■マリアナ,自衛隊初の海外派遣
日本版ハリケーンハンターというべき航空気象観測機はマリアナ沖漁船大量遭難事件の際にかなり真剣に検討されています。
マリアナ沖漁船大量遭難事件は、海上保安庁とアメリカ沿岸警備隊支援だけでは行方不明者を発見することが出来ず、なにしろ膨大な漁船の残骸の中での太平洋上の捜索、海上自衛隊P-2V対潜哨戒機が派遣されることとなりました。また蛇足ですが、このP-2V派遣は訓練派遣を除けば自衛隊創設以来初の実任務による部隊派遣、空前規模といえました。
YS-11型航空機と2000tいず型巡視船導入。海上保安庁はマリアナ沖大量遭難事件を受け、気象用ドップラーレーダーの巨大なレドームを備えた当時最大の大型巡視船2隻を新造するとともに、広範囲の捜索救難を支援できるYS-11を導入しています。なお、いず型は気象観測を任務としていますがYS-11は目視天候偵察以外気象観測は任務とはしていません。
台風観測機、実は1959年伊勢湾台風の際に検討されたのですが1964年の富士山レーダーによる富士山測候所の建設により、富士山から800km範囲の台風を気象レーダーにより観測できる体制が完成した為、専用の台風観測機は不要、と結論付けられました。しかし、マリアナ沖漁船大量遭難事件が、改めて台風観測機の必要性を痛感させる出来事となった。
WB-50観測機、アメリカ空軍ではB-50爆撃機の気象観測型であるために区分はWB-50も爆撃機に区分されていたようですが、気象庁では1960年代初頭、数機程度を自衛隊が運用し、気象庁観測要員が同乗して観測するというものでした。また当時アメリカはWB-50の後継機としてWB-47を運用中、こちらはジェット機であり、こちらも一応検討されている。
WB-47,これはB-47戦略爆撃機の派生型であり、航続距離もエンジン出力も十分あり、台風の中央を突破した場合でも安全性を高く確保できるというものでした。もちろん実現していません、WB-50は外見がどうみても成層圏の悪魔ことB-29そのものですが、気象庁が導入を検討したのは1960年代初頭、小笠原返還前であったため、航続距離が必要でした。
防衛庁が検討の結果、予算上非現実的である、として実現していません。WB-50やWB-47を自衛隊が導入する場合、一定の数が必要となります。ただ、元は爆撃機、中古であったとしてどの程度アメリカからの供与があり得たのかは未知数ですが1960年代初頭といえばF-104戦闘機導入が始まったばかり、予算面でもそれほど余裕があったわけではありません。
WB-50導入が検討されたのは自衛隊草創期、この自衛隊草創期というのは巨大台風被害が際だって多く、1947年カスリーン台風は利根川の堤防が破壊され死者行方不明者1930名、1951年ルース台風では鹿児島を中心に死者行方不明者943名、1954年洞爺丸台風では多数の連絡船が転覆沈没するなど死者行方不明者1781名、青函航路は事実上壊滅しています。
令和時代に話題となりましたが、1958年狩野川台風は静岡を直撃し昨年の台風19号はその再来と警戒された規模で死者行方不明者1269名、1959年伊勢湾台風は死者5098名と阪神大震災まで戦後最大の災害でした。1961年第二室戸台風は中心気圧888hPsと日本上陸台風としては最強で死者202名を出し、負傷者が4972名と際だって多いことも特色でした。
ハリケーンハンター、日本でいう台風観測機、注意しなければならないのは台風観測機が必要とされていた時代には気象衛星が無い為、台風が接近しているかどうかはアメリカ軍の台風観測機に依存し、この他には気象観測船が概要を遊弋し、不穏な気圧変化等から台風の接近を予報していたもので、台風上陸24時間前までに発見する事が任務だったのです。
現代のハリケーンハンターは、台風が存在するかどうかは気象衛星がいち早く発見します、しかしその正確な観測と進路の予報に必要な、より精密な情報収集を行うのが、航空機、という。具体的に例えるならば、防衛安全保障において偵察衛星が発見した興味深い事象に対して偵察機を派遣して詳細を把握する、というような理解がただしいのでしょうか。
C-2輸送機の配備数にもう少し色を付けることはできないか、タイフーンハンターとして考えるのはC-2の一部をWC-2として天候観測任務に充てる事です。気象庁の観測なのだから気象庁が配備し運用すべきではないか、自衛隊の任務は天気予報ではない、こう、ハリケーンハンターの日本版タイフーンハンターを構築する場合反論はあり得るでしょう。
しかし、自衛隊であるべき、と考える背景には幾つか論拠があります。一つは気象庁はチャーター機を飛行させることは、予算さえ付けば可能でしょう。実際にガルフストリームⅣをチャーターする研究はありました、しかし、官庁の業務命令と軍隊の命令は生殺与奪を含むかで、軍事機構と行政機構の間に大きな隔たりがあります、ここが重要です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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日本版ハリケーンハンターというべき航空気象観測機はマリアナ沖漁船大量遭難事件の際にかなり真剣に検討されています。
