■中東情勢,年末年始緊張突沸
在イラク米軍基地攻撃と革命防衛隊指揮官空爆報復に反撃のミサイル攻撃、年末年始は中東情勢が突沸しました。
アラビア海護衛艦派遣。一部には情勢が緊迫している為に中止すべきとの声が、特に旧民主党系野党と共産党等から示されていますが、護衛艦派遣を中止するならば、同時にホルムズ海峡を航行するタンカーに対しても航行中止を呼びかけ、石油供給を一時的に北海原油等に切り替える、これは世界経済に混乱招くが、こうした代案を提唱すべきでしょう。
政府は昨年12月23日、アラビア海へ情報収集に関する護衛艦派遣を閣議決定しました。この護衛艦派遣は、現在実施されているアデン湾での海賊対処任務への護衛艦派遣と共に更に一隻の護衛艦を派遣、昨年発生した日本タンカーのコクカカレイジャス号襲撃を筆頭に相次ぐタンカー襲撃からペルシャ湾やホルムズ海峡での不測事態に備える派遣という。
有志連合。アメリカはイラン核開発を契機とした経済制裁と共に相次ぐイランからの国籍不明武装勢力によるタンカー攻撃に対し、同盟国を中心に有志連合編成を進めており、我が国としては有志連合から距離を置きつつタンカー防護を図る玉虫色の解決策を提示した構図ですが、この点についてイランのロウハニ大統領は首脳会談の場で理解を示しました。
13日間。キューバ危機を思い出す表現ですが、日本の護衛艦派遣が閣議決定されて後、昨年末から本日までの13日間、中東情勢が突沸と云えるほどに緊張し、果たして自衛隊を派遣しても安全なのかという疑義が野党を中心に巻き起こり、他方で緊張が高まれば日本タンカーへの危険が更に高まるとして、自衛隊派遣か、石油供給途絶か、緊張が始りました。
アメリカとイラン、緊張の13日間。始まりは昨年12月27日に発生したイラク北部キルクークのイラク軍施設へのロケット弾攻撃でした。この攻撃によりアメリカ人民間人が死亡し、イラク軍とアメリカ軍兵士に負傷者が出ています。アメリカ軍は12月29日、この一連の攻撃にイラン革命防衛隊が参加しているとして、イラク国内での制圧作戦を行います。
カタイブヒズボラ、革命防衛隊の外郭組織でありイラク国内での武装闘争を行う武装勢力拠点に対し、アメリカ軍は無人攻撃機による攻撃を実施、これによりイラク国内の武装勢力25名が死亡し55名が負傷したといわれますが、この攻撃により武装勢力拠点付近にてイラク潜入中だったイラン革命防衛隊コッズ部隊の司令官スレイマニ少将が死亡しました。
イランでは各国での非合法活動と共に反イランを掲げるイスラム過激派との戦いに成果を上げているソレイマニ少将を支持する声は高く、イスラム最高評議会のハメネイ師は報復を宣言します。イランでは大統領よりも上に位置するイスラム最高評議会の決定により、革命防衛隊は日本時間8日、15発の弾道ミサイルによりイラクの米軍基地を攻撃します。
ミサイル攻撃はアメリカ軍が駐留するイラク西部のアサド空軍基地とイラク北部のアルビル空軍基地に着弾、これによりアメリカはイランに対し攻撃を行った場合にはイラン国内の52施設を攻撃すると牽制していた為、危惧されたのはアラビア海を遊弋する攻撃型原潜等からのトマホーク巡航ミサイルによる攻撃等、紛争激化する事でした。しかし意外にも。
トランプ大統領は日本時間9日に声明を発表し、イランによるミサイル攻撃は米軍兵士に被害が出中た事を強調した上で反撃は行わず、経済制裁強化を発表します。一時緊張したイラク国内でもイスラム指導者サドル師は、危機が去ったとして人民警備隊の警備解除を発表、イラン国内はイスラエル攻撃を求める声もありますが、現時点では安定しています。
北号作戦と南号作戦。護衛艦をタンカー護衛に派遣するか、という議論はどうしても太平洋戦争末期に実施された海上輸送の教訓を思い出してしまいます。北号作戦とはフィリピン失陥後、シンガポールから本州まで、戦艦伊勢と日向の第四航空戦隊と第二水雷戦隊が実施した南方物資強行輸送です。これは奇跡的に成功したのですが、その陰で一つ悲劇が。
南号作戦。これは海軍徴用船を中心にまともな護衛を付けずに実施した特攻輸送であり、参加輸送船の8割が撃沈される事となりました。北号作戦や南方から本土へ戻る戦艦や巡洋艦を、この南号作戦へ参加させたならば、戦艦大和もこの時期に本土へ帰還しており、強力な戦艦群を護衛に充てられれば、もう少し多くの船員が救われたのかもしれません。
太平洋戦争での商船被害への反省が少しでもあるならば、ホルムズ海峡での緊張が破滅的状況となった場合に備え、海上自衛隊の護衛艦へ危険が及ぶ可能性はあったとしても、日本タンカーが航行するならば護衛艦や航空機を派遣してでも安全を確保するか、タンカー航行を禁止し石油供給は断念した上で計画停電を行うか、どちらかを考えねばなりません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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在イラク米軍基地攻撃と革命防衛隊指揮官空爆報復に反撃のミサイル攻撃、年末年始は中東情勢が突沸しました。
