■横浜市街とイージス艦
横浜の情景、日曜特集は他の記事に関連する写真のアーカイブを作成する意味も含めていますので中々前に進まない。
2012年の観艦式写真を2023年に見返しますと、やはり防衛力整備の方向性と伝統的な自衛隊の装備体系の転換が、此処まで変わるのか、2003年の北大路機関創設当時と2012年の自衛隊観艦式の頃の自衛隊を比較した場合以上に転換の度合いの大きさに驚かされる。
3.11東日本大震災の影響もあるのでしょうが、ミサイル防衛の重視による自衛隊の従来装備体系の瓦解、防衛崩壊という他ない程の防衛力の空洞化と、これを補うための反撃能力整備というもの、この二点というものが、自衛隊の方向性の転換の大きな変容とおもう。
東日本大震災に伴う原発停止、考えるとこの当たりの拙速でポピュリズム的な対応が、それまでモノヅクリタイコクと称され製造業を基幹産業としていた日本の競争力を劇的に鈍化させ、しかも製造業以外分野での競争力の薄さ、規範形成能力が国力を削いでしまった。
怒号を議論と勘違いする層、結果的にポピュリズムを形成してしまい、原則論同士の、いわば成り立たない価値観の衝突を公的な議論において塗布することで、政治を劣化させるとともに、政治参加の時間を、経済活動と両立する難しさが削いでいる現状もありますが。
反原発に全てを押し付ける訳ではありませんが、併せて日本が権威主義国家ではなく民主主義国家であり、一旦方向性が示された方式を切り替える事の政治的な難しさが、製造業に必要な電力を削ぎ、その利益で創生されるべき次世代産業への転換の道も閉ざしている。
電力の話は競争力の話に終始するのですが、しかし波及効果として日本のポテンシャルそのものの変容というものが、結果的に安全保障情勢にも影響を及ぼしているのではないか。具体的には元々低い規範形成能力と、これを補完した経済力の両輪関係が喪失した、と。
軍拡には反対、という主張はあるのですが、結果的に均衡が崩れてしまったというのは上記の通り、そして均衡が崩れている状況での防衛力再編を行う必要があったのですが、破綻点を迎えるまでは、現状で何とかなっている、と反論されますと覆す論理はむずかしい。
2012年と2022年、この特集を始めましたのが2022年、比較しますと、戦車も火砲も激減し、ロケット発射機に対戦車ヘリコプターも全廃に向け推移している。何処かで覆さないと、抑止力が破綻し、朝鮮戦争やウクライナ戦争のような状況になってからでは、おそい。
安全保障関連三文書、2022年の防衛力再編と共に防衛装備は多少、専守防衛を果たせる程度には回帰するのだろう、こう思っていました。日本を責められれば実力で追い出す、その能力を誇示する事で相手に思いとどまらせる、抑止力はこういうものだと理解していた。
戦車大隊の復活もあり得て機動運用部隊らしい装備になるのだろう、こう期待していましたら、説明によれば、これは第3師団広報の方にお教えいただいて、逆にびっくりしたのですけれども、地域配備師団や即応機動師団という名称はなくなり、統合されてしまう。
地域配備師団であった部隊はそのままの装備で機動運用部隊として運用されます、との事で、ちょっとこの装備とこの人数ではなあ、と考えさせられたものです。まあ、要するにミサイル防衛で調達できなかった装備、これらを揃える方が先決だ、と思うのです。
AH-64Dアパッチロングボウ戦闘ヘリコプターの残り49機と耐用年数を迎える12機の後継機に損失予備の1機、調達できなかった10式戦車600両のうちの戦車300両定数ぶんとか、多くの装備が削減されていますが、これらが一旦充足したならば、また違いました。
“専守防衛に必要な装備で着上陸した敵を迎え撃つ”としましたうえで“日本本土へのミサイル攻撃が行われた場合には反撃能力を行使して敵の本土を叩く”となります、しかし、“専守防衛の部隊が減らされておりまともな作戦ができない”現状では話は別となる。
“反撃能力を装備している”わけなのですから、敵本土からの日本本土へのミサイル攻撃はないのだけれども、ほかに戦車も航空機もないのでミサイル攻撃を行う、という施策しか“選択肢がなくなる”ということに懸念するのです。すると海を挟んだミサイル戦に。
ウクライナがモスクワへの大規模攻撃を計画するも核攻撃で反撃されるとのアメリカの勧告を受け入れ断念した、という報道が先日ありましたが、日本の場合は、まあモスクワを叩く事は無いのでしょうが指揮中枢も目標といいますので、これに近い事はやるのだろう。
反撃能力が残っているのに降伏はあり得ませんし、じゃあ九州と沖縄と北海道はあきらめよう、西日本と東北も場合によっては仕方ない、関東地方か、もしくは東京以外はあきらめよう、なんていう選択肢は国家としてはあり得ないわけです。すると、優先度は違う。
