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新防衛大綱とF-35B&EA-18G【23】F-35B艦上哨戒機の検討とE-767早期警戒管制機

2018-11-06 20:11:13 | 先端軍事テクノロジー
■E-767のシーレーン防衛検討
 F-35Bのセンサーノードとしての可能性、これは過去のE-767に関する運用検討から垣間見る事も出来ます。

 航空自衛隊のE-767早期警戒管制機、浜松基地へ配備されています。12時間にも上る滞空時間と共に高高度から一機で数百km以内、高空目標ならば1000km四方を警戒すると共に2000以上の脅威情報を包括管理し戦闘機部隊や地対空ミサイル部隊の要撃管制と戦域情報統制を行う、航空自衛隊の至宝というべき存在で、導入には巨費を投じつつ毎年更に巨費を投じ能力強化を怠らない。

 F-35B戦闘機についても、実はこのE-767早期警戒管制機のような長期的視野から考える必要があるかもしれません。単に艦隊防空戦闘機を必要とするならば、先んじてKC-767空中給油機とF-15C戦闘機を海上自衛隊も導入し陸上基地から運用する、という選択肢が有る筈です。F-15Cの戦闘行動半径は1900km,F-35Bの830km戦闘機より遥かに大きい。

 トーネード攻撃機、海軍が航空母艦を保有しないのに戦闘機等を装備する、という事例は皆無ではありません。実際、冷戦時代のドイツ海軍は航空打撃力が必要となった際に空軍とは別個にトーネード攻撃機を導入、コルモラン空対艦ミサイルを装備させ、航空打撃力として運用しました。少し角度は異なるが空母導入前の中国海軍も戦闘機を装備している。

 E-767早期警戒管制機は導入当時こそ、それこそ識者が叩く防衛費の無駄遣いの象徴のように揶揄されたものでした。もう一つ防衛費の無駄遣いの象徴として叩かれたものがイージス艦、しかし、E-767早期警戒管制機が無ければ現在の南西諸島はもう少し厳しい状況であったでしょうし、イージス艦が無ければ北朝鮮核実験を前に日本核武装論が再燃したやもしれない。

 イージス艦と共に長期的な防衛政策の観点からは、まさに防衛費の余裕がある、つまり戦闘機を一機でも多数を揃えなければならない現在のような状況下へ陥る前に揃えておくことが出来て僥倖であったというE-767早期警戒管制機ですが、この導入当初、必要性として列挙された任務の一つにシーレーン防衛支援があったのはご記憶の方いますでしょうか。

 潜水艦やミサイル爆撃機、シーレーン防衛の脅威というものは基本的にこうしたものが考えられるのですが、E-767とシーレーン防衛、と言いますと何か違和感を受けられる方が要るようです。しかし、これは決して航空自衛隊が早期警戒管制機を揃えたいが為に提示した有象無象の防衛論点ではなく、当時の防衛庁として必要としていた装備運用体系でした。

 護衛艦と哨戒機が展開するシーレーン防衛、特に哨戒機は当時のP-3C哨戒機、まだあの頃は対潜哨戒機と区分されていた時代ですが、決して飛行時間に上限のある対潜哨戒機が近海用で、補給艦から補給を受ければ一ヶ月二ヶ月単位で航行できる護衛艦が外洋用、という訳ではなく、P-3C哨戒機は6600kmの航続距離を以て共同作戦を担う運用が基本です。

 シーレーン防衛へ早期警戒管制機が必要、とされた背景にはイージス艦のSM-2艦対空ミサイルの運用を最も効率的に展開するには、陸上航空基地から長大な航続距離を有し、海上自衛隊行動圏内は任務可能、船団護衛任務に当る護衛艦部隊へ航空脅威が接近する際には即座に警戒管制を行うと共に低空脅威を含め、いち早く長射程のSM-2により迎撃できる。

 ただ、御承知の通りE-767は航空自衛隊が本土防空の切り札として運用しています。実際、航空自衛隊の任務にシーレーン防衛は含まれていませんし、海上自衛隊との艦隊データリンクの形成よりも航空自衛隊戦闘機とのデータリンク構築とその強化が優先されています。虎の子というべき重要な装備故、海上自衛隊情報優位へ協力する余裕が無いのが実情です。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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