北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】ドイツ軍特集-BvS10全地形装甲車導入とPzH-2000自走榴弾砲増強,プーマ装甲戦闘車改良

2023-06-06 20:00:34 | 先端軍事テクノロジー
■■■防衛フォーラム■■■
 Dデイこと六月六日という事とは無関係に今回はドイツ軍関連の最新情報を纏めてみました。

 ドイツ連邦軍はBAEシステムズ社よりBvS10全地形装甲車227両を追加取得します。BvS10全地形装甲車は連接構造を採用したBV-206全地形車両の装甲車両型で、スウェーデンが湿地帯や雪上運用を念頭に開発した装備です。水陸両用性能と傾斜地での運用性能が高く山岳戦闘や水陸両用性能も高く、イギリスやオランダ海兵隊が採用しました。

 227両のBvS10全地形車両取得費用は4億ドル相当とされ、ドイツ軍はこれまでにNATOの北極圏作戦支援用にスウェーデンとイギリスとともに既にBvS10全地形車両を導入しており、今回は純粋な追加調達となります。北極圏での作戦用としてBvS10はアメリカ陸軍に非装甲型のベーオウルフ全地形車両が既に評価試験を経て先行調達されています。

 北極圏の温暖化が近年の気候変動により進み、新しい最前線を形成しています。ドイツ連邦軍が今回導入するものは、兵員輸送型とともにBvS10-C2指揮通信車両、そしてBvS10-L兵站支援車両が調達されることとなっています。全地形車両そのものは連邦軍では北極圏作戦用以外に衛生軍が装甲救急車型を導入、これにより連邦軍では既知の装備です。
■■■PzH-2000■■■
 日本の様に細々と継続するのは量産効果の観点から問題だとは思うのですがドイツの様に生産を停めてしまうと量産再開までに非常に時間がかかるのも問題ですね。

 ドイツ連邦軍は改良型PzH-2000自走榴弾砲10門を追加調達します。これは4月に国防省とクラウスマッファイヴェクマン社が正式契約に至ったもので、これに先行してドイツ連邦軍はウクライナへ供与したPzH-2000自走榴弾砲18門の補填調達を推進中、今回の10門は補填調達の際に締約された追加調達に関するオプション契約の行使となります。

 PzH-2000自走榴弾砲は52口径155mm榴弾砲を備えた世界で最も強力な自走榴弾砲とされていますが、正式化が冷戦後となり調達計画が大幅に縮小された歴史があります。その少ない生産数によりドイツ連邦軍の可動PzH-2000自走榴弾砲は非常に少ないものとなっていましたが、2022年にその少ない可動車両の一部をウクライナへ供与したかたち。

 ウクライナ供与装備の補填調達は2025年から6両を3ロットに分けて18両を調達する計画です。改良型は駆動系等やエンジン制御システムが最新型になっているとのことで既存車両も順次改良を受けます。PzH-2000自走榴弾砲は56秒間で10発、緊急時には9秒間で効力射3発を射撃可能、というように発射速度の速さが有力とされる自走砲です。
■■■プーマ改良■■■
 プーマの方が装甲が凄いという事は知っているのですが改修費用だけで89式装甲戦闘車2004年新造分に匹敵するといわれると、自衛隊は夢を見ずにさっさと89式の改良型を調達再開すべきと思う。

 ドイツ連邦軍はプーマ装甲戦闘車143両の近代化改修契約をプロジェクトシステムズマネジメントGmbH社との間で締約しました。プロジェクトシステムズマネジメントGmbH社は通称PSM社、ラインメタル社とクラウスマッファイヴェクマン社の合弁会社でプーマ装甲戦闘車の生産と整備及び改修に特化した特定防衛目的合弁企業となっています。

 プーマ装甲戦闘車は2010年代の連邦軍近代化への目玉装備として調達されましたが、運用仕様の二転三転や制御と整備システムの問題放置などにより稼働率に深刻な問題をはらんでおり、ロシアウクライナ戦争を受けてのNATO演習に際し、稼働率が1960年代設計のマルダー装甲戦闘車よりもはるかに低く、故障が相次いだことが問題視されました。

 7億7000万ユーロ、今回のプーマ装甲戦闘車143両近代化改修は非常に高額なものとなり、一両当たりの改修費用はストライカー装輪装甲車新造費用の五倍にも達します、しかしこの改良により駆動系の制御システムが改良されデジタル無線システムの追加、暗視装置が最新となり、更にMELLS対戦車ミサイルの運用能力が付与されることとなります。
■■■CAVS共同開発■■■
 自衛隊は国産開発を断念してパトリアAMVを選定しましたが共同開発という選択肢はかつてフランスがVBCI装甲車に至るベクストラ装甲車の共同開発を持ちかけてきたのを思い出します。

