北大路機関

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【日曜特集】第7師団創設56周年記念行事(02)第7師団長は磯部晃一陸将時代(2011-10-09)

2022-02-06 20:11:54 | 陸上自衛隊 駐屯地祭
■東日本大震災から七カ月後
 この師団祭は東日本大震災から七カ月後というまだ記憶は鮮明と云う段階の前の挙行となっています。

 第7師団長は2011年行事の際、磯部晃一陸将の時代です。陸上自衛隊航空科幹部として、速度戦の重要性を体感している指揮官の一人ともいえるのですが、1991年湾岸戦争当時に外務省北米局米局安全保障課出向、米国海兵隊指揮幕僚大学で軍事学修士とアメリカ通で。

 米国国防大学で国家資源戦略修士も修得している指揮官です。磯部晃一陸将は昨年から月刊軍事研究巻頭の論説を執筆されていますので、防衛分野に関心のある方には毎月読まれていることでしょう。そして磯部晃一陸将は東日本大震災の際には統幕防衛計画部長を。

 統幕防衛計画部長として、当時東日本大震災における極めて喫緊の課題、福島第一原発事故に対し、日米統合運用の調整に当られていまして、アメリカ通といいますか、米国海兵隊指揮幕僚大学と米国国防大学での議論や指揮系統の経験は大きく活かされた事でしょう。

 第37代東部方面総監、第7師団長を経て東部方面総監にも任じられていまして、この第7師団祭は例年5月の挙行が2011年は東日本大震災により半年近く延期となっていましたが、言い換えればこの半年前、自衛隊は東日本大震災という実戦を、経験していたのですね。

 しかし、2011年の行事、2022年から見返しますと、戦車のアンテナが細く要するにデータリンク対応の広帯域無線機コータムは入る前ですし、拳銃ホルスターもレッグホルスターではなく革製のまま、制服も当然旧型で新型開発前、偵察隊には74式戦車も残っている。

 90式戦車にはもう一歩近代化の必要を感じまして、開発当時から戦車砲弾も相応に進化していますので、第三世代戦車の後期に開発された戦車とはいえ、正面装甲を強化しなければ今日的には貫徹される可能性を認識すべきですし、他にも装甲車に課題は残っています。

 73式装甲車は、アルミ合金製ながら今も車体部分に影響なく活用できているのは当時のアルミ合金精錬技術の高さを示すものですが、89式装甲戦闘車の生産終了から2011年当時で間もなく10年という状況、それから11年経る今日でも後継車配備は開始されていない。

 戦車、結局のところ現代においての陸上火力の根幹を構成する部隊で、またもっとも頑丈で且つ打撃力を持つ自己完結型装備です。戦車部隊の時代は終わった、と揶揄される紛争が起こるたび詳細を検討しますと事実は逆で戦車の時代なのだ、と痛感するものも多い。

 アメリカ第3機械化歩兵師団がほぼ一個師団で一国を破砕した2003年のイラク戦争などを提示するまでもなく、たとえば2011年から続くシリア内戦では戦車の損害が目立つように奉じられていまして実際シリア軍の戦車部隊被害は大きなものですが現実は真逆でした。

 2011年から続くシリア内戦でシリア軍が崩壊しないのは戦車を中心に戦闘を展開しており戦車はT-72戦車を修理し運用しているのですが、1991年湾岸戦争の頃よりも防火対策が強化されたT-72戦車は撃破されても乗員が脱出するまで時間を稼ぐだけの防御力がある。

 2020年にアゼルバイジャンがアルメニアに侵攻しトルコ製無人機とイスラエル製徘徊式弾薬が威力を発揮したナゴルノカラバフ紛争においても、こうした無人装備を多用したアゼルバイジャン軍が主力としていたのは戦車部隊であり、攻撃前進への中枢を担っています。