“まず防衛力をミサイル防衛により削られた段階まで戻す”ということが緊急に必要であり、“反撃能力の防衛力整備はその次”というのが自然流れではないのか。このあたりが自衛隊を、初めて駐屯地祭にいった当時はOD作業服と64式小銃の時代だったのですし。
動いている61式戦車を撮影し60式自走無反動砲の射撃を発砲炎がうつらないと嘆きながら一生懸命撮影し、60式装甲車の退役を見送ったという世代、そんな世代からはちょっと違和感を受けるのですね。反撃能力、これも政府はトマホークを500発ほど買うと発表へ。
これが閣議決定では400発となりまして、なるほど“ほど”というのは大雑把だ。100発も減らされるのか、臨時ボーナスですごい凄いといいながら実際には数千円を配るときと一緒だなあ、と思いつつ、これをどのようにして運用するのかが未知数です。
政府の説明ではイージス艦に搭載すると在りましたが、イージス艦の任務は艦隊防空なのです。ミサイル防衛で、それではイージス艦はミサイル防衛のSM-3迎撃ミサイルで艦隊防空用のミサイルが大きく削減されているのだから、ここにトマホークを搭載すると大変だ。
VLS垂直発射装置を占有したならば更に艦隊防空ができなくなる、と危惧したものでして、心配は残る。潜水艦用垂直発射装置の研究、こうした防衛装備庁からの開発研究企業の公募がありましたが、要するにトマホークミサイルを導入した場合でも搭載する艦艇がない。
ミサイルの問題という事を明示したわけでして、しかも通常動力潜水艦の船体はそんなにミサイルを搭載できません。防衛予算をGDP3%への増額を目指して新しく巡航ミサイル原潜を導入するという動きもありません。一方陸上配備型トマホークを導入する動きも無い。
旧式潜水艦の船体を延長してVLS区画を追加して、一隻当たり18発程度搭載できるようにするならば、24年で退役する潜水艦を更に12年程度延命して潜水艦36隻体制を目指し、第一線で行動させるのではなく後方でミサイル運用に特化する様な施策ならば別だが。
こんな防衛政策では朝令暮改ではないけれども五年後にはまた逆転するように大幅に見直されて、付き合った防衛産業が撤退するか数千億円を各社が賠償請求するほどの損失を被るのではないか、という危惧もあります。観艦式で示された防衛力は、ちがっていました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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横浜の情景、日曜特集は他の記事に関連する写真のアーカイブを作成する意味も含めていますので中々前に進まない。
2012年の観艦式写真を2023年に見返しますと、やはり防衛力整備の方向性と伝統的な自衛隊の装備体系の転換が、此処まで変わるのか、2003年の北大路機関創設当時と2012年の自衛隊観艦式の頃の自衛隊を比較した場合以上に転換の度合いの大きさに驚かされる。
3.11東日本大震災の影響もあるのでしょうが、ミサイル防衛の重視による自衛隊の従来装備体系の瓦解、防衛崩壊という他ない程の防衛力の空洞化と、これを補うための反撃能力整備というもの、この二点というものが、自衛隊の方向性の転換の大きな変容とおもう。
東日本大震災に伴う原発停止、考えるとこの当たりの拙速でポピュリズム的な対応が、それまでモノヅクリタイコクと称され製造業を基幹産業としていた日本の競争力を劇的に鈍化させ、しかも製造業以外分野での競争力の薄さ、規範形成能力が国力を削いでしまった。
怒号を議論と勘違いする層、結果的にポピュリズムを形成してしまい、原則論同士の、いわば成り立たない価値観の衝突を公的な議論において塗布することで、政治を劣化させるとともに、政治参加の時間を、経済活動と両立する難しさが削いでいる現状もありますが。
反原発に全てを押し付ける訳ではありませんが、併せて日本が権威主義国家ではなく民主主義国家であり、一旦方向性が示された方式を切り替える事の政治的な難しさが、製造業に必要な電力を削ぎ、その利益で創生されるべき次世代産業への転換の道も閉ざしている。
電力の話は競争力の話に終始するのですが、しかし波及効果として日本のポテンシャルそのものの変容というものが、結果的に安全保障情勢にも影響を及ぼしているのではないか。具体的には元々低い規範形成能力と、これを補完した経済力の両輪関係が喪失した、と。
軍拡には反対、という主張はあるのですが、結果的に均衡が崩れてしまったというのは上記の通り、そして均衡が崩れている状況での防衛力再編を行う必要があったのですが、破綻点を迎えるまでは、現状で何とかなっている、と反論されますと覆す論理はむずかしい。
2012年と2022年、この特集を始めましたのが2022年、比較しますと、戦車も火砲も激減し、ロケット発射機に対戦車ヘリコプターも全廃に向け推移している。何処かで覆さないと、抑止力が破綻し、朝鮮戦争やウクライナ戦争のような状況になってからでは、おそい。
