北大路機関

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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【24】JSMミサイルの長射程とSH-60K哨戒ヘリコプター

2018-11-19 20:15:12 | 先端軍事テクノロジー
■長射程化する艦対艦戦闘
 SH-60J/K哨戒ヘリコプターは潜水艦を制圧すると共に護衛艦のミサイル戦におけるセンサーとしての任務を担いますが、長射程化する艦対艦戦闘への対応という課題が。

 F-35B戦闘機をセンサーノードとして運用する、この発想は現在SH-60J/K哨戒ヘリコプターが実施しているセンサーノード任務の代替を目指すものです。F-35Bは護衛案むらさめ型、たかなみ型、あきづき型、あさひ型、といった従来の護衛艦からは運用がほぼ不可能、緊急時着艦する程度しか出来ませんが、全通飛行甲板型護衛艦ならば話は違います。

 EO-DAS/AAQ-37電子光学分散開口はF-35の機体各所に設置されている電子光学センサー複合情報を包括し機体全体に電子の眼を配置した器材で、昼夜問わない超長距離の水上目標や航空目標を電波を出さず識別追尾が可能、EOTS/AAQ-40電子光学目標指示システムは従来レーダーに依存した長距離索敵を光学情報のみで展開可能で、レーダー波を出さない。

 JSM空対地ミサイルは射程350km、現在はF-15JやF-35A戦闘機の空対地ミサイルとして導入が開始される段階ですが、将来的には護衛艦へMk.41垂直発射装置から投射される艦対艦ミサイルとしてその派生型が採用される可能性があります。海上自衛隊は現在、ハープーン艦対艦ミサイルと国産のSSM-1艦対艦ミサイル及びその改良型を運用中です。

 ハープーン及びSSM-1は射程が150km前後で、1980年代の導入当初でこそ、当時は対水上攻撃の主流が艦砲でしたので、その長射程は大きな能力向上となりましたが、あれから間もなく40年、現在は世界規模での艦対艦ミサイル体系の射程延伸時代にあり、ハープーンの射程は、誘導装置等に改良が加えられたとはいえ、当時程の優位性を有していません。

 SH-60J/K哨戒ヘリコプターは、そのハープーン誘導用に当時からその高い能力を発揮しています。基本的に母艦から200km以遠の哨戒が可能という高性能を有しており、勿論、シチルシステムのようなソ連版ターターシステムに当る広域防空艦、その改良型が普及しますとSH-60での哨戒は必ずしも安全とは言い切れませんでしたが、充分有用といえました。

 350kmのJSMがハープーンの後継に採用された場合、護衛艦から400km以遠の目標を標定する事となるのですが、SH-60J/K哨戒ヘリコプターの航続距離から考えた場合、400kmという距離は、目標の大まかな方向などが得られていたとしても少々厳しいかもしれません。元々200km以遠での哨戒任務を念頭としている訳ですから、倍増は単純ではないもの。

 SM-6艦対空ミサイル、射程370kmの艦対空ミサイルですが、21世紀も2020年代が間近になり艦対空ミサイルの射程は年々延伸しており、SM-6は米豪に続き海上自衛隊も導入、この種のミサイルに該当する周辺国の装備も同様に射程が延伸しています。敵広域防空艦のミサイル射程外からSH-60が目標情報を標定伝送する事は、将来も可能なのでしょうか。

 P-1哨戒機、陸上の航空基地から運用し長大な航続距離を有する国産哨戒機は、データリンクにて結べばセンサーノードとして運用可能でしょう。P-1哨戒機のHPS-106は超長距離捜索が可能というXバンド帯方式のアクティブフェーズドアレイレーダーであり、広範囲索敵モードに加え限定地域への超長距離精密捜索モードが備えられているともいわれます。

 HPS-106の超長距離索敵能力は水上目標に威力が期待できる一方、P-1哨戒機は陸上基地から運用されるという能力上の限界があり長大なシーレーン全域に展開が難しい。更にステルス性を有さない為に中国海軍航空母艦艦載機を想定したならばSu-30級の第4.5世代戦闘機等の経空脅威下での運用への限界があります。F-35Bならばこの制約はありません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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