式装輪装甲車の鉄道輸送は維持されており、鉄道輸送への依存度がみてとれるところ。

そこで、ログパック方式として必要な物資をコンテナ化しタグ管理、必要な物資はコンテナごと輸送するという体制を構築して置くならば、鉄道貨物輸送規格のコンテナを採用することで迅速に輸送でき、コンテナ輸送は貨物列車はもちろん、コンテナ輸送船や民間トラックはもちろん、そのまま輸送機に搭載する、さらには輸送艦の甲板はもちろん、砕氷艦しらせ、でも輸送することが可能となるでしょう。

PLSトラックのコンテナ輸送能力の利点について前回、コンテナヤードから必要な物資を電子タグにより管理し適宜必要な装備の支援へ機材を輸送できる点としましたが、上記の鉄道輸送や民間貨物船の応用により、従来自衛隊が独自に構築した輸送機や輸送艦による輸送車両の補完を越えた戦略展開能力の付与が可能となります。国土産業基盤への依存は外征型軍事機構ならば輸送力の脆弱性、湾岸戦争時の在欧米軍展開時の戦車輸送車不足等に上げられる問題点に繋がりますが、我が国自衛隊は専守防衛、師団規模の外征を念頭に置く必要が現行憲法施政下では考慮する必要がありませんので、この点の問題は生じません。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (8)
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