■北朝鮮水爆実験実施
本日2016年1月6日、日本時間で1030時頃、北朝鮮北東部咸鏡北道吉州郡豊渓里付近において人工的な地震が気象庁により観測された、と一報がありました。
気象庁が観測した地震波はマグニチュード5.1、その地震波形の特徴から自然地震ではなく核実験の可能性があるとされ、政府は首相官邸危機管理センター情報連絡室を官邸対策室に改編し、情報収集を開始しました。併せて米軍は嘉手納基地より電子偵察機や気象偵察機を離陸させこの中で核実験が実施される際に周辺に微量に漏洩する放射性物質クリプトンの有無を確認することとなり情報取集を強化、我が国防衛省もT-4練習機等に放射能集塵装置を搭載し大気情報収集を開始します。そして日本時間1230時、北朝鮮国営の朝鮮中央テレビ特別重大報道での発表を開始し、観測された地震波は核実験によるもので、水爆実験に成功したとの声明を出しました。
北朝鮮が初めて核実験を実施したのは2006年10月9日で、これは2003年1月の核不拡散条約NPT枠組からの脱退後三年を経ての実験でした、咸鏡北道吉州郡豊渓里核実験場での実験で我が国気象庁はマグニチュード4.9の地震波を観測しました。爆発規模が核実験としては小規模であった為、一時は大量のTNTを同時爆発させた艤装核爆発説が飛び出しましたが、不完全核分裂による1キロトン前後の核爆発であったとの分析が示されました、なお我が国はこの核実験を契機に北朝鮮国籍者の日本入国を全面禁止し特定船舶入国禁止特措法や日朝間経済関係の断絶という経済制裁を開始、今に至ります。
続いて2009年5月25日には第二回目の核実験が実施、我が国気象庁がマグニチュード5.3の人工的な地震を観測しました。核実験は咸鏡北道吉州郡豊渓里核実験場にて実施され、5キロトン程度の核爆発であったと推測されるものでした。核実験に伴う人工地震発生は、S波とP波の波形と特に自然地震が断層破砕を生じ徐々に地震波が増幅するのに対し、核爆発は最初の核分裂により生じるエネルギーが最大規模でありその後急激に減退することから特徴を見て取れるとの事です。気象庁は長野県松代、第二次大戦末期に大本営移設工事が行われた地域ですが、松代の日本列島本州島において最も岩盤が重厚で地震観測に適した位置に観測施設を置き、地球上の地震、自然地震と共に核実験を監視しています。
三度目の核実験は2013年2月12日に実施され、マグニチュード5.1の人工地震が観測された、としています。北朝鮮は、この2013年の核実験を核兵器小型化に主眼を置いた核実験と発表しており、核爆発装置を小型化する事で弾道ミサイルへの搭載に用いる展望を有している事が分かりました。核爆発装置は、大型化すればするほど核爆発を容易化させることができます、例えば冷戦期にインドが初めて実施した核爆発装置は一戸建ての家屋程度の大きさがあり、第二次世界大戦中に開発された核爆発装置、我が国に投下されたものも当時最大の戦略爆撃機B-29に搭載するものとして開発されており、例えば当時の二発の原爆は、プルトニウム原爆とウラン原爆ともに空母艦載機には搭載する事は出来ませんでした。北朝鮮は核兵器を対米抑止力の中枢に位置付けており、弾道ミサイルに搭載できる程度に小型化出来なければ意味がなかったわけです。
水爆実験、という表現は今回北朝鮮が初めて用いた表現です。2006年10月9日実施核実験時観測地震波算定規模はマグニチュード4.9、2009年5月25日実施核実験時観測地震波算定規模はマグニチュード5.3、2013年2月12日実施核実験時観測地震波算定規模はマグニチュード5.1、今回観測された地震波はマグニチュード5.1、となっています。水爆は重水素化リチウムか三重水素を用いる核融合反応を利用するもので、原爆の核分裂連鎖反応よりも大威力となります、が、重水素化リチウムか三重水素を超高温超高密度条件に置かなければ核融合反応が始まらない為、その為の条件として超高温超高密度条件醸成に原爆の核分裂連鎖反応を利用します、つまり水爆は原爆を起爆装置とするわけですね。理論上、核分裂を用いずに反物質触媒や陽子加速器利用負電荷核融合反応誘発による純粋水爆の核融合は可能、といわれていますがSFの発想という位置づけにあり、実現はしていません。
