■歪な編成の航空防衛
これでは航空自衛隊と云うよりも防空自衛隊なのだよなあ、とは編成を視れば気付かされるところです。防空自衛隊と云うのは一種揶揄というものなのですが。
航空自衛隊の航空宇宙自衛隊への改称について、宇宙部隊がもともと非常に少ない自衛隊にあって改称し新任務を付与する蓋然性があるのか、そして自衛隊としては人工衛星を一つも保有しておらず、ミサイル防衛には宇宙分野は重要であるものの宇宙を射程に収めるのは海上自衛隊イージス艦のスタンダードSM-3ミサイル、という矛盾は前に説明しました。
情報収集衛星などを保有しない自衛隊は、ロシア航空宇宙軍やアメリカ宇宙軍、フランス航空宇宙軍のような、核兵器を運用するために万一核攻撃を受けた際の報復には大陸間弾道弾が飛翔する宇宙空間を監視する必要が高いために、自衛隊の場合はもともと1950年代や1960年代から宇宙監視を空軍が所管してきた軍隊とは異なるとも、説明しています。
方面隊司令部並に先ず宇宙作戦群を宇宙方面隊に格上げし指揮官を一佐から空将の補職程度の部隊まで格上げすることが、まず最初にあるべきであり、現在の宇宙作戦部隊の70名を以て、4万7000名を航空宇宙自衛隊へ改称するには時期尚早であり、まずは編成の改編を行い宇宙作戦能力を高めなければ無意味、というのが当方の視点というところなのです。
防空自衛隊への改称が先ではないか。今回考えたいのは、航空自衛隊の航空宇宙自衛隊への改称の前に、そもそも現在の航空自衛隊は航空自衛隊たりうるのは、実質は防空自衛隊に過ぎないではないのか、という論点から考えてみたいと思います。そして日本に必要なのは 防空自衛隊ではなく、航空作戦を担う自衛隊、その能力構築だ、ということも。
F-15戦闘機を主力とする航空自衛隊は、F-15戦闘機には一応レーダーと火器管制装置に弾道計算能力は付与されているものの、基本的に制空戦闘機です、対してF-16戦闘機やF/A-18戦闘攻撃機、ユーロファイター戦闘機やラファール戦闘機、ロシアのMiG-29戦闘機にSu-30戦闘機など世界で戦闘機を称する機体の大半は多用途戦闘機となっています。
MiG-31戦闘機だけは、今では珍しい防空専用戦闘機となっていましたが、これも例外といえるもので、そして付け加えれば近年、射程500kmのイスカンデル弾道ミサイルを空中発射することで射程を2000kmに延伸するキンジャール空中発射弾道ミサイルの搭載により、多用途戦闘機能力を獲得しつつあります、それほど航空自衛隊の制空戦闘機偏重は強い。
改造計画によりF-15戦闘機の一部はボーイング社の支援によりスタンドオフミサイル運用能力を付与するので対置攻撃能力を持つ、こう反論があるのかもしれません、F-15改修は当初見積もりの四倍まで費用が膨らみ、割高と却下された三菱案の倍以上となり、岸防衛大臣時代に中止されていますが、試作改修だけは行われている最中という段階にあります。
対地攻撃訓練を、それでは行っているのか。F-15戦闘機は地上目標への爆弾投下訓練はおこなっているという、しかし、それは爆弾を投下する訓練に過ぎず、悠長に高高度を飛行し爆弾を落とさせてくれる相手は地対空ミサイルを保有していない相手に限られるのですが、今の時代、陸上自衛隊や韓国軍、北朝鮮はもちろんフィリピン軍さえ持っている。
進攻訓練では亜音速で低空飛行を行い、爆撃誘導員が指示した目標に対して即座の判断で攻撃を行う、友軍を航空支援する場合は敵と接触している状況でも誤爆を行わないよう正確に命中させるのが近接航空支援、敵重要拠点への空爆には、先行して敵防空システムを空爆し無力化する防空制圧任務と併せて攻撃する、これが対地攻撃訓練というものです。
対レーダーミサイルさえ航空自衛隊は保有していません、いや安倍政権時代に電子攻撃機の導入を検討はしていましたが、2020年代において具体的な導入は訓練支援機にとどまり数も若干数のみ、これでは航空作戦は行えない、防空作戦しか行えないのです。それならば防空自衛隊として、別の航空作戦を行う専任組織が必要となるのでは、とさえ考える。
