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【京都幕間旅情】釘抜地蔵,家隆山石像寺は痛封じ祈願にて国民病頭痛腰痛肩凝りへ立ち向かう

2018-12-27 20:14:41 | 写真
■師走の激務に痛み封じ祈願
 年末という事で今年一年の疲れがたまる今日この頃です、この日々疲れが痛みに転じてどれだけ経ったでしょう。

 釘抜地蔵、京都の千本通りを千本今出川からもう少し上りますと花車町、上立売からもう少しだけ、それほど大きな寺院ではないのですが弘法大師空海所縁の寺院があります。東京巣鴨の有名な、とげぬき地蔵、と異なるのですが上りの右手に小さな、しかし、奥に山門が。

 デスクワークといいますか、PCを目の前に日がな一日中毎日と仕事をしていますと、どうしても肩は凝りますし眼も疲れてきまして、同じ姿勢が続きますと腰も、と。まあ、院生時代のようにもう少し激甚な痛みは出ない分、年季で強くなったとは思いますが、いたい。

 現代人にとり、頭痛は国民病といいますか、腰痛に肩こりは仕方がないものなのでしょう。いっそのことマッサージチェアに身を預けて仕事を、と考える今日この頃ですが、実は京都には痛みを封じる寺社仏閣は多い、昔から痛みは国民の友、だったのでしょうか、ね。

 石像寺、家隆山光明遍照院石像寺といい、釘抜地蔵として親しまれています。千本通り界隈は、千本北大路を境に金閣寺や大徳寺と京都を代表する寺院、観光名所が広まっているのですが、京都五山や世界遺産という響きや形の上の風格だけが、京都ではありません。

 千本通りとはその名の由来、卒塔婆が千本林立していた事に由来するといわれまして、釘抜地蔵のすぐ北には建勲神社で有名な船岡山があります。そしてその船岡山は元々が風葬地だったというのですね。ここは忌みというよりも平等、という感覚が相応しいでしょう。

 船岡山の風葬地は、送る、という制度が現代の様に確立する前の時代において、人々は別れをどのように考えるかという一種社会学的で民俗学的な視点を前に、京都五山の伽藍と共に送られる人々だけが救われるのではない、とした我が国の宗教観が現れたといえます。

 弘法大師空海所縁の寺院、さて石像寺についてですが、その始まりは弘仁年間の819年まで遡るという。浄土宗の寺院として崇敬を集める一方、始祖まで遡れば当初は真言宗寺院であった。時代と共に、これは京都では多く全国にも多いと思いますが宗旨替えがあった。

 地蔵菩薩を本尊とする石像寺は、弘法大師空海が唐から持ち帰った石を地蔵菩薩へとほりぬいたという言い伝え。釘抜地蔵とはその御本尊そのものなのですが、驚かされるのは無数の提灯と共に壁を覆い尽くすくぎ抜きの数々で、これが石像寺を釘抜地蔵で有名とした。

 俊乗坊重源、東大寺大勧進職として有名な平安末期から鎌倉初期にかけての高僧の時代、宗旨替があったという。御本尊の地蔵菩薩はそのまま、そしていつしか、御本尊に参れば苦しみを抜き取るという御利益があると広まった事で苦抜地蔵と呼ばれるようになります。

 痛みとの戦い、今日の我が国では健康保険制度と社会福祉制度が完成していますので、痛い、というならば医者に行けば僅かな自己負担で、そして健康診断のお蔭で大病が悪化する前に発見する事が出来る時代となりましたが、中世の頃は打つ手なし、に他なりません。

 室町末期、この頃までは苦抜地蔵と敬愛されていましたが釘抜地蔵と呼ばれるようにはなっていなかった、その由来は一つの逸話から成り立ったという。洛中の商人に紀ノ国屋道林という者が毎夜続く激痛に苦しみ、万策尽きて地蔵菩薩へ願掛けを行うに至ったという。

 苦抜地蔵に紀ノ国屋道林が続ける事願掛けは七日間に及び、七日目の夜にとうとう道林夢枕に地蔵菩薩が立つ。曰く激痛の因縁は前世に行った八寸釘の呪術が返ってきた、しかし前世の因縁も得度により漸く逃れた。夢覚め気付ば激痛は収まり、その日にお礼参りへ。

 釘抜地蔵、この時まだ苦抜地蔵、紀ノ国屋道林が詣でますと、地蔵菩薩の目の前に赤く錆びた八寸釘が落ちており、痛みが消えた神威の意味を知った、と。これは逸話なのでしょうか、しかし、苦抜地蔵には激痛封じへ釘抜きが多々奉納されるようになり、今日に至る。もちろん私もお祈りしました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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