■中期防,F-35百機追加も明記か
今後五年間の防衛政策を定める新防衛大綱は垂直離着陸が可能な第五世代戦闘機F-35Bの導入と、ヘリコプター搭載護衛艦へのF-35B運用能力追加で最終調整が行われています。
F-35B戦闘機を航空自衛隊が導入する、という方針で新しい防衛計画の大綱は固まりつつある、“護衛艦「いずも」改修で“空母化”を 防衛大綱の骨子案”、“いずも空母化 常時搭載の戦闘機部隊は設けず 政府・自民党”、“最新鋭戦闘機 F35B導入の政府方針 自公が了承”少なくともここ数日間、防衛大綱のNHK報道を視る限りはそうした印象を受けます。
多用途運用護衛艦、ヘリコプター搭載護衛艦という呼称から考えるにDDV航空機搭載護衛艦や、全通飛行甲板型護衛艦、という呼称の方が妥当性を感じないでもありません。しかし、既存のヘリコプター搭載護衛艦の拡張性を最大限活用し、多種多様な航空機を運用するという構図です。一方、戦闘機部隊の艦上固定運用を行わない調整も検討中とのこと。
今回特に驚いたのはF-35B導入が防衛大綱へ盛り込まれる、という点です。これはF-15J戦闘機後継機として導入されるF-35戦闘機100機の導入が、F-15戦闘機後継機という意味での導入ではなく、防衛大綱について今後五年間で具現化される中期防衛力整備計画へ盛り込まれるとも解釈できるもので、一年間に20機というF-15並の導入を意味します。
いずも型護衛艦をヘリコプター搭載護衛艦を多用途運用護衛艦へ改造する、という報道と共に同意に航空自衛隊へ新編されるF-35B部隊については、護衛艦艦上での固定運用を行わない方向で調整しているとの事で、垂直離着陸が可能というF-35Bの数多い発着施設の一つに護衛艦を間借りしたい航空自衛隊と海上自衛隊受入負担、相互の妥協案とみえる。
センサーノード機としてF-35を必要とする海上自衛隊と第五世代機として理解する航空自衛隊、実際には海上自衛隊が独自のF-35Bを導入し、広域防空艦の脅威が増大する中において撃墜される事無く、イージス艦のSM-6対空ミサイルへの誘導や長射程化する対艦ミサイルに併せた索敵へ活用したいところですが、海上自衛隊には現在、操縦士がいません。
航空自衛隊のF-35Bを統合運用するならば一見問題はなさそうですが、防空という任務がある。戦闘機を派遣する航空自衛隊が海上自衛隊以上にセンサーノード機という重要性を理解できるかと問われれば、組織として内部化できるかには疑問が残ります。一方、今回の発着施設としての多用途運用護衛艦との選択肢、中途半端な印象がないでもありません。
多用途運用護衛艦、しかし、航空自衛隊にとって垂直離着陸可能な航空機とは未知の領域です。数多の災害派遣実任務や防災訓練において航空自衛隊パイロットで護衛艦に発着した要員は少なくは無いのですが、基本的に救難ヘリコプターや輸送ヘリコプターに限られ、航行中で揺れる艦上へF-35Bを着艦させるには、航空自衛隊の教育体系では不可能です。
防空管制任務についても、護衛艦は自衛隊統合情報ネットワークには連接していますが、航空自衛隊JADGE自動警戒管制システムと護衛艦のMOFシステムの連接性については未知数であり、高性能な対空レーダーを標準装備する海上自衛隊の護衛艦もJADGE自動警戒管制システムへ連接していない点を考えれば、多用途運用護衛艦の加入は簡単ではない。
局地防空任務を展開するにも護衛艦の艦上までJADGE自動警戒管制システムを展開させるのか、展開させるのであればイージス艦とF-35を結ぶNIFC-CA海軍統合火器管制システムとの連接性を航空自衛隊も逆に確立するのか、つまりJADGE自動警戒管制システムとNIFC-CA海軍統合火器管制システムとF-35MADLの連接という難しい課題が生じる。
将来的には海上自衛隊が独自のF-35Bを導入したいという念頭で、しかし、現在の海上自衛隊にはT-5練習機やTC-90練習機しか配備されておらず、ジェット機要員も単座航空機要員も教育訓練する課程が整備されていません。その上で、将来的に自前のF-35Bを取得するまでの調査研究の視点から、航空自衛隊F-35Bを一時的に受け入れるのかもしれない。
それでは航空自衛隊のF-35Bは丸損かと問われますと、基地機能がミサイル攻撃などで喪失した際の補助用には確かに用途があります、イギリス空軍がハリアーを海軍とは別に配備した点と似ているかもしれません。その上で海上自衛隊が必要としているものはこれまでも繰り返した通り、戦闘機ではなく、センサーノード機ですが、機体は同じF-35です。
海上自衛隊が将来的に自前のF-35Bを導入した後にも、その機体が移管という方式を執らない限り、航空自衛隊が局地防空として必要となれば、艦上に展開し海上自衛隊のF-35Bと共に任務に当るとの選択肢も将来生まれる余地があります。フォークランド紛争の空軍ハリアーと同じで、航空自衛隊がF-35Bを導入した場合も丸損とは言い切れないでしょう。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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今後五年間の防衛政策を定める新防衛大綱は垂直離着陸が可能な第五世代戦闘機F-35Bの導入と、ヘリコプター搭載護衛艦へのF-35B運用能力追加で最終調整が行われています。
