北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

ベル360インヴィクタスという選択肢【2】FLRAA将来型長距離強襲機とFARA陸軍将来攻撃偵察機

2023-06-29 20:12:02 | 先端軍事テクノロジー
■複合ヘリコプター
 有人ヘリコプターの利点は安全性や費用面ではなく即座の致死性を相手に叩きつけられるという部分が大きいように考えるのだ。

 複合ヘリコプターは攻撃ヘリコプターの後継と成りうるか。陸上自衛隊ではAH-64D戦闘ヘリコプターの後継機を選定せず形式消滅させる方針を示しています。しかし、後継に無人機を充てる構想が示されていますが、果たして無人機だけで実際に指揮官や偵察員が目視で状況把握せずとも対応できるほど、AR拡張現実など研究されているのでしょうか。

 無人機は旧陸軍の時代から研究が続いており実績も高いために陸上自衛隊は今後有人航空機ではなく実績ある無人機へ運用をシフトする、こう言い切ることができればよいのですが、自衛隊が無人機の分野で先進的であったのは標的機のみ、無人偵察機については航空法の関係を含めかなり後手に回っています。故に期待しすぎても運用能力がありません。

 OH-6D観測ヘリコプター、この後継機に無人ヘリコプターを導入するとしましても、残念ながら無人ヘリコプターには匍匐飛行能力を持つ機種は存在せず、単に安穏と低空飛行していてはロシア軍ヘリコプターがウクライナ上空で多数が携帯地対空ミサイルの血祭りにあげられている状況を踏襲するのみであり、匍匐飛行ができなければ生き残れない。

 FLRAA将来型長距離強襲機とFARA陸軍将来攻撃偵察機、アメリカ陸軍は二つの航空機の機種選定と量産準備や開発などを急いでいます。アメリカの話か、と思われるかもしれませんがこれらに機種の装備体系を最も重視しているのは数ある統合軍の中でもインド太平洋軍で、近く懸念される中国軍の太平洋地域での軍事行動に備えての措置ということ。

 FARA陸軍将来攻撃偵察機はOH-58カイオワ観測ヘリコプターの後継を期している装備ですが、RAH-66コマンチ偵察ヘリコプターが開発費高騰を受け開発中止となって以降、安価を目指したヘリコプターに過度な装備の搭載を行うことで価格高騰という、ARH-70偵察ヘリコプターの中止などが繰り返され、結局後継機なしにOH-58は退役しました。

 AH-64Eアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターとRQ-7シャドー無人偵察機、アメリカではOH-58観測ヘリコプターの任務をこの二機種が担っていますが、性能面で隔靴掻痒が否めないようで、更に想定されるインド太平洋地域の戦いでは、欧州や中東地域の戦場よりも洋上飛行を含め戦域が非常に広く、これらの装備の行動半径では全く対応できません。

 日本の視点に戻しますと、OH-6D観測ヘリコプターが全機用途廃止されました、この退役の仮定と後継機の不在、しかし現場の声を聴きますというほど後継機なき用途廃止に安心できる状況ではないという状況を加えれば、アメリカのOH-58観測ヘリコプターと日本のOH-6D観測ヘリコプターの関係は重なる点があり、さらに日本は後継が本当に無い。

 OH-6D観測ヘリコプター、当初はOH-1観測ヘリコプターを250機量産することで後継機に充てる計画で、特にOH-1観測ヘリコプターは開発当時脅威視されていた空対空戦闘能力を持つ敵戦闘ヘリコプターに対して空対空ミサイルによる積極戦闘を想定するなど、野心的な設計となっていました。その分費用は高騰し、結果調達数が大幅に減らされる。

 OH-1観測ヘリコプター、個人的には川崎重工が納入していた製造費用はMQ-8ファイアスカウト無人ヘリコプターよりも若干安く、またデータリンク能力も防衛装備庁が技術研究本部時代に実施しており、岐阜基地において技術研究本部がOH-1初号機を用い飛行実験を繰り返す様子を見ていましたので、性能で陳腐化した装備とは考えてはいません。

