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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日本版海兵隊"水陸機動団"沖縄配備計画!新編第3水陸機動連隊,キャンプハンセンへ展開報道

2017-11-01 20:15:07 | 防衛・安全保障
■水陸機動団,米軍グアム移転後
 本日付の朝日新聞報道によれば、日本版海兵隊として今年度末に佐世保に新編される水陸機動団、その一部部隊がアメリカ海兵隊グアム移転後の抑止力空白を補うべく沖縄に配置されることとなりました。

 沖縄県と鹿児島県島嶼部へ中国による軍事圧力が年々高まり、中国軍機接近異常増大や海軍艦艇の大量接近、公船の領海侵犯恒常化と西日本へのミサイル爆撃機飛行等その影響が顕著となる中、政府は九州沖縄への防衛力強化を急ぎ、水陸機動団新編、石垣島と奄美大島へのミサイル部隊を進めていますが、新たに沖縄本島への部隊配置方針が示されました。

 南西諸島島嶼部防衛を主眼に陸上自衛隊は今年度末の2018年3月、佐世保の相浦駐屯地に水陸機動団を新編します。水陸機動団司令部は相浦駐屯地に置かれ、九州を中心に南西諸島防衛の能力を強化しますが、今回新たに2020年度以降を目処に新たに沖縄県沖縄本島へも水陸機動団隷下部隊新編部隊を配置する方針がある、朝日新聞報道により判明しました。

 佐世保市は海上自衛隊佐世保基地に九州南西諸島を防衛警備管区とする佐世保地方総監部を置き、ヘリコプター搭載護衛艦いせ、始め護衛艦隊隷下の護衛艦部隊である第2護衛隊群等の母港、加えてアメリカ海軍両用艦部隊が前方展開しており、強襲揚陸艦やドック型揚陸艦と輸送揚陸艦、そしてエアクッション揚陸艇LCAC整備施設等が配置されています。

 沖縄本島への水陸機動団隷下部隊新編部隊配置は、沖縄県金武町のアメリカ海兵隊キャンプハンセンを日米共用とし、駐屯するとみられています。この施策は、2005年の米軍再編日米合意に基づく海兵隊一部のグアム移転に合せ、2020年代前半にも4000名程度の部隊が沖縄本島を離れる為、キャンプハンセンの収容力に余裕が生じる事からの施策でしょう。

 水陸機動団は現在の相浦駐屯地西部方面普通科連隊を基幹とし、第1水陸機動連隊、第2水陸機動連隊、第3水陸機動連隊、戦闘上陸大隊、偵察中隊、特科大隊、施設中隊、通信中隊、後方支援大隊、以上を基幹とする方針です。年度末に新編の時点では人員2100名を基幹としますが、第3水陸機動連隊等は含まれず、編成完結時は3000名規模の部隊となる。

 第3水陸機動連隊新編が2020年代前半を予定しており、キャンプハンセンへの新編部隊はこの部隊が想定され、水陸機動連隊と共に後方支援大隊より後方支援大隊より水陸機動直接支援中隊等の支援部隊駐屯も想定される事で、800名から900名規模の駐屯が想定されます。沖縄県を防衛警備管区とする第15旅団と共に第3水陸機動連隊が増強されるかたち。

 キャンプハンセンは現在、那覇に司令部を置く第15旅団が隷下部隊の訓練に活用し、既に事実上の日米共用施設となっています。これは従来、那覇に司令部を置く第1混成団が沖縄県内に演習場を持たず、迫撃砲や無反動砲射撃の訓練へ毎回九州の日出生台演習場へ転地演習を強いられ、混成団の旅団改編に合せ戦闘部隊増強時の困難が指摘されていました。

 第15旅団への第1混成団増強改編と共に、旅団へは87式偵察警戒車や軽装甲機動車、120mm重迫撃砲や中距離多目的誘導弾といった装備が配備され、演習場確保が大きな問題となった事で、日米政府間での合意に基づきキャンプハンセンでの自衛隊訓練が可能となった訳です。第3水陸機動連隊新編はこの下地に依拠し、本格的な日米共用を開始します。

 アメリカ海兵隊のグアム移転と共に空白となる防衛力を自衛隊が補う形で、水陸機動団主力はそのまま佐世保に駐屯しますが、一個連隊でも展開する事は多少の意義はあるでしょう。海兵隊の移転規模は人数だけでも水陸機動団と第15旅団の合計よりも多く、抑止力の空白を放置した場合、第二次沖縄戦を誘致する事となりかねず、むしろ前倒しすべきです。

 しかし、同時に人員面と装備充実を忘れてはなりません。統合機動防衛力整備の骨幹事業一つとして進められる水陸機動団新編ですが、一方で陸上自衛隊定員をほぼそのままとして、3000名規模部隊を新編する為、全国の師団旅団と方面隊直轄部隊は人員不足と予算不足により破綻寸前です。西部方面普通科連隊を元に3個水陸機動連隊を新編するのですから、全国の部隊から数人単位で抽出する無理を重る状況だ。

 新編部隊もAAV-7水陸両用車を運用の戦闘上陸大隊は戦車部隊を潰して、偵察中隊も九州の戦車部隊を廃止し余剰人員を抽出、特科大隊新編へ方面特科部隊の重砲部隊を廃止し重迫撃砲部隊へ、施設中隊も方面施設団や九州の師団施設大隊から抽出、通信中隊や後方支援大隊も全国から中抜きし対応している為、中には独立した戦闘が困難な部隊も出ている。

 即応機動連隊として統合機動防衛力整備もう一つの骨幹事業が進められ、来年度より全国の師団と旅団の一部への機械化歩兵部隊新編が予定されていますが、これも装甲車を増強せず装甲部隊のみ増強した為、元々自衛隊に少ない装甲車両を一挙に集中したものとなり、人員増強と装備強化を行わない統合機動防衛力整備は、南西諸島防衛とは別の次元で問題を有しています。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (4)
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