 戦車の時代は終わった、という主張は、しかし戦車の時代を終わらせたと指摘された側がそもそも戦車の時代を進めていた、そんな実例もありました。戦車部隊、それは万能ではあるが完全ではなく能力を常に強化する努力が必要という単純な事実なのかもしれません。

 当たり前ですが、戦車が強力であっても胡座をかいてそのまま能力強化を怠れば、1970年代の視点では簡単に対戦車ミサイルの餌食に、1990年代の視点では簡単に戦闘ヘリコプターの餌食に、そして2010年代の視点では簡単に徘徊式弾薬の餌食にされるわけですが。

 対戦車ミサイルも戦闘ヘリコプターも徘徊式弾薬も脅威ではある、が、この部分を裏返せば、対策を十分に採るならば戦車部隊はまさに無敵とはいかないまでも陸上戦力の中では圧倒的な優位を誇るものといえます。乗員3名で運用できる装備としてはまさに最強です。

 対策こそが肝要、対戦車ミサイルの脅威へは随伴歩兵の能力強化により対処できましたし、戦闘ヘリコプターについては防空火力の発達からもはやその時代は終わったと、少し前まで戦車の時代が終わったと主張していた方々が騒ぐ様な構図が醸成されているようでして。

 戦闘ヘリコプターについては近年はAH-64Eアパッチガーディアンから射程が格段に大きなスパイクNLOSミサイルの運用試験がアメリカではじまりまして、2021年3月の試験では射程32kmを達成しました。スパイクミサイル、進化するイスラエル製のミサイルです。

 AH-64Eアパッチガーディアン、匍匐飛行しつつ低空から32km先までミサイルを投射し命中させる、こうしたものですので地対空ミサイルの圏外から、なにしろヘリコプターは錯綜地形ならば森林の樹木高よりも下に降りる裏技がある、こうすれば発見されません。

 有利な状況から射撃する運用ですので戦闘ヘリコプターはその脆弱性を搭載するミサイルの射程の延伸により対応している構図という、一方で戦車の方はイスラエルのトロフィーやドイツのストライクシールドのような、アクティヴディフェンスという新装備が誕生へ。

 アクティヴ防御システム、これは新しい概念、対戦車ミサイルを装甲で受け止めて耐える方式から対戦車ミサイルを迎撃して撃墜する運用に転換しつつあって、また最先端技術がわずかな旧式装備を破砕する構図へ展開を、発達を続けている構図がここにもあるかたち。

 トロフィーにしてもストライクシールドにしても発展余地はあります、現時点では一定以上の角度のトップアタック式の対戦車ミサイルを迎撃する方法はありません、もっとも浅い角度で戦車上面を攻撃するミサイルは撃墜できるという、迎撃の大きさにも限度はある。

 将来を考えますと、戦車はそもそも火器管制装置の性能が高い水準で設計されていますので、例えば脅威である徘徊式弾薬に対してもアクティヴ防御システムで迎撃できるようにはなるでしょうし、RWS遠隔操作式銃搭の機関銃がその役割を担うかもしれない。

 アクティヴ防御システムについては我が国でも防衛装備庁が開発を進めています。もっとも、日本では74式戦車が現役で残っていまして、有事の際に人命を守る為にも、喩え戦車定数よりも多くとも90式戦車や10式戦車を量産し、事後輸出なり削減すれば良いと思う。

 戦車部隊、そしてこうした部隊を運用するノウハウや戦術と戦略体系まで至る、戦車そのものよりも戦車を運用する事で得られるノウハウと教育された高度な人員も日本の防衛にはかけがえのない資産ですので、活用する道を模索せねば、税金の無駄遣いと考えます。

 戦車というものは、近年、市街地戦闘においても歩兵との連携とともに必須の装備であり、対戦車火器により撃破される事は事実ですが、撃破されても全損に至るのは稀で数十時間で修理完了し乗員が無事という事例も多く、その意義は世界規模でも見直されています。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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小松基地F-15DJ墜落事故,航空救難と同型機全国訓練停止-機体一部20km先の白山市に漂着