アラビア海護衛艦派遣。一部には情勢が緊迫している為に中止すべきとの声が、特に旧民主党系野党と共産党等から示されていますが、護衛艦派遣を中止するならば、同時にホルムズ海峡を航行するタンカーに対しても航行中止を呼びかけ、石油供給を一時的に北海原油等に切り替える、これは世界経済に混乱招くが、こうした代案を提唱すべきでしょう。
政府は昨年12月23日、アラビア海へ情報収集に関する護衛艦派遣を閣議決定しました。この護衛艦派遣は、現在実施されているアデン湾での海賊対処任務への護衛艦派遣と共に更に一隻の護衛艦を派遣、昨年発生した日本タンカーのコクカカレイジャス号襲撃を筆頭に相次ぐタンカー襲撃からペルシャ湾やホルムズ海峡での不測事態に備える派遣という。
有志連合。アメリカはイラン核開発を契機とした経済制裁と共に相次ぐイランからの国籍不明武装勢力によるタンカー攻撃に対し、同盟国を中心に有志連合編成を進めており、我が国としては有志連合から距離を置きつつタンカー防護を図る玉虫色の解決策を提示した構図ですが、この点についてイランのロウハニ大統領は首脳会談の場で理解を示しました。
13日間。キューバ危機を思い出す表現ですが、日本の護衛艦派遣が閣議決定されて後、昨年末から本日までの13日間、中東情勢が突沸と云えるほどに緊張し、果たして自衛隊を派遣しても安全なのかという疑義が野党を中心に巻き起こり、他方で緊張が高まれば日本タンカーへの危険が更に高まるとして、自衛隊派遣か、石油供給途絶か、緊張が始りました。
アメリカとイラン、緊張の13日間。始まりは昨年12月27日に発生したイラク北部キルクークのイラク軍施設へのロケット弾攻撃でした。この攻撃によりアメリカ人民間人が死亡し、イラク軍とアメリカ軍兵士に負傷者が出ています。アメリカ軍は12月29日、この一連の攻撃にイラン革命防衛隊が参加しているとして、イラク国内での制圧作戦を行います。
カタイブヒズボラ、革命防衛隊の外郭組織でありイラク国内での武装闘争を行う武装勢力拠点に対し、アメリカ軍は無人攻撃機による攻撃を実施、これによりイラク国内の武装勢力25名が死亡し55名が負傷したといわれますが、この攻撃により武装勢力拠点付近にてイラク潜入中だったイラン革命防衛隊コッズ部隊の司令官スレイマニ少将が死亡しました。
イランでは各国での非合法活動と共に反イランを掲げるイスラム過激派との戦いに成果を上げているソレイマニ少将を支持する声は高く、イスラム最高評議会のハメネイ師は報復を宣言します。イランでは大統領よりも上に位置するイスラム最高評議会の決定により、革命防衛隊は日本時間8日、15発の弾道ミサイルによりイラクの米軍基地を攻撃します。
ミサイル攻撃はアメリカ軍が駐留するイラク西部のアサド空軍基地とイラク北部のアルビル空軍基地に着弾、これによりアメリカはイランに対し攻撃を行った場合にはイラン国内の52施設を攻撃すると牽制していた為、危惧されたのはアラビア海を遊弋する攻撃型原潜等からのトマホーク巡航ミサイルによる攻撃等、紛争激化する事でした。しかし意外にも。
トランプ大統領は日本時間9日に声明を発表し、イランによるミサイル攻撃は米軍兵士に被害が出中た事を強調した上で反撃は行わず、経済制裁強化を発表します。一時緊張したイラク国内でもイスラム指導者サドル師は、危機が去ったとして人民警備隊の警備解除を発表、イラン国内はイスラエル攻撃を求める声もありますが、現時点では安定しています。
北号作戦と南号作戦。護衛艦をタンカー護衛に派遣するか、という議論はどうしても太平洋戦争末期に実施された海上輸送の教訓を思い出してしまいます。北号作戦とはフィリピン失陥後、シンガポールから本州まで、戦艦伊勢と日向の第四航空戦隊と第二水雷戦隊が実施した南方物資強行輸送です。これは奇跡的に成功したのですが、その陰で一つ悲劇が。
南号作戦。これは海軍徴用船を中心にまともな護衛を付けずに実施した特攻輸送であり、参加輸送船の8割が撃沈される事となりました。北号作戦や南方から本土へ戻る戦艦や巡洋艦を、この南号作戦へ参加させたならば、戦艦大和もこの時期に本土へ帰還しており、強力な戦艦群を護衛に充てられれば、もう少し多くの船員が救われたのかもしれません。
太平洋戦争での商船被害への反省が少しでもあるならば、ホルムズ海峡での緊張が破滅的状況となった場合に備え、海上自衛隊の護衛艦へ危険が及ぶ可能性はあったとしても、日本タンカーが航行するならば護衛艦や航空機を派遣してでも安全を確保するか、タンカー航行を禁止し石油供給は断念した上で計画停電を行うか、どちらかを考えねばなりません。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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