■戦車操縦手と戦術機動
昔の戦車は大変でした、とはどの戦車乗りも昔の戦車に乗車している方から聞く話、M-41の時代は良かったらしいのですが。
ガールズ&パンツァーの世界では簡単に動いた戦車、アクセルを踏み込んでエンジンを吹かせばエンジンの回転数を上げましたらば、多少の無理はきくのですが、瞬間的に白煙が大きく上がります、潤滑油が蒸散して白煙を噴き上げただけで車体そのものには影響は無くエンジンが焼け付く前にアクセルを緩めれば何も問題はありません、しかし白煙は十数mの高さまで簡単に上がる為、地形によっては数km先からも戦車の位置が暴露してしまいます、それでは戦術機動として落第点、実戦ならば砲弾落下、というところでしょう。
しかしエンジンを吹かし過ぎたかと異音を警戒して出力を緩めれば簡単に失速停止、敵前での戦闘機動中に停止すれば即命中撃破間違いなしです、自動変速装置やせめてシンクロナイザーの冗長性設計余裕もしくはシャフト部分にクラッチドラムを追加する事でかなり変速機の使い易さが向上するのですが、そこまで考慮しているかとは戦車沿うううへの設計者の技術的真価を経てというものですから、兎に角第二次世界大戦中から場合によっては1960年代まで世界には前に勧める事は出来ても戦術機動が難しい戦車というものが意外にあった訳でして、これは留意点とすべきやもしれません。
もっとも、戦車というものはその国の工業水準が極限状態で厳正に表面化しますので、点火プラグの寒冷地性能不足やバッテリー精度の低さから、エンジン点火操作を行った場合でも点火しない、バッテリーの寒冷地性能が低すぎる為、寒冷地ではバッテリーを屋内に収容しバッテリー格納位置が過度な温度低下とならないよう炭火等で熱した、など様々な苦労話がありまして、バッテリー一つの脱着も注油作業等に地上整備も古くなれば古くなるほど大変で、グリスアップ作業が戦車運用のかなりの部分を占めていた、とも。ガールズ&パンツァーの世界、バッテリーくらいならば21世紀の信頼性があるものに切り替えられているのかが、少々気になるのは当方だけなのでしょうか、ね。
ガールズ&パンツァーではあまり触れられていませんが大事なことは、戦車は戦車長が指揮するものです、自動車ならば全ての主導権を握っているのは運転手ですが、戦車では操縦手は入門者の第二段階に過ぎません、戦車の機動は照準し敵戦車を撃破するためであり退避し敵戦車や歩兵対戦車火力から位置を暴露しない為の戦闘動作の一つなのです、故にまず操縦手は車体の下の方に操縦席を充てられ視界も十分ではありません、一番見晴らしのいい場所は全体指揮と索敵に車長が位置し隣に砲手が戦車砲の番人として構えている為です。
戦闘状況以外ならば操縦手は身を乗り出して操縦できますが戦闘時は密閉操縦として車内に位置しなければなりません、すると視界が凄く狭い透視窓もしくは潜望鏡、初期の戦車ですとスリットという覗穴から視界を得ます、その中から付近の稜線や窪地と障害物を瞬時に把握し地面に藪か湿地か岩場か崖かを確認しつつ動く必要がありますし、何より車長が発見した敵戦車や敵対戦車部隊をこちらから攻撃するには最適だけれども相手からは見えないし攻撃しにくい場所にピタリと展開させなければならないのです、この周辺の把握を変速機の操作とエンジン回転数に注意しながら同時にこなす、これが非常に難しい。
戦車乗りに必要な資質とは何か、と問うてみますと、やはりどのような状況にあっても戦車の乗員が最後の一人になった場合に段列地域まで戦車を操縦して戻ってくることです、と云われました、戦車は最後まで戦うのではないですか、と聞いてみますと、下車戦闘として戦車が履帯が破損し主砲なども破損した場合には重機関銃により戦車に留まり最後まで抵抗するとの事でしたし、最後の手段として車載機銃と小銃を手に最後の戦闘を行うとのことですが、それ以前に戦車を後方に持ってゆく事で戦力回復できる状況ならば戦車を後方まで連れて戻る、その為にどの乗員であっても操縦できなければならないのです、と。
戦車の操縦に習熟するまでに、やはり一年間はかるく要するようです、戦車の動きと戦術機動が一致するまでは戦車長が細かに支持する必要がありますが、完熟すると車長の意志が以心伝心で対応できるといいます、そこで戦車に乗車すると同時にその前の座学では安全法や操縦法等を叩きこまれますので、一人前の戦車乗りの入り口に立つまでに一任期二年間を使ってしまうともいわれます、しかし戦車は、装填手に操縦手を経て砲手になって戦闘に積極参加するようになります、砲手はゲーム新宿WARSのような一人で操作するものでは実感しにくいのですが、戦車の交戦距離がどんどん延びてゆきますと、その距離の索敵が必要になります、現代戦車では交戦距離3000mが普通になってきます、すると砲手と車長の戦車戦闘も、想像以上に複雑になるようです。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
