北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

令和二年-新年防衛論集:日本の防衛世界の平和【2】多次元統合防衛力と自衛隊深層統合運用

2020-01-03 20:10:13 | 北大路機関特別企画
■自衛隊,深層部分の統合運用
 多次元統合防衛力を実現するには現在の常識を超えた深層の統合運用となる様に思います。

 V-22可動翼機、陸上自衛隊が新たに配備を開始する新型航空機もヘリコプター搭載護衛艦と統合運用することで、例えばアメリカ海軍が航空母艦への陸上航空基地から航空輸送に用いているC-2輸送機に、自衛隊のC-2ではなくE-2C早期警戒機の輸送機版ですが、その任務と同じ運用が可能です。SH-60Kが護衛艦への物資輸送に当てられている現状です。

 UH-60輸送ヘリコプターが今後は、この装備につきましては機種選定決定後に、海幕長がCH-101のほうが輸送に適していると反論し政治問題化したUH-60でして、実際その通りに思えるのですが不正競争防止法違反という厳しい判断、閑話休題、その任務に当たりますが、V-22の航続距離や輸送能力はUH-60とは当然、比較にならないほどに大きい。

 戦略展開能力、V-22とヘリコプター搭載護衛艦を考えますとその作戦範囲を大幅に、と安易な視点を持ちたくなるところですがKC-130空中給油輸送機とC-2輸送機に上記の同盟国が供しうる飛行場という視点を加えますともう少し広がる。KC-130により空中給油を受けつつ飛行するならばV-22は数千kmの長距離展開が可能です、海外派遣が可能という。

 C-2輸送機により同盟国が提供する飛行場へ物資を集積し、そこにV-22という装備が加わればどうなるでしょうか。護衛艦へ遠路展開したV-22を用いて補給物資、弾薬も含め輸送するという選択肢が生まれるわけですね。V-22,陸上自衛隊は17機という限られた規模ではありますが導入します。取得費用でCH-47の二倍やUH-60の三倍というV-22,高価でした。

 V-22,したがって選択肢としては自衛隊全般の航空機不足、後継なき耐用年数限界に伴う定数割れの現状をみますとV-22を17機取得する予算があるならばUH-60JAを51機追加取得し、一部を後日改修によりヘルファイア運用能力を付与し、30mm機関砲などとともに米軍特殊戦用のMH-60武装型と同様の運用に充てた方が、良い様に考えてもいましたが。

 HH-60であれば航空打撃力の一端を担える為、静かに進むAH-1S対戦車ヘリコプターの全廃への自然減とともに妥当とも考えたのですが、V-22の航続距離とC-2輸送機にKC-130空中給油輸送機、いずも型護衛艦やF-35B戦闘機と包含し総合的に考えた場合、行いうる選択肢は世界規模で増えるのだろう、と。世界規模の任務が増える将来を見越して、です。

 イージスアショア、陸海空自衛隊の統合運用深層化はこの陸上自衛隊が担う全く新しい装備体系により次の一歩を刻むのだろう、と。具体的にはイージスアショアにより航空自衛隊の戦域防空用ペトリオットミサイルは漸く後継装備に巡り会えたという。イージスアショアは陸上配備型イージスシステムであり、ミサイル防衛の専用装備では必ずしも、ない。

 政府はスタンダードSM-3の運用に限定する、としていますが対航空機用のスタンダードSM-6も運用可能です。スタンダードSM-6は低空目標にたいしては270km程度の射程を発揮するとともに高空目標へは450km以遠からの迎撃が可能という。ペトリオットミサイル射程は110km程度であり、現在の地対空ミサイル射程としては決して長くはありません。

 ロシア製S-400グランビル地対空ミサイルの射程が300kmまで延伸する中、1970年代の脅威を念頭に開発され、射程を大きく延伸できないままセンサー部分の改良に重点が置かれた背景から既に射程の面で陳腐化が進んでいます。ペトリオットミサイルの陳腐化は射程だけに留まりません、もう一つ、垂直発射方式を採用していないという問題があります。

 垂直発射方式ではない、故に全周警戒や射撃範囲に限界があるために現在急激に脅威度が顕在化している長距離巡航ミサイルや無人機技術を応用した自爆無人機による長距離攻撃、特に迂回経路から接近する脅威へは対応能力の限界が指摘されています。イージスアショアの利点は前述の二つの重要な点があります。それは既存のイージス艦とF-35というもの。

 イージスアショアについては懐疑的でした、導入検討開始当時にはスタンダードSM-3のみがミサイル防衛の手段であり、これは中間迎撃用、即ちミサイルが放物線を描く宇宙空間で迎撃する装備であり、落下直前まで迎撃を継続する終末迎撃能力がありませんでした。更にイージスアショアは固定装備であり、21世紀に固定要塞方式は時代錯誤に思えました。

 SPY-6レーダーを大型機動車両に搭載し陸上移動式とするならばともかく、と思ったものです。イージスアショアは依然として固定式ではありますか、しかし中間段階の迎撃能力というものからは脱却しています。SM-3については併せて対航空機用のスタンダードSM-6がその改良型から終末迎撃能力を付与されることとなった為に自己完結しました。

 スタンダードSM-6による州亶段階防空、考えればイージス艦は近年の新たな脅威、対艦弾道弾から航空母艦などを防衛する必要はあり、アメリカ海軍は終末迎撃能力構築を必要としていた。この結果イージスアショアそのものがSM-3の迎撃圏外を飛翔するロフテッド軌道による攻撃からは終末迎撃能力の付与により少なくとも自衛できる事とは、なりました。

 海上自衛隊のイージスシステムと共通の装備である点、そしてF-35戦闘機とイージスシステムとの連接性が挙げられまして、特に地形障害の向こうから接近する脅威、低高度目標の接近をF-35、そして将来的には固定レーダーサイトとのデータリンクによりレーダーサイト自身をイージスアショアの補完的な索敵装置と用いる事も可能となるかもしれません。

 イージスシステムの連接性は更に、日本近海のイージス艦を補完する能力とも重なります。ペトリオットの後継装備となりうる、併せて航空自衛隊高射隊の任務すべてを陸上自衛隊に移管、いや元々ペトリオット部隊の前身であるナイキ部隊は元来陸上自衛隊所属ではありましたので回帰というべきでしょうか、陸上自衛隊へと一本化が可能となるのですね。

 航空自衛隊の人員不足は常に指摘されているところではありますが、航空自衛隊の高射隊を陸上自衛隊のイージスアショアにより代替できるならば、無論その為には南九州か南西諸島北部、京都府日本海側から北陸地方北部にかけての地域等二カ所から三カ所の配備により、北日本と九州沖縄、首都圏及び京阪神地区の防空を実現させる必要性が生じますが。

 03式中距離地対空誘導弾などは、イージスアショアの弱点を補完する位置づけに、これはイージスアショアが固定式防空システムであるが故の飽和攻撃や近距離からの小型無人機による自爆攻撃などにたいし、イージス艦こんごう型と僚艦防空能力を有する護衛艦あきづき型の援護に近い、こうした運用は必要となりますが、幸い日本には国産技術がある。

 03式近距離地対空誘導弾後継装備を海上自衛隊の発展型シースパロー短距離艦対空ミサイル、射程が50kmあり短距離の定義が難しく成りつつありますが、こちらの将来における後継装備と一本化できるならば、それは日本版AMRAAMやASRAAMに近い概念として、弾薬体系を一本化し、備蓄や整備等の兵站面での重厚な防衛力を実現できるでしょう。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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