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阪神大震災二十五年:鎮魂の1.17,四半世紀経た今日に回顧する“あの震災”と将来の防災

2020-01-14 20:20:48 | 防災・災害派遣
■二十五年目の阪神大震災
 二十五年と云いますと長いようで短く、大事を成し遂げるには短すぎしかしながらと教訓を継承するには長すぎる、そんな印象を覚えるところです。

 阪神大震災から今週で25年目となりました。平成時代の幕開けとともに数千名の犠牲者が生じた巨大災害は1950年代の悪夢である、耐震構造と地震予知や防災行政の数多施策が造営した安全神話、これが都市直下型地震にたいして想定以上の脆弱性を突きつけた巨大地震の被害でした。死者6434名、政令指定都市が震度七の激震に襲われた初の事例です。

 兵庫県南部地震、1995年1月17日の0546時、淡路島付近を震源としたマグニチュード7.3の地震が発生、震源の深さは16kmと浅く、震源から少し隔てた大阪市や姫路市の被害はそれほどではありませんでしたが、活断層のほぼ真上の神戸市と西宮市、宝塚市と淡路島のほぼ全域は震度七の突き上げるような、叩き崩し、突き刺すような激震に圧されます。

 摩耶水害を念頭に豪雨対策として重厚な瓦屋根を重視していた住宅が、特に平屋や二階建住宅に最悪の振動周期で神戸の住宅街を襲い、未明の地震は特に就寝中の市民に厳しい結果を突きつけ、直後に神戸市東灘区を中心に大火災を誘発、そして阪神高速道路や山陽新幹線高架、阪神電鉄はじめ主要私鉄の本来地震に強いとされた施設をも倒壊させました。

 野島断層、淡路島北部から神戸市に延びる活断層、実のところ巨大地震への対策はそれほど後手とはいえない我が国、神戸は過去に明治以降巨大地震がないということで対策が手薄とも後に指摘されていましたが、耐震基準の厳格な適用と近代的な消防設備は、今風に言えば想定外、市民を守りきるほどに高度な対策を実現できていなかった事が露呈します。

 自衛隊災害派遣要請の遅れ、当時の井戸知事(※202001151205訂正-正:貝原)が知事公舎から送迎車を延々と待ち続け、当時の村山総理が首相公邸にてテレビを視聴するに留めており、自衛隊災害派遣は指揮官判断で行える近傍災害派遣にとどまり、主力の投入まで超法規的措置を執らなかった事で当時の中部方面総監が批判されています。しかし超法規的措置は法治国家には理想的なのか。

 超法規的措置、実のところ東日本大震災では統合任務部隊設置命令を待たずして隣接方面隊支援などを開始しましたが、全て緊急時に超法規的措置を公使できるならば危機管理法制さえ不要であるものの、それは法治国家として妥当なのか、という素朴な疑問が生じます。一方これは同時に阪神大震災ではもう一つの分析視野、安全神話があったのだ、とも。

 安全神話とは災害への想像力といえましょうか、大規模な自衛隊災害派遣を必要とする災害ではない、そんな巨大災害が神戸で起こるわけがない、という認識とともに、防災当事者が視野狭窄、目の届く範囲の被害が全てである、という認識を各所で共有していたことが、結果的に甚大な被害を防ぐためのいくつかの基点を逃す事となったのかもしれません。

 東日本大震災、阪神大震災、伊勢湾台風、戦後の巨大災害を回顧しますとこの三つの災害が特に印象深いのですが、ここから導き出せる、導き出すべき教訓は数えることができないほどに多いのですが、二十五年目の本年、改めて考えたいのは同じ災害というものが来るという事はない、災害個々に個性というか傾向があり“災害には相がある”ということ。

 巨大災害には“相”というものがある、前回の巨大災害を念頭に整備された防災基準や防災計画は、次の災害には役に立たない可能性がある、ということなのかもしれません。実際、阪神大震災を念頭に厳格化された耐震基準の遵守は東日本大震災には別の脅威の前に脆弱でした、震度七に耐えた建物もあの震災の災厄、津波には耐えられなかった為です。

 関東大震災、耐震基準の多くは関東大震災規模の地震が再来した場合でも全壊はしても倒壊を回避し人命を守る、という基準がある。しかし、関東大震災は相模トラフの海溝型地震であり、同じ関東を襲った安政江戸地震の直下型地震と比較しても、被災地域が重なる以外は揺れの周期が根本から異なります、阪神大震災はいうなれば安政江戸地震型でした。

 地震予知。実は東日本大震災までは予知の精度を上げる予知が認識されていました、関東大震災を契機に海溝型地震で活断層が陸上まで延びている東海地震のみに対しては体積歪計や深深度井戸精密地震計測装置により前駆現象を把握できるのではないか、という関東大震災を受けての1940年代からの東海地震予知の試みがあったためで、誤解を生みました。

 東海地震、地震が予知しうる、と誤読させていたのかもしれません。実際、東海地震は駿河トラフが沼津や伊豆半島に延びているために駿河トラフの前駆現象が予見しうるだけであり、同じ駿河トラフを震源とする東南海地震は予知不可能であるとともに、東南海地震の震源が東海地震を誘発させる場合には、東海地震の前駆現象は無い可能性も指摘される。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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