安全保障関連三文書、2022年の防衛力再編と共に防衛装備は多少、専守防衛を果たせる程度には回帰するのだろう、こう思っていました。日本を責められれば実力で追い出す、その能力を誇示する事で相手に思いとどまらせる、抑止力はこういうものだと理解していた。
戦車大隊の復活もあり得て機動運用部隊らしい装備になるのだろう、こう期待していましたら、説明によれば、これは第3師団広報の方にお教えいただいて、逆にびっくりしたのですけれども、地域配備師団や即応機動師団という名称はなくなり、統合されてしまう。
地域配備師団であった部隊はそのままの装備で機動運用部隊として運用されます、との事で、ちょっとこの装備とこの人数ではなあ、と考えさせられたものです。まあ、要するにミサイル防衛で調達できなかった装備、これらを揃える方が先決だ、と思うのです。
AH-64Dアパッチロングボウ戦闘ヘリコプターの残り49機と耐用年数を迎える12機の後継機に損失予備の1機、調達できなかった10式戦車600両のうちの戦車300両定数ぶんとか、多くの装備が削減されていますが、これらが一旦充足したならば、また違いました。
“専守防衛に必要な装備で着上陸した敵を迎え撃つ”としましたうえで“日本本土へのミサイル攻撃が行われた場合には反撃能力を行使して敵の本土を叩く”となります、しかし、“専守防衛の部隊が減らされておりまともな作戦ができない”現状では話は別となる。
“反撃能力を装備している”わけなのですから、敵本土からの日本本土へのミサイル攻撃はないのだけれども、ほかに戦車も航空機もないのでミサイル攻撃を行う、という施策しか“選択肢がなくなる”ということに懸念するのです。すると海を挟んだミサイル戦に。
ウクライナがモスクワへの大規模攻撃を計画するも核攻撃で反撃されるとのアメリカの勧告を受け入れ断念した、という報道が先日ありましたが、日本の場合は、まあモスクワを叩く事は無いのでしょうが指揮中枢も目標といいますので、これに近い事はやるのだろう。
反撃能力が残っているのに降伏はあり得ませんし、じゃあ九州と沖縄と北海道はあきらめよう、西日本と東北も場合によっては仕方ない、関東地方か、もしくは東京以外はあきらめよう、なんていう選択肢は国家としてはあり得ないわけです。すると、優先度は違う。
“まず防衛力をミサイル防衛により削られた段階まで戻す”ということが緊急に必要であり、“反撃能力の防衛力整備はその次”というのが自然流れではないのか。このあたりが自衛隊を、初めて駐屯地祭にいった当時はOD作業服と64式小銃の時代だったのですし。
動いている61式戦車を撮影し60式自走無反動砲の射撃を発砲炎がうつらないと嘆きながら一生懸命撮影し、60式装甲車の退役を見送ったという世代、そんな世代からはちょっと違和感を受けるのですね。反撃能力、これも政府はトマホークを500発ほど買うと発表へ。
これが閣議決定では400発となりまして、なるほど“ほど”というのは大雑把だ。100発も減らされるのか、臨時ボーナスですごい凄いといいながら実際には数千円を配るときと一緒だなあ、と思いつつ、これをどのようにして運用するのかが未知数です。
政府の説明ではイージス艦に搭載すると在りましたが、イージス艦の任務は艦隊防空なのです。ミサイル防衛で、それではイージス艦はミサイル防衛のSM-3迎撃ミサイルで艦隊防空用のミサイルが大きく削減されているのだから、ここにトマホークを搭載すると大変だ。
VLS垂直発射装置を占有したならば更に艦隊防空ができなくなる、と危惧したものでして、心配は残る。潜水艦用垂直発射装置の研究、こうした防衛装備庁からの開発研究企業の公募がありましたが、要するにトマホークミサイルを導入した場合でも搭載する艦艇がない。
ミサイルの問題という事を明示したわけでして、しかも通常動力潜水艦の船体はそんなにミサイルを搭載できません。防衛予算をGDP3%への増額を目指して新しく巡航ミサイル原潜を導入するという動きもありません。一方陸上配備型トマホークを導入する動きも無い。
旧式潜水艦の船体を延長してVLS区画を追加して、一隻当たり18発程度搭載できるようにするならば、24年で退役する潜水艦を更に12年程度延命して潜水艦36隻体制を目指し、第一線で行動させるのではなく後方でミサイル運用に特化する様な施策ならば別だが。
こんな防衛政策では朝令暮改ではないけれども五年後にはまた逆転するように大幅に見直されて、付き合った防衛産業が撤退するか数千億円を各社が賠償請求するほどの損失を被るのではないか、という危惧もあります。観艦式で示された防衛力は、ちがっていました。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
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