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京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

【防衛情報】空母クイーンエリザベス修理期間,ゴールデンエイジ大規模建造計画とMRSS多目的支援艦

2024-07-09 20:01:06 | 先端軍事テクノロジー
■防衛フォーラム
 プリンスオブウェールズは来年来日するという事でしたけれども。

 イギリス海軍空母クイーンエリザベスの修理期間が延長されることとなりました、現在同様に問題が発生している同型艦二番艦である空母プリンスオブウェールズとともに岸壁に係留され修理作業が進められています。空母クイーンエリザベスは多国間訓練へ向かう途中に不具合が発生し緊急帰港し、そのまま修理が開始されていました。

 クイーンエリザベスはロサイスにおいて修理が進められていますが、問題が発生しているのは二つのスクリューシャフトの右側、スクリューシャフトは三か所に継ぎ手が配置され、その継ぎ手部分の樹脂製カバーが駆動により外れて海水が侵入していることが、2月のNATO演習に向かう最中の浸水で判明、腐食によるシャフト破壊の懸念が生じた。

 プリンスオブウェールズでも同様の浸水が発生しており、緊急帰港では残る一本のシャフトにより航行しましたが、左舷側シャフトも条件が同じであり浸水が発生する懸念があるため交換が決定、両方のシャフト交換により修理期間が延長します。一方、プリンスオブウェールズはより深刻なシャフトベアリング故障が発生、修理期間が延長された。
■ゴールデンエイジ
 パチンコ屋さんみたいな名前だ。

 イギリス海軍は2050年代に向けてゴールデンエイジという大規模な建造計画を推し進める、2024年5月のロンドンシーパワーカンファレンスにおいてイギリスのグランドしゃっぷす国防大臣が“ゴールデンエイジ”という単語とともに将来計画を発表しました。元々は2017年国家造船計画が画定し、これを2022年にジョンソン政権が改訂したもの。

 ボリスジョンソン政権時代に提示されたんは2050年までにイギリスを世界で最も競争力を有する海洋国家として再建する事で、この実現のためにイギリス海軍は今後28隻の艦艇を建造するとのこと。これには26型フリゲイトと31型フリゲイトとともにこれに続く将来水上戦闘艦や原子力潜水艦、多目的支援艦などをふくむとしています。

 将来水上戦闘艦とは2030年代後半に退役が開始される45型駆逐艦の後継となる83型駆逐艦を指すものと考えられ、現在はシーバイパーシステムを搭載しサンプソンレーダーと48セルのVLSを搭載する防空艦という概念設計段階となっていますが、将来水上戦闘を考える限り48セルという搭載量は十分ではなく見直しを迫られましょう。
■MRSS多目的支援艦
 新しいパワープロジェクションシップが建造されるという。

 イギリス海軍はMRSS多目的支援艦を最大6隻を建造します。これは2024年5月のロンドンシーパワーカンファレンスにおいて構想が具体的に示されたもので、元々は2021年国防白書にベイ級支援揚陸艦3隻と航空支援艦アーガスを置き換えるという構想で示されていました。アーガスは航空練習艦ですが補助的な揚陸任務を担うとされています。

 MRSS多目的支援艦は補助揚陸艦の様な補給艦と揚陸艦の能力を半々に持つ艦艇を構想しており、イギリス海軍では海軍コマンドーの輸送支援へ後部飛行甲板及び格納庫にCH-47輸送ヘリコプターの発着及び整備能力を求めていて、更に上陸用舟艇などを運用し水陸両用作戦の一翼を担うべく船体にはウェルドックを有する設計を目指しています。

 これは現在進行中のロシアウクライナ戦争、紅海危機の任務対応などを通じて従来の水上戦闘艦の欠缺部分を担う設計になるとのこと。計画では2034年から先ず3隻を建造、さらにオプション契約として3隻を建造するという計画で、船体には2030年代の戦闘を想定し高出力レーザー兵器の搭載も前提となり病院船としての能力も付与されるもよう。
■トマホークミサイル搭載
 これでイギリスの主要な水上戦闘艦はトマホークミサイル搭載により打撃力を持つわけですね。

 イギリス海軍の26型フリゲイトと31型フリゲイトはトマホークを搭載する、グラントシャップス国防大臣は2024年5月のロンドンシーパワーカンファレンスにおいてイギリス海軍の将来水上戦闘能力に強力な対地打撃能力付与を発表しました。これは欧州各国海軍の最近の潮流とイギリスが直面する最新の安全保障情勢を反映してのもの。

 欧州各国では先ずオランダ海軍がフリゲイトへのトマホークミサイル搭載を発表しており、2025年から2029年にかけ現在保有する4隻のフリゲイトをトマホーク搭載艦に転用する。そしてフランス海軍も最近、潜水艦と水上戦闘艦からの250マイル先への艦対地同時攻撃試験を実施しており、イギリスが遅れを取るわけにはいかない、ということ。

 トマホークミサイルの搭載は最近の情勢変化も反映されており、シャップス国防大臣によれば一つは紅海におけるフーシ派船舶無差別攻撃を受け対地攻撃能力の必要性が認識されている事、そしてもう一つはロシアウクライナ戦争勃発により欧州正面の緊張が増大していることで、海軍にはあらゆる任務へ対応できる能力が必要であるとしました。

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