北朝鮮水爆実験実施、と題しましたが、北朝鮮水爆実験成功、としなかったのはこの部分にあります。咸鏡北道吉州郡豊渓里核実験場での実験ですが、気象庁が観測した人工地震のエネルギーを示すマグニチュード、今回観測されたものはマグニチュード5.1で前回の核実験と同程度であるため、観測数値の集成が行われるのか、2009年に観測された地震規模よりも小規模な爆発であるが水爆であるのか、水爆実験を行ったが爆発が核分裂に留まり核融合を誘発する事が出来なかったのか、など、今後の検証が必要となります。また、仮に核融合を誘発するための核分裂に用いた原爆のみが起爆しただけであった場合、再度、核融合を期した核実験が実施される可能性があります。これは過去に、2006年10月9日の最初の核実験の際、充分な核分裂が起きなかったために1キロトン程度の核爆発に留まり、わずか半年を経て2009年5月25日に再度核実験を行った背景には、完全な核分裂による核兵器の完成を期したのではないか、という分析も為されました。
安全保障法制が成立し、存立危機事態として我が国安全保障上の重大懸念事項への対処が、国際法上我が国が有する自衛権行使の範疇において可能であるよう法整備が為された訳ですが、その前に従来の周辺事態法の範疇での事態となった訳です、現行法では安全保障法が策源地攻撃を盛り込んでいない為、実行されたならば我が国へ甚大な被害が発生する事態への対処手段、自衛権の先制行使とはいかないものの、これに準じる措置を採る体制、法整備と共に能力構築の必要性が再度議論の場に上るのかもしれません。具体施策として考えられるものを列挙しますと、F-2や補完する対地攻撃能力を有する航空機の増勢、そうりゅう型潜水艦に搭載すべくトマホークミサイルをアメリカから導入し、その上で策源地攻撃に最も困難を課す移動発射装置の索敵用機材、MQ-9無人攻撃機などを装備する、という選択肢など。
冷静になって検証しますと、今後の北朝鮮核問題に関する分岐点ですが、弾道ミサイルへ搭載可能な規模へ弾頭が小型化された際が我が国安全保障上に非常に大きな問題を突き付ける事となるでしょう。潜水艦にトマホークミサイルを搭載し運用すれば、魚雷発射管から投射可能であるとともにアメリカは、イギリスに続きオランダやスペインにも輸出しており、導入を交渉すれば早期に取得は可能でしょう。トマホークならば我が国太平洋上や南西諸島近海からでも朝鮮半島全域への策源地攻撃が可能であるのに加え、ミサイル攻撃を我が国が実施した事を秘匿する事が可能であり、更に北朝鮮は対潜哨戒手段を全く持たない為、一方的に叩くことが可能となります。他方で、北朝鮮は現在、核兵器と弾道ミサイルを保有している一方で、核兵器を弾道ミサイルへ搭載可能な規模まで弾頭小型化に成功したという実証を行っていません。実際に撃ってみるのが一番なのですが、撃ってしまえばアメリカがミニットマンICBMにて反撃を行うため、どのように証明するかが困難なのですが、仮に何らかの手段により小型化に成功したことが証明されるならば、我が国防衛政策は更に大きな転換点に突き出されるでしょう。
現時点で北朝鮮は我が国へ核兵器を運搬する手段を持ちません、弾道ミサイルへ搭載出来るまで小型化する必要があるのです。北朝鮮が主力潜水艦とする1950年代のソ連製ロメオ級潜水艦では水中航続性能が20浬程度でとても日本近海まで到達できませんし、主力爆撃機であるソ連製イリューシンIl-28爆撃機へは搭載能力から運搬手段として用いるのに限界があると共に、非常に飛行性能が限られ航空自衛隊の防空網を突破する事は出来ません。もちろん、貨物船に搭載し近海で起爆、といった特攻作戦という選択肢はあるにはあるのですが、これはテロ的な意味を持つものの単発的に用いるのみであり軍事的効果はありません、何故ならば、二度目が無いのですから。このため、弾道ミサイルへ搭載が可能な水準まで小型化された際が、我が国の安全保障にきわめて重大な転換を強いる時機となる、そう考えます。
北大路機関:はるな くらま
