北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

阪神大震災二十五年:鎮魂の1.17,巨大災害“想定外被害”への万全対策を如何に築くか

2020-01-16 20:03:19 | 防災・災害派遣
■巨大災害には"相"がある
 明日の未明に神戸は阪神大震災二十五年目の鎮魂の日を迎えます。しかし祈るだけの鎮魂とともに次の災害への備えを万全とする鎮魂の在り方も必要だとかんがえるのです。

 二十五年目の震災、阪神大震災から学ぶべき教訓は、阪神大震災の再来を警戒して次の阪神大震災、野島断層が同じ規模の揺れを引き起こした場合でも一軒の倒壊家屋も出さない準備を兵庫県が実現したとして、”相”の異なる南海地震などの災害には無力である可能性がある、という事なのかもしれません。南海地震が想定最大規模で起こった場合は、と。

 南海地震は南海トラフが周期的に引き起こす巨大地震で、地球物理の原則に従い動き続ける大陸プレートが歪みを蓄積し発生します、この揺れの周期は直下型地震と異なり中層と高層建築物に影響を及ぼす、2011年東日本大震災において痛感した長周期振動が被害を引き起こすとともに、神戸だけを想定しても南海地震が誘発する津波は確実に懸念されます。

 由良水道から南海地震の津波は大阪湾に侵入し、第二室戸台風規模の高潮を想定した大阪湾の防潮設備を越える懸念があります。また揺れに対しても確実な安全性へは安全係数を再検証する必要がある。明石気象観測所、実のところ兵庫県南部地震の揺れの計測は多くの測地施設により計測されていますが、明石測地施設、これをもとに補正したものです。

 神戸市内の激震には計測数値を補正した数値が公式の計測値となっており、実のところ阪神大震災を想定した耐震構造は必ずしも万全とはいえない、という。摩耶水害を想定した重厚な屋根構造が、阪神大震災の直下型地震には重心の住宅への影響が、という実状、実際に災害の相が相互悪影響を及ぼす一例ともいえるのですが、耐震構造にも不安は残る。

 阪神大震災に耐える耐震性、例えば耐震補強に安易に住宅外部に鉄骨を這わせる補強方式は数値上強度を高めることはあっても振動幅の相によっては逆に鉄骨の固定部が住宅を圧潰させる懸念もあり、対策の難しさを示しているのかもしれません。地震対策、それでは阪神大震災を念頭とした対策は無意味であるかと問われれば、これは次元が異なります。

 直下型地震の対策は、以上の通り、海溝型地震に対処できるものではない事は事実ですが、直下型地震が再来しないわけではありません。直下型地震対策も海溝型地震対策も津波対策も巨大台風対策も豪雨深層崩壊対策も必要だ、という事です。カルデラ噴火、例えば災害には”相”があるという懸念は同時に全く異なる角度からの災害も懸念しなければない。

 カルデラ噴火を例に挙げれば、例えば四国沿岸の原発が九州の阿蘇カルデラに対し破局噴火による全包囲火砕流が発生した場合に脆弱性がある、として九州沿岸住民から訴訟もありました。この点は災害全般を再認識すべき事例ともいえる。阿蘇カルデラ噴火、この懸念が前駆現象として認識された場合には、九州のほぼ全域と本州や四国の一部が危険です。

 阿蘇カルデラ噴火、鹿児島県南部と長崎県離島を除く九州全域の警戒区域指定と全住民一時退避、1200万名規模か、こうした施策も検討する必要さえ、出てくるようになり得ます。しかし、これも現実的に何処まで可能なのでしょうか、ここが視野狭窄です。要するに阪神大震災だけに視野狭窄となることは逆に次の災害へ脆弱性を高めてしまう、ということ。

 危機管理、阪神大震災を追悼しつつ過去の南海地震や摩耶水害に第二室戸台風の犠牲者を追悼する、西日本豪雨災害も含めて広い視野をもつということは、逆にあらゆる被害に手持ちの防災資材で対応する、危機管理の意識、というもの、この養成と共有こそが必要なのかもしれません。想定外災害は起き得る、逆に想定外を無くす事は可能なのでしょうか。

 想定外を完全に払しょくしようとするならば、中二病的な危機管理が必要となる。しかし、平時の手続きを考えるならば、巨大地震は直下型と海溝型、津波にカルデラ噴火と豪雨に暴風まで備える羽目となり、日本に暮らすことは出来なくなってしまいます。そしてすべての災害に対応する、要塞のような城郭都市に暮らすことは、息苦しい事となりましょう。

 要塞都市のような万全の災害対策、息苦しいという観念的な発想を示しましたが、同時に経済発展をも阻害するのではないでしょうか。核攻撃。実のところ危機管理の意識というもの、特に想定外の事態に対しても手持ちの資材と人員を有効活用し、対処できる能力を資材ではなく資質として養成するならば想定そのものが成り立たない事態へ対応出来ます。

 阪神大震災への鎮魂は、併せて東日本大震災はじめ多くの災害への鎮魂とともに、想定外はありうる、万全の対策はない、という原点こそ、共有すべきなのかもしれません。ただ、これは組織の垣根や平時の法秩序との関係もあり、一概に考えられる以上に困難さが伴います。その認識と想定外の非常事態はある、こうした認識が防災には必要なのでしょうね。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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