昔の戦車は大変でした、とはどの戦車乗りも昔の戦車に乗車している方から聞く話、M-41の時代は良かったらしいのですが。
ガールズ&パンツァーの世界では簡単に動いた戦車、アクセルを踏み込んでエンジンを吹かせばエンジンの回転数を上げましたらば、多少の無理はきくのですが、瞬間的に白煙が大きく上がります、潤滑油が蒸散して白煙を噴き上げただけで車体そのものには影響は無くエンジンが焼け付く前にアクセルを緩めれば何も問題はありません、しかし白煙は十数mの高さまで簡単に上がる為、地形によっては数km先からも戦車の位置が暴露してしまいます、それでは戦術機動として落第点、実戦ならば砲弾落下、というところでしょう。
しかしエンジンを吹かし過ぎたかと異音を警戒して出力を緩めれば簡単に失速停止、敵前での戦闘機動中に停止すれば即命中撃破間違いなしです、自動変速装置やせめてシンクロナイザーの冗長性設計余裕もしくはシャフト部分にクラッチドラムを追加する事でかなり変速機の使い易さが向上するのですが、そこまで考慮しているかとは戦車沿うううへの設計者の技術的真価を経てというものですから、兎に角第二次世界大戦中から場合によっては1960年代まで世界には前に勧める事は出来ても戦術機動が難しい戦車というものが意外にあった訳でして、これは留意点とすべきやもしれません。
もっとも、戦車というものはその国の工業水準が極限状態で厳正に表面化しますので、点火プラグの寒冷地性能不足やバッテリー精度の低さから、エンジン点火操作を行った場合でも点火しない、バッテリーの寒冷地性能が低すぎる為、寒冷地ではバッテリーを屋内に収容しバッテリー格納位置が過度な温度低下とならないよう炭火等で熱した、など様々な苦労話がありまして、バッテリー一つの脱着も注油作業等に地上整備も古くなれば古くなるほど大変で、グリスアップ作業が戦車運用のかなりの部分を占めていた、とも。ガールズ&パンツァーの世界、バッテリーくらいならば21世紀の信頼性があるものに切り替えられているのかが、少々気になるのは当方だけなのでしょうか、ね。
ガールズ&パンツァーではあまり触れられていませんが大事なことは、戦車は戦車長が指揮するものです、自動車ならば全ての主導権を握っているのは運転手ですが、戦車では操縦手は入門者の第二段階に過ぎません、戦車の機動は照準し敵戦車を撃破するためであり退避し敵戦車や歩兵対戦車火力から位置を暴露しない為の戦闘動作の一つなのです、故にまず操縦手は車体の下の方に操縦席を充てられ視界も十分ではありません、一番見晴らしのいい場所は全体指揮と索敵に車長が位置し隣に砲手が戦車砲の番人として構えている為です。
戦闘状況以外ならば操縦手は身を乗り出して操縦できますが戦闘時は密閉操縦として車内に位置しなければなりません、すると視界が凄く狭い透視窓もしくは潜望鏡、初期の戦車ですとスリットという覗穴から視界を得ます、その中から付近の稜線や窪地と障害物を瞬時に把握し地面に藪か湿地か岩場か崖かを確認しつつ動く必要がありますし、何より車長が発見した敵戦車や敵対戦車部隊をこちらから攻撃するには最適だけれども相手からは見えないし攻撃しにくい場所にピタリと展開させなければならないのです、この周辺の把握を変速機の操作とエンジン回転数に注意しながら同時にこなす、これが非常に難しい。
戦車乗りに必要な資質とは何か、と問うてみますと、やはりどのような状況にあっても戦車の乗員が最後の一人になった場合に段列地域まで戦車を操縦して戻ってくることです、と云われました、戦車は最後まで戦うのではないですか、と聞いてみますと、下車戦闘として戦車が履帯が破損し主砲なども破損した場合には重機関銃により戦車に留まり最後まで抵抗するとの事でしたし、最後の手段として車載機銃と小銃を手に最後の戦闘を行うとのことですが、それ以前に戦車を後方に持ってゆく事で戦力回復できる状況ならば戦車を後方まで連れて戻る、その為にどの乗員であっても操縦できなければならないのです、と。
戦車の操縦に習熟するまでに、やはり一年間はかるく要するようです、戦車の動きと戦術機動が一致するまでは戦車長が細かに支持する必要がありますが、完熟すると車長の意志が以心伝心で対応できるといいます、そこで戦車に乗車すると同時にその前の座学では安全法や操縦法等を叩きこまれますので、一人前の戦車乗りの入り口に立つまでに一任期二年間を使ってしまうともいわれます、しかし戦車は、装填手に操縦手を経て砲手になって戦闘に積極参加するようになります、砲手はゲーム新宿WARSのような一人で操作するものでは実感しにくいのですが、戦車の交戦距離がどんどん延びてゆきますと、その距離の索敵が必要になります、現代戦車では交戦距離3000mが普通になってきます、すると砲手と車長の戦車戦闘も、想像以上に複雑になるようです。
北大路機関:はるな くらま
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