マリアナ沖漁船大量遭難事件は、海上保安庁とアメリカ沿岸警備隊支援だけでは行方不明者を発見することが出来ず、なにしろ膨大な漁船の残骸の中での太平洋上の捜索、海上自衛隊P-2V対潜哨戒機が派遣されることとなりました。また蛇足ですが、このP-2V派遣は訓練派遣を除けば自衛隊創設以来初の実任務による部隊派遣、空前規模といえました。
YS-11型航空機と2000tいず型巡視船導入。海上保安庁はマリアナ沖大量遭難事件を受け、気象用ドップラーレーダーの巨大なレドームを備えた当時最大の大型巡視船2隻を新造するとともに、広範囲の捜索救難を支援できるYS-11を導入しています。なお、いず型は気象観測を任務としていますがYS-11は目視天候偵察以外気象観測は任務とはしていません。
台風観測機、実は1959年伊勢湾台風の際に検討されたのですが1964年の富士山レーダーによる富士山測候所の建設により、富士山から800km範囲の台風を気象レーダーにより観測できる体制が完成した為、専用の台風観測機は不要、と結論付けられました。しかし、マリアナ沖漁船大量遭難事件が、改めて台風観測機の必要性を痛感させる出来事となった。
WB-50観測機、アメリカ空軍ではB-50爆撃機の気象観測型であるために区分はWB-50も爆撃機に区分されていたようですが、気象庁では1960年代初頭、数機程度を自衛隊が運用し、気象庁観測要員が同乗して観測するというものでした。また当時アメリカはWB-50の後継機としてWB-47を運用中、こちらはジェット機であり、こちらも一応検討されている。
WB-47,これはB-47戦略爆撃機の派生型であり、航続距離もエンジン出力も十分あり、台風の中央を突破した場合でも安全性を高く確保できるというものでした。もちろん実現していません、WB-50は外見がどうみても成層圏の悪魔ことB-29そのものですが、気象庁が導入を検討したのは1960年代初頭、小笠原返還前であったため、航続距離が必要でした。
防衛庁が検討の結果、予算上非現実的である、として実現していません。WB-50やWB-47を自衛隊が導入する場合、一定の数が必要となります。ただ、元は爆撃機、中古であったとしてどの程度アメリカからの供与があり得たのかは未知数ですが1960年代初頭といえばF-104戦闘機導入が始まったばかり、予算面でもそれほど余裕があったわけではありません。
WB-50導入が検討されたのは自衛隊草創期、この自衛隊草創期というのは巨大台風被害が際だって多く、1947年カスリーン台風は利根川の堤防が破壊され死者行方不明者1930名、1951年ルース台風では鹿児島を中心に死者行方不明者943名、1954年洞爺丸台風では多数の連絡船が転覆沈没するなど死者行方不明者1781名、青函航路は事実上壊滅しています。
令和時代に話題となりましたが、1958年狩野川台風は静岡を直撃し昨年の台風19号はその再来と警戒された規模で死者行方不明者1269名、1959年伊勢湾台風は死者5098名と阪神大震災まで戦後最大の災害でした。1961年第二室戸台風は中心気圧888hPsと日本上陸台風としては最強で死者202名を出し、負傷者が4972名と際だって多いことも特色でした。
ハリケーンハンター、日本でいう台風観測機、注意しなければならないのは台風観測機が必要とされていた時代には気象衛星が無い為、台風が接近しているかどうかはアメリカ軍の台風観測機に依存し、この他には気象観測船が概要を遊弋し、不穏な気圧変化等から台風の接近を予報していたもので、台風上陸24時間前までに発見する事が任務だったのです。
現代のハリケーンハンターは、台風が存在するかどうかは気象衛星がいち早く発見します、しかしその正確な観測と進路の予報に必要な、より精密な情報収集を行うのが、航空機、という。具体的に例えるならば、防衛安全保障において偵察衛星が発見した興味深い事象に対して偵察機を派遣して詳細を把握する、というような理解がただしいのでしょうか。
C-2輸送機の配備数にもう少し色を付けることはできないか、タイフーンハンターとして考えるのはC-2の一部をWC-2として天候観測任務に充てる事です。気象庁の観測なのだから気象庁が配備し運用すべきではないか、自衛隊の任務は天気予報ではない、こう、ハリケーンハンターの日本版タイフーンハンターを構築する場合反論はあり得るでしょう。
しかし、自衛隊であるべき、と考える背景には幾つか論拠があります。一つは気象庁はチャーター機を飛行させることは、予算さえ付けば可能でしょう。実際にガルフストリームⅣをチャーターする研究はありました、しかし、官庁の業務命令と軍隊の命令は生殺与奪を含むかで、軍事機構と行政機構の間に大きな隔たりがあります、ここが重要です。
北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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