F-35B戦闘機を航空自衛隊が導入する、という方針で新しい防衛計画の大綱は固まりつつある、“護衛艦「いずも」改修で“空母化”を 防衛大綱の骨子案”、“いずも空母化 常時搭載の戦闘機部隊は設けず 政府・自民党”、“最新鋭戦闘機 F35B導入の政府方針 自公が了承”少なくともここ数日間、防衛大綱のNHK報道を視る限りはそうした印象を受けます。
多用途運用護衛艦、ヘリコプター搭載護衛艦という呼称から考えるにDDV航空機搭載護衛艦や、全通飛行甲板型護衛艦、という呼称の方が妥当性を感じないでもありません。しかし、既存のヘリコプター搭載護衛艦の拡張性を最大限活用し、多種多様な航空機を運用するという構図です。一方、戦闘機部隊の艦上固定運用を行わない調整も検討中とのこと。
今回特に驚いたのはF-35B導入が防衛大綱へ盛り込まれる、という点です。これはF-15J戦闘機後継機として導入されるF-35戦闘機100機の導入が、F-15戦闘機後継機という意味での導入ではなく、防衛大綱について今後五年間で具現化される中期防衛力整備計画へ盛り込まれるとも解釈できるもので、一年間に20機というF-15並の導入を意味します。
いずも型護衛艦をヘリコプター搭載護衛艦を多用途運用護衛艦へ改造する、という報道と共に同意に航空自衛隊へ新編されるF-35B部隊については、護衛艦艦上での固定運用を行わない方向で調整しているとの事で、垂直離着陸が可能というF-35Bの数多い発着施設の一つに護衛艦を間借りしたい航空自衛隊と海上自衛隊受入負担、相互の妥協案とみえる。
センサーノード機としてF-35を必要とする海上自衛隊と第五世代機として理解する航空自衛隊、実際には海上自衛隊が独自のF-35Bを導入し、広域防空艦の脅威が増大する中において撃墜される事無く、イージス艦のSM-6対空ミサイルへの誘導や長射程化する対艦ミサイルに併せた索敵へ活用したいところですが、海上自衛隊には現在、操縦士がいません。
航空自衛隊のF-35Bを統合運用するならば一見問題はなさそうですが、防空という任務がある。戦闘機を派遣する航空自衛隊が海上自衛隊以上にセンサーノード機という重要性を理解できるかと問われれば、組織として内部化できるかには疑問が残ります。一方、今回の発着施設としての多用途運用護衛艦との選択肢、中途半端な印象がないでもありません。
多用途運用護衛艦、しかし、航空自衛隊にとって垂直離着陸可能な航空機とは未知の領域です。数多の災害派遣実任務や防災訓練において航空自衛隊パイロットで護衛艦に発着した要員は少なくは無いのですが、基本的に救難ヘリコプターや輸送ヘリコプターに限られ、航行中で揺れる艦上へF-35Bを着艦させるには、航空自衛隊の教育体系では不可能です。
防空管制任務についても、護衛艦は自衛隊統合情報ネットワークには連接していますが、航空自衛隊JADGE自動警戒管制システムと護衛艦のMOFシステムの連接性については未知数であり、高性能な対空レーダーを標準装備する海上自衛隊の護衛艦もJADGE自動警戒管制システムへ連接していない点を考えれば、多用途運用護衛艦の加入は簡単ではない。
局地防空任務を展開するにも護衛艦の艦上までJADGE自動警戒管制システムを展開させるのか、展開させるのであればイージス艦とF-35を結ぶNIFC-CA海軍統合火器管制システムとの連接性を航空自衛隊も逆に確立するのか、つまりJADGE自動警戒管制システムとNIFC-CA海軍統合火器管制システムとF-35MADLの連接という難しい課題が生じる。
将来的には海上自衛隊が独自のF-35Bを導入したいという念頭で、しかし、現在の海上自衛隊にはT-5練習機やTC-90練習機しか配備されておらず、ジェット機要員も単座航空機要員も教育訓練する課程が整備されていません。その上で、将来的に自前のF-35Bを取得するまでの調査研究の視点から、航空自衛隊F-35Bを一時的に受け入れるのかもしれない。
それでは航空自衛隊のF-35Bは丸損かと問われますと、基地機能がミサイル攻撃などで喪失した際の補助用には確かに用途があります、イギリス空軍がハリアーを海軍とは別に配備した点と似ているかもしれません。その上で海上自衛隊が必要としているものはこれまでも繰り返した通り、戦闘機ではなく、センサーノード機ですが、機体は同じF-35です。
海上自衛隊が将来的に自前のF-35Bを導入した後にも、その機体が移管という方式を執らない限り、航空自衛隊が局地防空として必要となれば、艦上に展開し海上自衛隊のF-35Bと共に任務に当るとの選択肢も将来生まれる余地があります。フォークランド紛争の空軍ハリアーと同じで、航空自衛隊がF-35Bを導入した場合も丸損とは言い切れないでしょう。
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