■乗員2名無事祈り航空救難続く
航空機事故の話題というものは避けたいものですが定期的に発生してしまうのも否めないところ、乗員の無事を祈り続けるほかありません。
1月31日1730時頃、石川県の航空自衛隊小松基地を離陸したF-15DJ戦闘機一機が離陸直後、レーダーから機影が消え、墜落したものとして航空救難が発動しました。レーダーから機影が消えたのは基地から西北西に約5kmの日本海上です。海上保安庁によれば加賀市橋立漁港近くの目撃情報として海上に赤色の光が見えたと通報が在ったとのことでした。
墜落したのは小松基地に司令部を置く飛行教導群の機体で、飛行教導群司令が搭乗していたとのこと。救難信号や緊急事態の宣言は無く、F-15戦闘機は最初の機体が納入されたのは1981年、老朽化による空中分解の懸念もあります。防衛省では航空救難を実施すると共に、舞鶴基地や大湊基地からは海上自衛隊護衛艦が捜索、海上保安庁も多数出動している。
飛行教導群は、航空自衛隊戦闘機部隊への巡回指導を行う“アグレッサー部隊”であり、訓練においては敵機役を担う為、最高度の操縦技術を持つ要員を集めて編成され、飛行時間も充実した訓練環境があり、宮崎県の新田原基地から小松基地へ移転している部隊です。搭乗していた二人はまだ発見されていませんが、機体の一部が発見、捜索は継続中です。
しかし、戦闘機の格闘戦というものは時代錯誤なのではないかという、一部自称“識者”を含めて指摘があるようです。飛行教導群は全国の戦闘機部隊へ厳しい訓練を行い練度を高める部隊であるのですが、その分激しい機動は地上では中々経験しないような強烈なG、重力負荷も加わります、そして水平飛行よりは機動飛行がリスクがある為というのですが。
戦闘機の格闘戦、一見時代錯誤のように見えるかもしれません、実際、ステルス機の時代では先制攻撃が原則であり、相手の視界に入る前に中射程空対空ミサイルを100kmの距離から発射、ここから航空戦が開始されます。短距離空対空ミサイルの射程も50kmとなる現代、原始的な相手の戦闘機を機動性で圧倒し後ろを取る、その意味はあるのでしょうか。
格闘戦と云うものは相手の真後ろを取る空中の動作が、猛犬同士の喧嘩を思わせる激しい機動からドッグファイトと呼ばれます。真後ろを取れば機銃で撃墜でき、また空対空ミサイルが開発された初期の時代にはエンジンから排出する赤外線を追尾するミサイルは真後ろしか照準できない時代がありましたが、1980年代からは全方向で照準できる時代となる。
ドックファイト。現代の航空戦では確かに機関砲の射程まで後ろを取る機動は最後の手段といえるのかもしれません、しかし、それでは平時はどうか、対領空侵犯措置任務において、いきなり100km先から空対空ミサイルを発射することで平和は守られるのでしょうか、逆です、平時に先制攻撃を加えることは出来ません、それを行えば開戦となるのですから。
飛行教導群の格闘戦の任務は、平時において対領空侵犯措置任務を実施し、領空接近をやめるように無線警告を行った場合に相手が挑発行動、戦闘に直結する機動により威嚇を掛けてきた際、追い払われるように逃げ回る状況と、挑発行動に対し毅然と回避から建て直し挑発行動を行えないよう後ろを取るのとでは、対領空侵犯措置任務ではどちらが妥当か。
平時。日本は専守防衛であるからこそ、挑発行為を受けないように長距離から先制攻撃を加える方式は採れませんし、なにより平時であるからこそ、相手が緊張をあおる行為を採ったとしても毅然として対応する必要があります、先制攻撃を遠距離から行うよりも、警告を無視して挑発行為に出た場合に、攻撃せず退散させるには格闘戦技術が求められます。
しかし、事故を受け基地の地元、小松市の宮橋市長は2月1日、事故原因が究明されるまでF-15戦闘機飛行訓練見合わせを基地の石引司令へ電話で要請しました。訓練見合わせと、緊急発進はそのまま、基地の街の危機管理と云えます。同様の要請を1日午後、石川県の谷本知事も申し入れしています。岸防衛大臣は訓練は維持しつつ点検強化を命じました。
石川県の憂慮、防衛に対して何事かと一部の方は思われるかもしれませんが、石川は相応の歴史があります、石川県は1969年2月8日、県都金沢市のF-104戦闘機が墜落し民家を破壊、市民4名が死亡する痛ましい事故が過去に在ったのですね。事故現場は金沢城や兼六園から2kmほど、事故の原因はF-104が落雷により操縦不能となったのが原因という。
F-15,前述しましたが空中分解の可能性があります、そしてF-15は古いのですが、近代化改修により更に長期間運用するという。防衛予算の課題が大きいのですが、例えばF-15EXのライセンス生産を行い、現在開発計画が立ちあがりつつあるF-2後継機国産計画を若干遅らせ、古い機体に無理をさせ過ぎないような施策も必要ではないかと、考えるのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
