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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

新防衛大綱-F-35B戦闘機四〇機取得の政府方針,いずも型ヘリコプター搭載護衛艦等から運用

2018-12-13 20:18:31 | 国際・政治
■F-35B,新中期防で飛行隊新編
 ヘリコプター搭載護衛艦からの垂直離着陸も可能であるF-35B,政府はかなり本腰を入れて整備するようです。

 100機が追加導入される方針のF-35戦闘機について、このうち垂直離着陸能力を有し護衛艦の艦載機として運用可能なF-35B戦闘機、産経新聞本日付の報道によれば40機の導入を念頭とし、新中期防衛力整備計画に盛り込まれる今後五年間の装備調達では20機を取得し、最初の飛行隊を創設、続いて40機体制の完成と共に2個飛行隊体制を構築するとの事です。

 中期防衛力整備計画へF-35B戦闘機を20機盛り込み、との報道ですが、これで新中期防衛力整備計画に100機のF-35取得が盛り込まれる可能性は無くなりました。ただし、現在取得中のF-35A戦闘機42機により、度を越して老朽化が進むF-4EJ改戦闘機の更新事業は完了します。続いて航空自衛隊は並行しF-2戦闘機後継機事業での開発本格化時期が来る。

 F-15J戦闘機102機とF-35戦闘機142機にF-2戦闘機88機、F-35戦闘機100機の追加事業が新中期防に続く次期中期防に完了するのか、またはさらに長期の機関を要するのかは不明ですが、2020年代には基本的に上記戦闘機が我が国防空を担う事となります。一方、40機のF-35B,実はこれほどの本腰での調達を行うとは、と少々驚かされるものでした。

 局地戦闘機、こう表現しますと紫電改や雷電のような大時代的な印象を与えますが、F-35Bは主要基地が破壊された場合の復旧まで、地方空港や代替滑走路に護衛艦などを拠点として航空優勢維持に充てる、との運用が政府部内からの説明として為されていました。しかし、この種の運用を航空自衛隊が元来重視しておらず、実は後者を政治が、と考えた事も。

 いずも型護衛艦、ひゅうが型護衛艦からの運用を航空自衛隊が本命視するとは考えにくく、航空自衛隊としては海上自衛隊への協力よりもF-15後継機としてのF-35A取得が最優先であり、寄り道する余裕はないという印象でしたので、例えば護衛艦改造費用のみが中期防に計上され米海兵隊F-35Bでの評価試験予算のみ盛り込まれるのではないか、と懸念した。

 結果的にF-35Bは航空自衛隊が導入する場合でも、少数機に留まるのではないか、という危惧もありました。危惧と表現するのは少数機であればる程、運用費用は機種が増える分だけ確実に上昇する点と共に、運用実績や経験蓄積等で非常に不利となる為です。しかし、40機という数字、現在取得される42機のF-35Aにほぼ同等の機数が導入、これは驚きだ。

 南西諸島航空優勢確保、政府部内ではF-35Bを40機必要とする程に厳しく認識されているのでしょうか。実際、紀伊半島沖まで長距離巡航ミサイルを搭載するH-6ミサイル爆撃機が飛来する昨今、南西諸島が中国の脅威に、という認識は民主党政権時代の懐かしい話であり、指揮中枢破壊を期する首都圏ミサイル飽和攻撃という懸念も杞憂とは言い切れない。

 海上自衛隊が全通飛行甲板型護衛艦を採用した時点で、F-35Bをセンサーノード機として構想、これはこれまでデジタル化された艦隊防空システムとデータリンク基盤整備と指揮統制システム構築を優先し、幾度かハリアー攻撃機やファントム戦闘機を導入する機会が在りながら、実際に取得しなかった為、独自の戦闘機への関心度の低さから推測できます。

 航空母艦を整備して航空優勢確保へ、という視点が海上自衛隊に全くないかと問われれば、いつかは伊豆に別荘をせめて湖北にログハウス、と我々が願う程度には考えているのでしょうが、航空優勢確保は航空自衛隊の任務であり、海上自衛隊として新しい任務を抱え込むほどに余裕が無い点を差し引けば、いつか、という範疇を出るものではありません。

 F-35B戦闘機、飛行隊編成について航空自衛隊が20機調達を以て飛行隊を編成している、という部分は、空軍型の編制を想定しているといえるでしょう。米海軍空母航空団や海兵航空団では10機から12機を飛行隊編成としていますので、実は減耗予備機等を度外視した場合、40機とは4個飛行隊所要ともいえるのですが、編成上は航空自衛隊型となります。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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コメント (9)
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