北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

北朝鮮ミサイル発射!軍事偵察衛星打ち上げとは別の地対地ミサイルか,本土ミサイル防衛空隙突く

2023-06-15 20:22:51 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ミサイル防衛
 ロケットではなく弾道ミサイルの可能性が高いもよう。

 防衛省によれば北朝鮮は先程1930時、弾道ミサイルを発射しました。防衛省発表によれば2000時までに弾道ミサイルは落下したものと思われるとのこと。情報がまだまとまっていませんが、今回発射されたものは北朝鮮が今月11日までの予告期間として発表していた“軍事偵察衛星”の第二回打ち上げではなく、純粋な地対地弾道弾であった可能性があります。

 発射地点や落下点はいまのところ情報収集中ということで、また日本の排他的経済水域EEZ内に着弾したのかも情報取集中となっています。仮に日本本土へ落下する場合には破壊措置命令が発令されている為に即座に迎撃し人口密集地域への落下を阻止する準備は出来ているのですが、今回のミサイル、ロケットではなくミサイルは課題を突き付けている。

 北朝鮮当局はこの弾道ミサイル発射に先んじて、米韓の防衛協力を批判する声明を出しており、宇宙からの情報収集に当る人工衛星とは別の韓国軍や在韓米軍への示威行動として打ち上げた弾道ミサイルの可能性があるとのこと。現在のところこの弾道ミサイルによる被害は報告されていませんが、同時に発射に関する通告もまったくありませんでした。

 九州のミサイル防衛部隊が沖縄に展開しており手薄な状況である。今回自衛隊にとって想定外であったのは、軍事偵察衛星打ち上げとともに北朝鮮が実験期間と軌道を発表、この軌道は南西諸島が含まれていたものの、九州島はその軌道下に含まれていなかった為に、自衛隊は南西高射群のミサイル防衛部隊のいない地域に九州より増援を派遣しています。

 軍事偵察衛星打ち上げ期間に、北朝鮮が全く関係の無い弾道ミサイル演習を実施する事は自衛隊のミサイル防衛能力では対応できない、そして流石に実験期間とその軌道を発表している地域とは別のミサイル演習を行うのは、いまは戦時ではなく平時だ、という点を加味すれば流石にやる事はないだろう、という良識の裏をかかれた構図にほかなりません。

 ペトリオットミサイルを増勢し、いわば現在航空自衛隊の4航空方面隊の各1個が置かれている方面高射群とは別に機動運用できる高射部隊を整備する必要はないか、若しくは陸上自衛隊の高射特科部隊に機動運用を可能とする弾道ミサイル防衛部隊を置く必要はないのか、九州手薄の状況で実施されたミサイル演習はこうした課題を突き付けているのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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【京都幕間旅情】大覚寺,愛宕や高雄を望む大沢池は洞庭湖という唐の風景画を歴史とともに讃える

2023-06-15 20:00:36 | 写真
■平安朝の情景を伝える
 山河の情景というものはなかなかに長い時代を受け継ぐ故に借景と共にみる寺院の風景はどの季節も新鮮と思うのですが、新緑の季節は更に鮮やかだ。

 大覚寺、その歴史と共に寺院がほかの京都数多ある寺院との違いを感じますのは、この大沢池を、文字通り池泉回遊式庭園、というだけではなく文字通り池の周りを散策して、遠くに多宝塔や堂宇の姿と高雄や愛宕の峰々を借景として眺めた際の壮大さにあると思う。

 大沢池は、確かに京都の寺院には天龍寺や龍安寺に平等院と大きな池を巡らせるところはおおいのだし、いや平安様式にしても禅宗にしても池泉はその庭園に配置しているのはある種常識的な様式となっています、けれどもここの大沢池ほど大きくはありません。

 洞庭湖という唐の風景画にあります湖を嵯峨天皇が嵯峨離宮造営にあたって再現したため、という。そして興味深いのは人工池としては日本で現存する最古のものがこの大沢池といいます。実際、高雄山に近い当地は傾斜地であり、築堤により人工池を造成した。

 心経宝塔、多宝塔はこう呼ばれまして実は1967年造営と新しい多宝塔ではあるのですけれども、大沢池の遠い立地から見透かすように桜並木の狭間から眺めますと、なにかこう平安朝という優雅な印象に錯覚する、そしてこの大沢池は一周が1㎞にも達するという。

 名古曽滝跡という、この大沢池に流れ込む小さな流れの上流には現存しない人工の滝跡がありまして、その様子は今昔物語集にも描かれている非常に古いものとなっている。ここは冬の季節ではなく春の季節に散策すると生き生きとした緑の絨毯が印象的に面映ゆい。

 華道嵯峨御流、ちょうどこの大覚寺を拝観した際にはいけばな展の準備が行われているところでしたけれども、大沢池のまわりには嵯峨離宮造営の頃から季節の花々が咲く立地であり、そしてこの大沢池にいくつかある人工島では嵯峨上皇が菊を栽培したという。