 ドイツ政府とスウェーデン政府はCAVS多国籍共通装甲車両システムを前進させます。CAVS多国籍共通装甲車両システムは八輪駆動乃至六輪駆動の装輪装甲車で共通プラットフォームを開発します、ドイツとスウェーデンは2022年6月に開発協力覚書へ署名し両国共同開発が開始されました。今回の前進は4月に執り行われた技術協力契約とのこと。

 CAVS多国籍共通装甲車両システムそのものはフィンランドとラトビア政府が共通装甲車を開発するべく、フィンランドのパトリア社を中心に進められたものです。これは兵員輸送と高い機動力による緊急展開能力などを目指していましたが、軍隊に必要な装甲車両とは兵員輸送のほか、前線補給任務や第一線整備任務、装甲車両や砲兵指揮車なども含む。

 CAVS多国籍共通装甲車両システム、ドイツ連邦軍は冷戦時代に高度な足回りと機動力を有するフクス装輪装甲車を大量調達しており、スウェーデン軍はフィンランドよりパシ装輪装甲車などを調達していますが、いずれも旧式化が始まっています。ドイツは高度なボクサー装輪装甲車を開発量産しているものの高価であり、汎用装甲車には向きません。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢:ロシア軍モスクワ軍管区復活と隠された二万両戦車が帰結の欧州通常戦力削減条約ロシア離脱

2023-06-06 07:00:15 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 本日は六月六日でDデイです。もちろんDデイに併せてウクライナ軍の総反撃が始まるというような訳ではないのでしょうが。

 ロシア連邦軍はモスクワ軍管区とサンクトペテルブルク軍管区を年内に新編する方針を示しました。これはロシア連邦軍参謀本部組織動員総局が発表、ソ連時代のモスクワ大軍管区とレニングラード大軍管区に相当するもので、陸軍軍団及び航空軍団を隷下に置くものとしています。この為の新たな動員計画などについては、あきらかにされていません。

 モスクワ軍管区再編について、現在ロシア軍は2010年のセルジュコフ国防相時代の改編により、東部軍管区、西部軍管区、南部軍管区、中央軍管区、北部軍管区、この五個軍管区に区分されています。しかし5月以降相次ぐモスクワへの無人機攻撃など首都防衛を再認識する必要が生じたことから、大都市の軍管区再編に踏み切ったものと推測ができます。
■ロシアCFE条約脱退
 欧州通常戦力削減条約いわゆるCFE条約では廃棄戦車などの解体を示す証拠画像を当時のロシア政府が発表していたのですが。

 ロシア政府は5月29日、欧州通常戦力削減条約からの離脱を表明しました、これはロシア軍が廃棄したとされる大量の戦車等を解体せず保存していた事への説明を免れる為の行動と考えられ、ロシアは1990年の歴史的と云えた条約成立の一方で、ひそかに大量の兵器を隠匿し、またウクライナ戦争のような侵略行動に備えていた事が明るみに出た構図です。

 欧州通常戦力削減条約ではNATOと旧ワルシャワ条約機構軍は共に戦車を20000両まで削減、装甲戦闘車両は共に30000、火砲も共に20000、戦闘用航空機は共に6800、攻撃ヘリコプターを共に2000へ削減するとし、特にロシアは戦車だけでも6400に削減する合意でしたが、2022年に入り突如ロシア国防省が20000両の戦車を保管中と発表していました。
■パルチザン部隊
 隣国との戦争中にその隣国が反撃してこないという不思議な思い込みがあったようです。

 イギリス国防省戦況報告によればロシアパルチザン部隊が6月1日、ロシアのベルゴロド州へ再度攻撃を加え、この攻撃では無人航空機等空からの掩護が加えられたとのこと。またロシアウクライナ国境に近いシェビキノ市ではウクライナ側の砲撃が加えられ、ロシア側のFSB国境警備隊による国境警備体制の低さが露呈する状況となっています。

 戦争中の隣国からの反撃を全く想定していない国境警備体制は理解が難しく、ロシア陸軍はTOS-1A重サーモバリック兵器や戦闘ヘリコプターなどを国境地域警備へ増派しているとしていますが、これらの装備はウクライナ侵略に際し占領地の防衛や次の攻撃作戦などで必要な装備となっていて、侵攻作戦と領域警備二者択一の問題が生じつつあるようです。

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