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本日2016年1月6日、日本時間で1030時頃、北朝鮮北東部咸鏡北道吉州郡豊渓里付近において人工的な地震が気象庁により観測された、と一報がありました。
気象庁が観測した地震波はマグニチュード5.1、その地震波形の特徴から自然地震ではなく核実験の可能性があるとされ、政府は首相官邸危機管理センター情報連絡室を官邸対策室に改編し、情報収集を開始しました。併せて米軍は嘉手納基地より電子偵察機や気象偵察機を離陸させこの中で核実験が実施される際に周辺に微量に漏洩する放射性物質クリプトンの有無を確認することとなり情報取集を強化、我が国防衛省もT-4練習機等に放射能集塵装置を搭載し大気情報収集を開始します。そして日本時間1230時、北朝鮮国営の朝鮮中央テレビ特別重大報道での発表を開始し、観測された地震波は核実験によるもので、水爆実験に成功したとの声明を出しました。
北朝鮮が初めて核実験を実施したのは2006年10月9日で、これは2003年1月の核不拡散条約NPT枠組からの脱退後三年を経ての実験でした、咸鏡北道吉州郡豊渓里核実験場での実験で我が国気象庁はマグニチュード4.9の地震波を観測しました。爆発規模が核実験としては小規模であった為、一時は大量のTNTを同時爆発させた艤装核爆発説が飛び出しましたが、不完全核分裂による1キロトン前後の核爆発であったとの分析が示されました、なお我が国はこの核実験を契機に北朝鮮国籍者の日本入国を全面禁止し特定船舶入国禁止特措法や日朝間経済関係の断絶という経済制裁を開始、今に至ります。
続いて2009年5月25日には第二回目の核実験が実施、我が国気象庁がマグニチュード5.3の人工的な地震を観測しました。核実験は咸鏡北道吉州郡豊渓里核実験場にて実施され、5キロトン程度の核爆発であったと推測されるものでした。核実験に伴う人工地震発生は、S波とP波の波形と特に自然地震が断層破砕を生じ徐々に地震波が増幅するのに対し、核爆発は最初の核分裂により生じるエネルギーが最大規模でありその後急激に減退することから特徴を見て取れるとの事です。気象庁は長野県松代、第二次大戦末期に大本営移設工事が行われた地域ですが、松代の日本列島本州島において最も岩盤が重厚で地震観測に適した位置に観測施設を置き、地球上の地震、自然地震と共に核実験を監視しています。
三度目の核実験は2013年2月12日に実施され、マグニチュード5.1の人工地震が観測された、としています。北朝鮮は、この2013年の核実験を核兵器小型化に主眼を置いた核実験と発表しており、核爆発装置を小型化する事で弾道ミサイルへの搭載に用いる展望を有している事が分かりました。核爆発装置は、大型化すればするほど核爆発を容易化させることができます、例えば冷戦期にインドが初めて実施した核爆発装置は一戸建ての家屋程度の大きさがあり、第二次世界大戦中に開発された核爆発装置、我が国に投下されたものも当時最大の戦略爆撃機B-29に搭載するものとして開発されており、例えば当時の二発の原爆は、プルトニウム原爆とウラン原爆ともに空母艦載機には搭載する事は出来ませんでした。北朝鮮は核兵器を対米抑止力の中枢に位置付けており、弾道ミサイルに搭載できる程度に小型化出来なければ意味がなかったわけです。
水爆実験、という表現は今回北朝鮮が初めて用いた表現です。2006年10月9日実施核実験時観測地震波算定規模はマグニチュード4.9、2009年5月25日実施核実験時観測地震波算定規模はマグニチュード5.3、2013年2月12日実施核実験時観測地震波算定規模はマグニチュード5.1、今回観測された地震波はマグニチュード5.1、となっています。水爆は重水素化リチウムか三重水素を用いる核融合反応を利用するもので、原爆の核分裂連鎖反応よりも大威力となります、が、重水素化リチウムか三重水素を超高温超高密度条件に置かなければ核融合反応が始まらない為、その為の条件として超高温超高密度条件醸成に原爆の核分裂連鎖反応を利用します、つまり水爆は原爆を起爆装置とするわけですね。理論上、核分裂を用いずに反物質触媒や陽子加速器利用負電荷核融合反応誘発による純粋水爆の核融合は可能、といわれていますがSFの発想という位置づけにあり、実現はしていません。