航空機事故の話題というものは避けたいものですが定期的に発生してしまうのも否めないところ、乗員の無事を祈り続けるほかありません。
1月31日1730時頃、石川県の航空自衛隊小松基地を離陸したF-15DJ戦闘機一機が離陸直後、レーダーから機影が消え、墜落したものとして航空救難が発動しました。レーダーから機影が消えたのは基地から西北西に約5kmの日本海上です。海上保安庁によれば加賀市橋立漁港近くの目撃情報として海上に赤色の光が見えたと通報が在ったとのことでした。
墜落したのは小松基地に司令部を置く飛行教導群の機体で、飛行教導群司令が搭乗していたとのこと。救難信号や緊急事態の宣言は無く、F-15戦闘機は最初の機体が納入されたのは1981年、老朽化による空中分解の懸念もあります。防衛省では航空救難を実施すると共に、舞鶴基地や大湊基地からは海上自衛隊護衛艦が捜索、海上保安庁も多数出動している。
飛行教導群は、航空自衛隊戦闘機部隊への巡回指導を行う“アグレッサー部隊”であり、訓練においては敵機役を担う為、最高度の操縦技術を持つ要員を集めて編成され、飛行時間も充実した訓練環境があり、宮崎県の新田原基地から小松基地へ移転している部隊です。搭乗していた二人はまだ発見されていませんが、機体の一部が発見、捜索は継続中です。
しかし、戦闘機の格闘戦というものは時代錯誤なのではないかという、一部自称“識者”を含めて指摘があるようです。飛行教導群は全国の戦闘機部隊へ厳しい訓練を行い練度を高める部隊であるのですが、その分激しい機動は地上では中々経験しないような強烈なG、重力負荷も加わります、そして水平飛行よりは機動飛行がリスクがある為というのですが。
戦闘機の格闘戦、一見時代錯誤のように見えるかもしれません、実際、ステルス機の時代では先制攻撃が原則であり、相手の視界に入る前に中射程空対空ミサイルを100kmの距離から発射、ここから航空戦が開始されます。短距離空対空ミサイルの射程も50kmとなる現代、原始的な相手の戦闘機を機動性で圧倒し後ろを取る、その意味はあるのでしょうか。
格闘戦と云うものは相手の真後ろを取る空中の動作が、猛犬同士の喧嘩を思わせる激しい機動からドッグファイトと呼ばれます。真後ろを取れば機銃で撃墜でき、また空対空ミサイルが開発された初期の時代にはエンジンから排出する赤外線を追尾するミサイルは真後ろしか照準できない時代がありましたが、1980年代からは全方向で照準できる時代となる。
ドックファイト。現代の航空戦では確かに機関砲の射程まで後ろを取る機動は最後の手段といえるのかもしれません、しかし、それでは平時はどうか、対領空侵犯措置任務において、いきなり100km先から空対空ミサイルを発射することで平和は守られるのでしょうか、逆です、平時に先制攻撃を加えることは出来ません、それを行えば開戦となるのですから。
飛行教導群の格闘戦の任務は、平時において対領空侵犯措置任務を実施し、領空接近をやめるように無線警告を行った場合に相手が挑発行動、戦闘に直結する機動により威嚇を掛けてきた際、追い払われるように逃げ回る状況と、挑発行動に対し毅然と回避から建て直し挑発行動を行えないよう後ろを取るのとでは、対領空侵犯措置任務ではどちらが妥当か。
平時。日本は専守防衛であるからこそ、挑発行為を受けないように長距離から先制攻撃を加える方式は採れませんし、なにより平時であるからこそ、相手が緊張をあおる行為を採ったとしても毅然として対応する必要があります、先制攻撃を遠距離から行うよりも、警告を無視して挑発行為に出た場合に、攻撃せず退散させるには格闘戦技術が求められます。
しかし、事故を受け基地の地元、小松市の宮橋市長は2月1日、事故原因が究明されるまでF-15戦闘機飛行訓練見合わせを基地の石引司令へ電話で要請しました。訓練見合わせと、緊急発進はそのまま、基地の街の危機管理と云えます。同様の要請を1日午後、石川県の谷本知事も申し入れしています。岸防衛大臣は訓練は維持しつつ点検強化を命じました。
石川県の憂慮、防衛に対して何事かと一部の方は思われるかもしれませんが、石川は相応の歴史があります、石川県は1969年2月8日、県都金沢市のF-104戦闘機が墜落し民家を破壊、市民4名が死亡する痛ましい事故が過去に在ったのですね。事故現場は金沢城や兼六園から2kmほど、事故の原因はF-104が落雷により操縦不能となったのが原因という。
F-15,前述しましたが空中分解の可能性があります、そしてF-15は古いのですが、近代化改修により更に長期間運用するという。防衛予算の課題が大きいのですが、例えばF-15EXのライセンス生産を行い、現在開発計画が立ちあがりつつあるF-2後継機国産計画を若干遅らせ、古い機体に無理をさせ過ぎないような施策も必要ではないかと、考えるのです。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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