F-2戦闘機3個飛行隊が、対艦攻撃とともに近接航空支援や航空阻止を担います。F-35戦闘機、近年航空自衛隊が導入している第五世代戦闘機も能力としては多用途戦闘機であり、特にJSF統合打撃戦闘機という開発計画に依拠して進められただけに高い能力は有しているのですが、なかなかF-35部隊が近接航空支援などの訓練実施について発表がありません。
対地攻撃能力は、陸上での低空飛行訓練、付随する騒音問題や夜間飛行に関する住民対応など、一つとってめんどうな課題もあります、ただ、だからといって航空打撃力を持つ自衛隊が無い、航空自衛隊も多用途戦闘機にあたるF-2は制空戦闘機飛行隊の三分の一でしかなく対艦攻撃と兼務している、防空自衛隊へ改称するか航空打撃能力構築が必要です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
これでは航空自衛隊と云うよりも防空自衛隊なのだよなあ、とは編成を視れば気付かされるところです。防空自衛隊と云うのは一種揶揄というものなのですが。
航空自衛隊の航空宇宙自衛隊への改称について、宇宙部隊がもともと非常に少ない自衛隊にあって改称し新任務を付与する蓋然性があるのか、そして自衛隊としては人工衛星を一つも保有しておらず、ミサイル防衛には宇宙分野は重要であるものの宇宙を射程に収めるのは海上自衛隊イージス艦のスタンダードSM-3ミサイル、という矛盾は前に説明しました。
情報収集衛星などを保有しない自衛隊は、ロシア航空宇宙軍やアメリカ宇宙軍、フランス航空宇宙軍のような、核兵器を運用するために万一核攻撃を受けた際の報復には大陸間弾道弾が飛翔する宇宙空間を監視する必要が高いために、自衛隊の場合はもともと1950年代や1960年代から宇宙監視を空軍が所管してきた軍隊とは異なるとも、説明しています。
方面隊司令部並に先ず宇宙作戦群を宇宙方面隊に格上げし指揮官を一佐から空将の補職程度の部隊まで格上げすることが、まず最初にあるべきであり、現在の宇宙作戦部隊の70名を以て、4万7000名を航空宇宙自衛隊へ改称するには時期尚早であり、まずは編成の改編を行い宇宙作戦能力を高めなければ無意味、というのが当方の視点というところなのです。
防空自衛隊への改称が先ではないか。今回考えたいのは、航空自衛隊の航空宇宙自衛隊への改称の前に、そもそも現在の航空自衛隊は航空自衛隊たりうるのは、実質は防空自衛隊に過ぎないではないのか、という論点から考えてみたいと思います。そして日本に必要なのは 防空自衛隊ではなく、航空作戦を担う自衛隊、その能力構築だ、ということも。
F-15戦闘機を主力とする航空自衛隊は、F-15戦闘機には一応レーダーと火器管制装置に弾道計算能力は付与されているものの、基本的に制空戦闘機です、対してF-16戦闘機やF/A-18戦闘攻撃機、ユーロファイター戦闘機やラファール戦闘機、ロシアのMiG-29戦闘機にSu-30戦闘機など世界で戦闘機を称する機体の大半は多用途戦闘機となっています。
MiG-31戦闘機だけは、今では珍しい防空専用戦闘機となっていましたが、これも例外といえるもので、そして付け加えれば近年、射程500kmのイスカンデル弾道ミサイルを空中発射することで射程を2000kmに延伸するキンジャール空中発射弾道ミサイルの搭載により、多用途戦闘機能力を獲得しつつあります、それほど航空自衛隊の制空戦闘機偏重は強い。
改造計画によりF-15戦闘機の一部はボーイング社の支援によりスタンドオフミサイル運用能力を付与するので対置攻撃能力を持つ、こう反論があるのかもしれません、F-15改修は当初見積もりの四倍まで費用が膨らみ、割高と却下された三菱案の倍以上となり、岸防衛大臣時代に中止されていますが、試作改修だけは行われている最中という段階にあります。