 OH-1観測ヘリコプターは武装搭載能力の低さが問題視されていますが、APKWS先進精密攻撃兵器という、所謂70mmロケット弾のレーザー誘導型の開発、奇しくもこれはOH-1以上に搭載能力のないMQ-8などの無人航空機用に開発されたものですが、こうしたものの開発により、偵察のほかに一定の対装甲戦闘能力を付与させることは可能といえる。

 南西諸島防衛、自衛隊が南西諸島防衛を想定する場合においてもOH-1の増槽搭載時航続距離は720km、これはイタリアのA-129マングスタ戦闘ヘリコプターとそれほどそん色はなく、自衛隊を台湾やフィリピンにおけるアメリカ軍作戦支援へ投入する計画がないのであれば、南西諸島でもほぼ十分な性能といえるものです。ただ、性能不十分という。

 FLRAA将来型長距離強襲機とFARA陸軍将来攻撃偵察機、一つの疑問符は自衛隊がこれらの装備を調達する可能性はあるのか、という事です。FARA陸軍将来攻撃偵察機については戦闘ヘリコプターとしての能力を有する機種が提示され、例えばコンパウンドアパッチというボーイング社の提案はアパッチガーディアン戦闘ヘリコプターが原型機なのです。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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ウクライナ情勢-ドニエプル川対岸橋頭堡確立とドネツク市旧管理線東方地域への進出成功

2023-06-29 07:00:28 | 国際・政治
■臨時情報-ウクライナ情勢
 これが内線作戦の強みというべきなのでしょうか。

 ウクライナ軍はアントノフスキー橋付近でのドニエプル川渡河作戦を事実上成功させ対岸へ橋頭堡を確保したもよう。この上流にはロシア軍が爆破したとされるカホフカダムがあり、仮に現時点でカホフカダムがロシア軍により破壊されていなかった場合には、浮橋を用いてドニエプル川を渡河しているウクライナ軍に大きな打撃を与えた可能性があった。

 カホフカダムは破壊当時ロシア軍が一年以上に渡り占拠しており、ダム破壊当時静かであったという現地報道と、地震計の分析からダムが外部からの攻撃ではなく内部からの爆発物により破壊されたことは確実とみられています。この結果ロシア軍は洪水に見舞われたウクライナ軍のこの地域での反撃は無いと見越し部隊を移動した後にこの渡河作戦です。
■旧管理線の東方へ
 大きな前進というべきでしょう。

 ウクライナ軍は旧管理線の東方へこの戦争が始まって以来初めて前進する事が出来たとのこと。イギリス国防省ウクライナ戦争分析に記されていました。ここでいう旧管理線とは2014年クリミア併合とドンバス内戦により事実上ロシア軍がこの2022年ウクライナ戦争開戦前に制圧していた地域との境界線を示します。開戦前よりもロシア軍を押し戻した。

 ドネツク市近郊のクラスノホリフカ村周辺でのウクライナ軍反撃がこれにあたり、僅か前進ではあるがロシアが傀儡国家として樹立しロシア本土へ後に併合したドネツク人民共和国の支配地域にきり込みました。ロシア軍はドニエプル軍集団から兵力を引抜いていますが、その背景にはドンバス地域でのこのウクライナ軍反撃が背景にあると考えられます。
■ロシア軍第35軍参謀長
 ロシア軍将官が一人戦死した様です。

 ロシア軍第35軍35CAAの参謀長セルゲイゴリャチェフ少将が6月12日の指揮所攻撃を受けた際に戦死したことが確実となりました。指揮所攻撃の様子は写真などが公開され、その破壊度合いからゴリャチェフ少将の戦死の可能性が指摘されていましたが、6月15日付のイギリス国防省ウクライナ戦況報告によりその戦死が記されていたかたち。

 ゴリャチェフ少将は2023年に入り慎重に避けられていた将官戦死者の最初の事例となります。ゴリャチェフ少将が参謀長を務める35CAAは2022年3月にキエフ北方でのブチャ虐殺事件に関与した部隊として知られています。なお35CAA司令官アレクサンドルサンチク中将は現在上級司令部勤務で、35CAAは事実上ゴリャチェフ少将が司令官でした。

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