北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新防衛大綱とF-35B&EA-18G【22】F-35B艦上哨戒機の必要性とSH-60哨戒ヘリコプター

2018-11-01 20:10:37 | 先端軍事テクノロジー
■ポストハープーン時代への備え
 海上自衛隊は単に防空戦闘機を欲している訳ではないと考えます、それならば先に戦闘機陸上配備でも事足りる。目指すのはポストハープーン時代への備えなのかもしれません。

 ハープーンは海上自衛隊を筆頭に自由主義圏の主力対艦ミサイルとして多数が整備されましたが、もともと対艦ミサイルは小型艦艇に艦砲並の射程を持たせる対水上打撃力を装備させるという設計であったものが徐々にその射程を延伸させており、ハープーンミサイルの射程はかつての艦砲を遥かに上回っています。そしてこれも次世代を迎えつつある。

 F-35Bについて、海上自衛隊は対水上戦闘の観点からその必要性を認識している事は明らかです。海上自衛隊は世界的に見ても早い時期から艦載機としてヘリコプターを多用しており、HSS-2を護衛艦はるな艦上において運用開始したのは1973年のこと。そのHSS-2後継機に導入されたSH-60Jは原型機が元々水上戦闘艦のセンサーとして開発されました。

 海上自衛隊が艦対艦ミサイルの運用を開始したのは護衛艦いしかり、そして量産成った艦隊護衛艦の、はつゆき型により一挙に対水上戦闘の主力が艦砲からミサイルへ転換するとともに、射程200kmという艦対艦ミサイルの索敵は護衛艦の艦載レーダーでは水平線の向こうを索敵出来ず、その任務にはヘリコプターの搭載レーダーが必須となっている訳です。

 しかし、ヘリコプターの難点は広域防空艦に対する脆弱性でした。護衛艦あまつかぜ、たちかぜ型護衛艦、はたかぜ型護衛艦とターターシステムを搭載する広域防空艦が相手ならば、当初ターターシステムと連動するターターミサイル射程は18kmで、ヘリコプターはターターミサイルの射程外から目標情報を母艦に伝送、ハープーンでの攻撃が可能でした。

 ターターミサイルは射程38kmのスタンダードミサイルへ換装されますと、ヘリコプターの飛行高度からスタンダードミサイル射程圏内に入らないよう索敵情報を母艦に伝送する事は困難ではありませんが危険を伴い、陸上の航空基地からの高性能長航続距離のP-3C哨戒機との協同を重視し、大まかな目標座標情報に依拠し索敵を行う戦術を構築しています。

 イージス艦の配備はこの状況を一変させました。対抗演習においてその有無は劇的と言えまして、スタンダードSM-2は実質100kmの射程を有しており、P-3CもSH-60も水平線上の見通し線上に展開した瞬間に航空機はイージス艦のSPY-1レーダーにより捕捉され、特に100kmの長射程対空ミサイルの圏外から哨戒飛行を行う事はほぼ不可能となりました。

 P-3C哨戒機には電波探知能力強化に関する近代化改修が行われると共に、護衛艦隊は将来、イージス艦に該当する広域防空艦脅威が世界的に拡散する想定を行い、新たに開発のP-1哨戒機にはその搭載レーダーに超長距離索敵機能が付与され、更に電子情報収集機等の情報収集機を増勢する事で能力向上を行っています。しかし、必ずしも十分ではありません。

 ポストハープーン時代というべき対艦ミサイルの長射程化、海上自衛隊は新たにNSSM艦対艦ミサイルを量産が決定した3700t型護衛艦から搭載が開始されますが、将来的には射程350kmのVL-JSM配備が想定されます。これはスタンドオフミサイルとして自衛隊へ配備が決定しているJSMミサイルの艦載型で、ハープーン後継へ米海軍がOASuWとして国際共同開発を進めているもの。

 艦対艦ミサイルの長射程化は世界的に進んでおり、200km前後の射程では用途が限られる可能性が高く、まさにポストハープーン時代というべきもの。一方、そこまでの長射程化したミサイルをSH-60が誘導するには限度があります。こうした中、2017年12月ごろから政府部内においてF-35B戦闘機を導入し海上自衛隊の張りコプター搭載護衛艦艦上において運用する方針が示されており驚かされる。

 ただ、ロイター通信や読売新聞報道では政府部内においてF-35Bを艦載運用する際、主任務として南西諸島防空を考えている旨が示されており、これでは海上自衛隊の運用とかい離します。これまで海上自衛隊は都市防空を含めた地域防空を航空自衛隊任務と割り切っており、まさか海上自衛隊が南西諸島防空へ参画を求められるとは想定外だったでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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