 菊島、という大沢池の島で手植えられた菊の花を離宮内で鑑賞するために、いけばな、という今では日本文化の代名詞の一つとなっている花木の鑑賞方法は、実はこの大覚寺で上皇さんの手植え菊を邸内で眺めるための作法であった、ということをここで知りました。

 天神島、庭湖石、菊の島、ここ大沢池には大きな三つの島が並ぶとともに、前述の借景とともにここでしか見ることのできない水上の有限ともいえる情景がみられるといい、大覚寺には巨大な観月台も、これが寺院なのか離宮なのか、というほどの優美さを湛えます。

 応仁の乱、壮大な伽藍は院政と南北朝という日本の政治における幾つかの分水嶺の舞台となった故の壮大さではあるとしましたが、しかしこの大覚寺もやはりといいますか毎度のように、応仁の乱の戦果により灰燼に帰しています、その中で大沢池は残りましたが。

 灌漑用池、歴史に埋もれることなく優美な平安朝の頃の池泉が現存します背景には実はここは周辺田畑の灌漑用水としての位置づけもあり、もちろん雅な宮廷文化の継承というものもあるにはあったのでしょうが、実利的な要素もあり大切に保存されてきました。

 五大堂という大覚寺の本堂は天明年間という18世紀末に造営、安井堂という後水尾天皇を祀る堂宇は明治時代に東山の安井門跡蓮華光院より移築、御影堂は大正天皇即位の礼に用いられた建物の移築、と実は大覚寺の伽藍は全般的に新しいものであったりもします。

 愛宕や高雄を望む大沢池は、こうした歴史に翻弄され一時は大きく荒廃した寺院にあっても、いわば基礎となる風景、人工的な池泉であっても、こうした風土さえ残るならば復興するという気概にて、往年の美を再興できるのだと今に伝えるようにも思えるのです。


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ウクライナ情勢-ロシア航空宇宙軍の活動活性化と意外な概況,開戦時欠いたBAIとCASの能力構築が戦況を左右

2023-06-15 07:00:36 | 防衛・安全保障
■臨時情報-ウクライナ情勢
 今後の戦況はこの一年四カ月の間にロシア航空宇宙軍がどの程度能力を向上させたかによりウクライナ軍の反撃が左右されるかもしれない。航空自衛隊もCASとBAIの能力を更に整備すべきだ。

 ロシア航空宇宙軍はウクライナ軍反撃攻勢に対して戦闘機と戦闘ヘリコプターの集中運用を開始しました。南部のオレホボ近郊でのウクライナ軍機甲部隊の損耗、レオパルド2主力戦車6両とブラッドレイ装甲戦闘車15両以上が撃破されたとされる戦闘は、ロシア軍防御線に対する正面突破の際、地雷除去などで滞留した部隊が空から攻撃を受けている。

 ウクライナ政府が再三に渡りF-16戦闘機供与を要請していた背景が正に現状で示されている構図ですが、イギリス国防省戦況分析では意外な実情を示しています、それは、ロシア航空宇宙軍の行動は過去数カ月間に対して高い頻度での航空機運用を行っているが、それでも開戦劈頭の航空宇宙軍航空攻撃と比べればその頻度は高くない、ということでした。

 BAI航空阻止の段階まで入っていない、BAIというのは最前線付近に対する航空攻撃に留まらず第二梯団や攻撃により突破に成功した際に投入される戦果拡張部隊などの集積地域への航空攻撃を示すものです。しかし今回ロシア航空宇宙軍の戦闘機や戦闘ヘリコプターはロシア占領地の防衛線付近での戦闘に終始しており、踏み込んだ攻撃を行っていません。

 ロシア軍のオレホボ近郊防衛線におけるウクライナ軍への航空攻撃は、CAS近接航空支援、というほどにもロシア軍部隊との陸空共同作戦が執られたようには見えず、単に障害除去中の部隊に対する航空攻撃という範疇を出ていないようです。すると、仮にウクライナ軍が防衛線を突破した場合にも、これが困難なのだけれど、航空攻撃は続くのでしょうか。

 CAS近接航空支援を行う際に、ロシア軍の前線航空統制制度への情報が不充分である為に一概には言えないのですが、ロシア軍は前線を突破された場合に備え第1親衛戦車軍を戦略予備として配置しています。問題はCASが必要とされた際にロシア戦闘爆撃機の操縦士は、ロシア軍とウクライナ軍を高速で飛行する戦闘爆撃機から識別できるのかということ。

 BAI航空阻止をロシア軍が能力として獲得している場合、ウクライナ軍の反撃はまだ先鋒ば防衛線の隙間を探している段階である為に先となります、ここにBAIが加えられた場合は攻撃の主力が損耗を強いられる事となります。もっともその為にはウクライナ軍防空砲兵を叩くSEAD防空制圧任務が必要となり、いわば温存された空軍の練度が試されます。

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