北朝鮮水爆実験実施、と題しましたが、北朝鮮水爆実験成功、としなかったのはこの部分にあります。咸鏡北道吉州郡豊渓里核実験場での実験ですが、気象庁が観測した人工地震のエネルギーを示すマグニチュード、今回観測されたものはマグニチュード5.1で前回の核実験と同程度であるため、観測数値の集成が行われるのか、2009年に観測された地震規模よりも小規模な爆発であるが水爆であるのか、水爆実験を行ったが爆発が核分裂に留まり核融合を誘発する事が出来なかったのか、など、今後の検証が必要となります。また、仮に核融合を誘発するための核分裂に用いた原爆のみが起爆しただけであった場合、再度、核融合を期した核実験が実施される可能性があります。これは過去に、2006年10月9日の最初の核実験の際、充分な核分裂が起きなかったために1キロトン程度の核爆発に留まり、わずか半年を経て2009年5月25日に再度核実験を行った背景には、完全な核分裂による核兵器の完成を期したのではないか、という分析も為されました。
安全保障法制が成立し、存立危機事態として我が国安全保障上の重大懸念事項への対処が、国際法上我が国が有する自衛権行使の範疇において可能であるよう法整備が為された訳ですが、その前に従来の周辺事態法の範疇での事態となった訳です、現行法では安全保障法が策源地攻撃を盛り込んでいない為、実行されたならば我が国へ甚大な被害が発生する事態への対処手段、自衛権の先制行使とはいかないものの、これに準じる措置を採る体制、法整備と共に能力構築の必要性が再度議論の場に上るのかもしれません。具体施策として考えられるものを列挙しますと、F-2や補完する対地攻撃能力を有する航空機の増勢、そうりゅう型潜水艦に搭載すべくトマホークミサイルをアメリカから導入し、その上で策源地攻撃に最も困難を課す移動発射装置の索敵用機材、MQ-9無人攻撃機などを装備する、という選択肢など。
冷静になって検証しますと、今後の北朝鮮核問題に関する分岐点ですが、弾道ミサイルへ搭載可能な規模へ弾頭が小型化された際が我が国安全保障上に非常に大きな問題を突き付ける事となるでしょう。潜水艦にトマホークミサイルを搭載し運用すれば、魚雷発射管から投射可能であるとともにアメリカは、イギリスに続きオランダやスペインにも輸出しており、導入を交渉すれば早期に取得は可能でしょう。トマホークならば我が国太平洋上や南西諸島近海からでも朝鮮半島全域への策源地攻撃が可能であるのに加え、ミサイル攻撃を我が国が実施した事を秘匿する事が可能であり、更に北朝鮮は対潜哨戒手段を全く持たない為、一方的に叩くことが可能となります。他方で、北朝鮮は現在、核兵器と弾道ミサイルを保有している一方で、核兵器を弾道ミサイルへ搭載可能な規模まで弾頭小型化に成功したという実証を行っていません。実際に撃ってみるのが一番なのですが、撃ってしまえばアメリカがミニットマンICBMにて反撃を行うため、どのように証明するかが困難なのですが、仮に何らかの手段により小型化に成功したことが証明されるならば、我が国防衛政策は更に大きな転換点に突き出されるでしょう。
現時点で北朝鮮は我が国へ核兵器を運搬する手段を持ちません、弾道ミサイルへ搭載出来るまで小型化する必要があるのです。北朝鮮が主力潜水艦とする1950年代のソ連製ロメオ級潜水艦では水中航続性能が20浬程度でとても日本近海まで到達できませんし、主力爆撃機であるソ連製イリューシンIl-28爆撃機へは搭載能力から運搬手段として用いるのに限界があると共に、非常に飛行性能が限られ航空自衛隊の防空網を突破する事は出来ません。もちろん、貨物船に搭載し近海で起爆、といった特攻作戦という選択肢はあるにはあるのですが、これはテロ的な意味を持つものの単発的に用いるのみであり軍事的効果はありません、何故ならば、二度目が無いのですから。このため、弾道ミサイルへ搭載が可能な水準まで小型化された際が、我が国の安全保障にきわめて重大な転換を強いる時機となる、そう考えます。
北大路機関:はるな くらま
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