2022-02-06 18:29:12 | 防衛・安全保障
■日本海は豪雪の大荒れ
 日本海は豪雪の大荒れという気象情報に接しますと中々心苦しいものがあります。

 航空自衛隊小松基地を離陸し、その直後に墜落したF-15DJ戦闘機は基地から5kmという近距離で墜落したにもかかわらず、まだ乗員2名の発見には至っていません。AIS船舶位置情報によれば、海底捜索が可能である潜水艦救難艦ちはや航行経路が櫛を引くように綿密に捜索している様子が確認できますが、こうした捜索にもかかわらず発見に至らない。

 先ず、北大路機関記事の訂正から。岸田防衛大臣は2月4日の閣議後の記者会見において小松基地を離陸後日本海上に墜落したF-15DJ戦闘機について、自衛隊が保有する同型機については訓練飛行は停止していると発表しました。尚訓練飛行は停止しているが任務飛行は実施しているとのこと。2月3日付の北大路機関記事では訓練飛行は継続と記載しました。

 確認不足により飛行訓練が維持しているとの誤報を流してしまい、関係各位にお詫び申し上げます。岸田防衛大臣は2月4日のBSフジ“BSフジLIVEプライムニュース”に出演し、事故原因が判明するまではF-15DJ戦闘機の飛行訓練を当面中止するとしています。一方、任務飛行は継続する為、対領空侵犯措置任務に空白が生じる事は無いとしています。

 飛行訓練の中止と任務飛行の継続、実は過去、F-2戦闘機の墜落事故とF-15戦闘機の不具合が重なった事がありまして、原因究明まで、F-2とF-15が同時に飛行停止となる非常事態が在りました。その頃はF-35戦闘機がまだ導入前でしたが今は無きF-4EJ改戦闘機が現役であった為、急遽F-4EJ改戦闘機が日本全土の防空を担う、という事になりましたが。

 F-4EJ改戦闘機が那覇基地と新田原基地にしか配備されていない、F-15とF-2同時飛行停止の際は首都防空ががら空きとなる緊急事態となり、急遽那覇基地からF-4EJ改戦闘機6機が臨時に百里基地へ派遣され、対領空侵犯措置任務を担うという大騒ぎとなっています。今回は任務飛行は継続といいますので回避されていますが、複数機種装備の重要性を示す。

 事故当日の小松基地は若干雪が舞う気象となっていますが、基本的にF-15戦闘機はアメリカ空軍がアイスランドやアラスカなど北極圏近くでも運用しており、着氷に弱い機種ではありません、またより厳しい条件でも北海道の千歳基地では運用されていますので、悪天候が原因ということは考えにくいでしょう、即ち先ずは事故機と乗員の発見が第一です。

 事故原因、緊急事態発生の宣言も無く、ベイルアウト脱出も無い、薄暮でしたので曇天も相まって空間失調の可能性も皆無ではないのですが離陸直後に空間失調というものは難が得にくく、管制塔から火を噴く様子が見えたという報道等も、通常の事故ではなかなか無く、憶測では空中分解というものを危惧するのですが、その為には機体の回収が必要だ。

 白山市海岸線にF-15戦闘機の部品と思われるものが漂着した、これは2月2日に地元の石川テレビが報道したもので、機体の一部とみられるものが漂着しているとの通報に航空自衛隊が現場へ出動しています、石川テレビの報道では部品の様子が写されており、トラ柄の機体が映されていました、飛行教導群の機体は特徴的なアグレッサー塗装を施している。

 白山市は墜落現場から20km先だ。墜落機のトラ柄、これは最近発表された新塗装、その特徴的な様子と機体に記されている文字などが確認できます。発見者の方の証言も石川テレビは報じており、沿岸部のテトラポットから15mほど離れた場所に浮いているのを波が引いた瞬間に発見、機体の一部よりも乗員が見つかってほしいとの声を報道していました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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