対地攻撃訓練を、それでは行っているのか。F-15戦闘機は地上目標への爆弾投下訓練はおこなっているという、しかし、それは爆弾を投下する訓練に過ぎず、悠長に高高度を飛行し爆弾を落とさせてくれる相手は地対空ミサイルを保有していない相手に限られるのですが、今の時代、陸上自衛隊や韓国軍、北朝鮮はもちろんフィリピン軍さえ持っている。
進攻訓練では亜音速で低空飛行を行い、爆撃誘導員が指示した目標に対して即座の判断で攻撃を行う、友軍を航空支援する場合は敵と接触している状況でも誤爆を行わないよう正確に命中させるのが近接航空支援、敵重要拠点への空爆には、先行して敵防空システムを空爆し無力化する防空制圧任務と併せて攻撃する、これが対地攻撃訓練というものです。
対レーダーミサイルさえ航空自衛隊は保有していません、いや安倍政権時代に電子攻撃機の導入を検討はしていましたが、2020年代において具体的な導入は訓練支援機にとどまり数も若干数のみ、これでは航空作戦は行えない、防空作戦しか行えないのです。それならば防空自衛隊として、別の航空作戦を行う専任組織が必要となるのでは、とさえ考える。
F-2戦闘機3個飛行隊が、対艦攻撃とともに近接航空支援や航空阻止を担います。F-35戦闘機、近年航空自衛隊が導入している第五世代戦闘機も能力としては多用途戦闘機であり、特にJSF統合打撃戦闘機という開発計画に依拠して進められただけに高い能力は有しているのですが、なかなかF-35部隊が近接航空支援などの訓練実施について発表がありません。
対地攻撃能力は、陸上での低空飛行訓練、付随する騒音問題や夜間飛行に関する住民対応など、一つとってめんどうな課題もあります、ただ、だからといって航空打撃力を持つ自衛隊が無い、航空自衛隊も多用途戦闘機にあたるF-2は制空戦闘機飛行隊の三分の一でしかなく対艦攻撃と兼務している、防空自衛隊へ改称するか航空打撃能力構築が必要です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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(第二北大路機関: http://harunakurama.blog10.fc2.com/記事補完-投稿応答-時事備忘録をあわせてお読みください)
空自に対地戦闘能力が低いのは昔から問題とされていますが、海上で阻止するという観点に立てば、対艦ミサイル(戦闘艦相手)に加えて、誘導爆弾SDBのクイックシンクオプション(数の暴虐に備えて)を装備すべきと思います。
一方で対地攻撃は、どれだけ必要でしょうか?対中国では、防空体制を突破不能だと思うので、必要ない。あとは対北朝鮮だけですね。台湾は考える必要はありません。台湾に人民軍が上陸したとして、それに対して攻撃を加えるのは米軍であり、日本は自国の領域の防空を担うのが任務です。自衛隊機が台湾の地上戦に近接支援をするのは、政治的に極めて困難だと思います。
その意味で、トマホークや12式SSM改の長距離誘導弾を整備する、というので良いのではないでしょうか?
もし対中国を考えるのならば、那覇基地や嘉手納基地は、開戦初日に多数の長距離ミサイルで壊滅します。空自としては築城や新田原などから防空戦闘機を飛ばして、敵による「航空優勢を許さない」のが主たる任務になるかと思います。
一方で、南西諸島や奄美諸島に配備する、対空ミサイルや対艦巡航ミサイルは、非常に有効です。対空ミサイルの支配域に侵入した戦闘攻撃機の生存率はかなり低いと、歴史が証明しています。対空ミサイル側もいずれはやられるにしても、攻撃側に大きな出血を強いることがでる。こうした対空ミサイルの脅威は、安価なドローンによる索敵ですが、対艦巡航ミサイルによって、周辺の海域や島嶼を制圧し、少なくとも「安価で多数の」ドローンを使えなくさせることが重要です。(高価で少数のドローンは対空ミサイルで撃墜すればよい)
まあ、全体として、悪くない戦術かと?どうでしょうか?