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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

榛名防衛備忘録:将来三胴船方式艦艇への一考察【3】 艦載ヘリコプターによるモジュールシステム

2016-01-09 21:04:22 | 先端軍事テクノロジー
■将来三胴船方式艦と航空機
 将来三胴船方式艦は航空機運用能力を以て、疑似的な艦載ヘリコプターによるモジュールシステムを可能とする可能性があります。

 ヘリコプターが独立した戦闘システムとして機能するのであれば、例えばモジュールシップ方式をとり、変なモジュールにより対潜戦闘モジュールや機雷掃討モジュールを搭載するよりは、哨戒ヘリコプターと掃海輸送ヘリコプターを積み替えた方がはるかに確実です。将来三胴船が、1990年代に乱立し、そして平時の管理や積み替え等の負担から固定化され消えて行ったモジュールシステム方式を採用しなかった点は、ヘリコプター運用能力を有している為とも言えます。

 ヘリコプター、自衛隊の至宝です。将来三胴船がヘリコプターへの補給と多目的区画へ魚雷やソノブイ等の備蓄を行い乗員の休息区画を置くことが可能、というものはそれだけで大きな能力となります。必要に応じSH-60K哨戒ヘリコプターを搭載、もしくは陸上の航空基地からSH-60Kを増加配備要請し、整備補給を行い対潜戦闘能力を急速強化することは可能でしょう。

 艦載ヘリコプターによるモジュールシステムというべきでしょうか。掃海艇が潜水艦の標的となりうる可能性についてですが、特に近年の掃海艇は機雷掃討能力が加わり、相当に高性能であるとともに数が限られており、つまり掃海艇の撃沈が対機雷戦の優位につながる高付加価値目標となった訳で、掃海艇そのものが標的となりうるわけです。日施掃海を行うにも8カ所を挙げましたが、掃海隊の数を考えた場合ぎりぎりで、失うわけにはいきません。掃海艇に護衛艦を随伴できるよう護衛艦を増強できれば多少は条件が異なるのかもしれませんが、それはそれで護衛艦の建造費の問題と維持費の問題が出てきます。

 護衛艦を掃海艇に護衛に就けるという仮定、これが護衛艦の定数上限から不可能であるのであれば、双方を兼ねる事が選択肢に上がるが、それ以上にその任務に特化したヘリコプターの洋上拠点とすればよい、掃海隊は非磁性を設計に盛り込むことで機雷からの秘匿性を確保出来るが護衛艦はそのような施策を行うには消磁といった程度に限られるなど限界があります。もちろん、将来三胴船方式艦艇、曳航式掃海器具からUUVやUSVなどに特化せざるをえないため、専門の掃海艇と比較し掃海能力に影響がどの程度出るかは未知数なのですが、ね。

 それでは独自の武装はどの程度まで搭載が可能なのでしょうか、要求されている速力性能は現在の掃海艇と比較し倍以上ですので一隻の対応海域を広くとる事が出来るでしょう。将来三胴船について、ソナーなどは想定されていないとしましたが、機雷戦ソナー等は搭載されている事でしょうけれども、其処に加えミッションベイに必要な対潜機材を搭載し、例えば曳航ソナーを搭載、艦上に短魚雷発射管、配置する場所がなければ魚雷投射装置を搭載することで、対潜戦闘にはある程度対応できるでしょう。

 対潜掃討と機雷戦対処能力は将来三胴船方式艦艇のセンサーだけではなく、やはりヘリコプター運用能力に依存するところが大きくなるでしょう。海上自衛隊の哨戒ヘリコプターはヘリコプター搭載護衛艦はるな就役とともに開始されたHSS-2の時代から、対潜任務用のシステムを全て搭載する比較的高価な機体を選定しており、吊下げ式のディッピングソナーと機上戦術情報処理装置を搭載し独立した対潜戦闘システムを構成してきました。

 航空機が独立した対潜戦闘遂行能力を有するという意味は大きく、例えばアメリカ海軍などではLAMPS軽空中システムとして艦載ヘリコプターを水上戦闘艦のセンサーを航空機に搭載し延長線上の超水平線運用を行う、という視点にて運用し駆逐艦等の補完に当てていましたが、海上自衛隊は伝統的に独立運用を想定し、海峡警備等にも対潜哨戒任務へ哨戒ヘリコプターを独立し運用させてきました。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (1)
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