■FH-70榴弾砲続々前へ
本番だと思ったならばこれは予行で本番は翌日非公開で行われるという肩すかしをくった豊川駐屯地記念行事の様子です。
第10特科連隊の観閲行進が続きます、非常に大きな破壊力を秘めたFH-70榴弾砲なのですが、中砲牽引車、要するに見た目ではトラックというべきなのか、牽引されている様子を見ますといまひとつ迫力が無いのは否めないのだよなあ、と嘆息するところですが。
FH-70榴弾砲は、イギリスとドイツとイタリアが共同開発した、1970年代の近未来に対応する榴弾砲という位置づけでした。いや半世紀前やないかい、と思われるかもしれませんが、砲身の長さが39口径、155mmの39倍の榴弾砲は2000年代まで最先端といえました。
39口径155mm榴弾砲、一般論として砲身が長ければ長い程に火薬の燃焼効率が高くなり砲弾の射程が延伸します。じゃあ60口径でも62口径でも伸ばせば良いではないか、とおもわれるでしょうが、コンマミリ以下の精度でまっすぐな砲身を成形する事は実に難しい。
砲身の成形なんて簡単と思われるかもしれませんが、当然の事でありながら忘れられているのは、金属は熱膨張するというもの。砲身に太陽光が当たれば熱せられますしなにより砲弾を撃つのですから、この摩擦熱も炸薬の加圧も全て熱として砲身を影響させかねない。
日本製鋼所で製造されているFH-70榴弾砲、製造は簡単そうに見えるのですが、FH-70の最大射程は38km、なにも誘導装置のついていない砲弾を38km先へ誤差50m以下で命中させなければなりません、京都駅から大阪駅を狙って駅舎に当てる程度の精度が最低限、要る。
特科部隊、いまの砲兵戦は既に30km以遠を狙う時代となっています、そして誤差50m以下としなければ、砲弾の威力は長径45mに有効弾片を散布するものですから、敵の火砲を狙って射撃しても撃破することができないのですね。その精度を得る為にあらゆる努力が。
榴弾砲が射撃しますと、その瞬間に衝撃波が走ります、火砲は地面に設置しているのだから衝撃波は必ず生じる、すると振動は空気中の音速以上の速度で広がり地中マイクロフォンに撃った事が即座に暴露します、砲兵部隊はこうしたマイクロフォンを幾つも設置する。
対砲レーダ装置は、この瞬間に電源が入れられ、砲弾の飛翔角度を捕捉する。砲弾は放物線を描いて飛翔しますので、弾道計算により撃った場所は数秒で露呈します。撃つ前に対砲レーダ装置を動かし続けると、今度はその強力な電波が標定され、逆に撃破されるが。
FDC火力調整所という部署が、敵の火砲や敵部隊などの情報を元に射撃目標を決定しますと、射撃命令が大隊長の決心とともに発せられ、その日の気温や風速と湿度、ここに地球の自転といった要素を差し引き、最適の炸薬量と角度が計算され、射撃準備を行います。
射撃の瞬間に位置が暴露する、だからこそ、射撃は敵から相当離れていても、効力射3発を撃った瞬間、即座に陣地変換して反撃から回避しなければなりません。停止から射撃して陣地変換まで数十秒、陣地は未だ暴露していない予備陣地か予備の予備陣地へ向かう。
大隊長決心まで、秘匿された掩砲所に待機する事もあれば、敵無人機や斥候を警戒して移動し続ける場合もありますし、もちろん、それは撃って命中させるまでの行動の一環として行う。特科部隊に高い制度が求められるものの、そのためにやる事が多いといえる。
自衛隊は特科部隊、特に野戦特科部隊を削減し続けてきたのですが、上記の通り、30km先、将来は50kmから100km先に砲弾を命中させる、そんな部隊を一朝一夕に養成することはできない、という認識を前提に、防衛政策が決められていると良いのですけれども、ね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
本番だと思ったならばこれは予行で本番は翌日非公開で行われるという肩すかしをくった豊川駐屯地記念行事の様子です。
第10特科連隊の観閲行進が続きます、非常に大きな破壊力を秘めたFH-70榴弾砲なのですが、中砲牽引車、要するに見た目ではトラックというべきなのか、牽引されている様子を見ますといまひとつ迫力が無いのは否めないのだよなあ、と嘆息するところですが。
FH-70榴弾砲は、イギリスとドイツとイタリアが共同開発した、1970年代の近未来に対応する榴弾砲という位置づけでした。いや半世紀前やないかい、と思われるかもしれませんが、砲身の長さが39口径、155mmの39倍の榴弾砲は2000年代まで最先端といえました。
39口径155mm榴弾砲、一般論として砲身が長ければ長い程に火薬の燃焼効率が高くなり砲弾の射程が延伸します。じゃあ60口径でも62口径でも伸ばせば良いではないか、とおもわれるでしょうが、コンマミリ以下の精度でまっすぐな砲身を成形する事は実に難しい。
砲身の成形なんて簡単と思われるかもしれませんが、当然の事でありながら忘れられているのは、金属は熱膨張するというもの。砲身に太陽光が当たれば熱せられますしなにより砲弾を撃つのですから、この摩擦熱も炸薬の加圧も全て熱として砲身を影響させかねない。
日本製鋼所で製造されているFH-70榴弾砲、製造は簡単そうに見えるのですが、FH-70の最大射程は38km、なにも誘導装置のついていない砲弾を38km先へ誤差50m以下で命中させなければなりません、京都駅から大阪駅を狙って駅舎に当てる程度の精度が最低限、要る。
特科部隊、いまの砲兵戦は既に30km以遠を狙う時代となっています、そして誤差50m以下としなければ、砲弾の威力は長径45mに有効弾片を散布するものですから、敵の火砲を狙って射撃しても撃破することができないのですね。その精度を得る為にあらゆる努力が。
榴弾砲が射撃しますと、その瞬間に衝撃波が走ります、火砲は地面に設置しているのだから衝撃波は必ず生じる、すると振動は空気中の音速以上の速度で広がり地中マイクロフォンに撃った事が即座に暴露します、砲兵部隊はこうしたマイクロフォンを幾つも設置する。
対砲レーダ装置は、この瞬間に電源が入れられ、砲弾の飛翔角度を捕捉する。砲弾は放物線を描いて飛翔しますので、弾道計算により撃った場所は数秒で露呈します。撃つ前に対砲レーダ装置を動かし続けると、今度はその強力な電波が標定され、逆に撃破されるが。
FDC火力調整所という部署が、敵の火砲や敵部隊などの情報を元に射撃目標を決定しますと、射撃命令が大隊長の決心とともに発せられ、その日の気温や風速と湿度、ここに地球の自転といった要素を差し引き、最適の炸薬量と角度が計算され、射撃準備を行います。
射撃の瞬間に位置が暴露する、だからこそ、射撃は敵から相当離れていても、効力射3発を撃った瞬間、即座に陣地変換して反撃から回避しなければなりません。停止から射撃して陣地変換まで数十秒、陣地は未だ暴露していない予備陣地か予備の予備陣地へ向かう。
大隊長決心まで、秘匿された掩砲所に待機する事もあれば、敵無人機や斥候を警戒して移動し続ける場合もありますし、もちろん、それは撃って命中させるまでの行動の一環として行う。特科部隊に高い制度が求められるものの、そのためにやる事が多いといえる。
自衛隊は特科部隊、特に野戦特科部隊を削減し続けてきたのですが、上記の通り、30km先、将来は50kmから100km先に砲弾を命中させる、そんな部隊を一朝一夕に養成することはできない、という認識を前提に、防衛政策が決められていると良いのですけれども、ね。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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