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検証:防衛予算-令和五年概算要求【1】8月31日公開-事項要求と過去最大となる5兆5947億円の要求額

2022-09-01 07:00:17 | 国際・政治
■速報-概算要求公表
 防衛省は8月31日、過去最大となる5兆5947億円の要求額を盛り込んだ来年度予算案の概算要求を公開しました。

 概算要求は年末にかけて財務省との予算折衝を経て年度末までの閣議決定を経て国会において予算、という法律として成立させられるものです。ただ、ロシアのウクライナ侵攻、そしてロシアへの経済制裁の実施と、経済制裁に反発しての核兵器による世界への恫喝という文字通りの非常事態を受け、近年の防衛予算と比較し幾つかの特異な点があります。

 事項要求。防衛予算では総額で兆円単位でありながら従来は万円単位まで細分化された個々の要求が積算し防衛予算概算要求を形成していました。しかし、来年度予算では事項要求として防衛事業を明示し、しかしその防衛事業の具現化に関わる予算については多年度で集成する事業であるとして個々の明確な予算ではなく方針を示すものが盛り込まれた。

 スタンドオフ防衛力、総合ミサイル防衛力。無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力、指揮統制情報関連機能、機動展開能力、持続性強靭性、こうしたものが今後五年間で抜本的に強化する防衛力、以上が事項要求として示される事となりました。スタンドオフ防衛能力とは射程が長く近年射程延伸が進む敵防空システムの圏外から叩ける能力を示す。

 無人機の大量取得等が示された無人アセット防衛能力や、陸上配備型ミサイル防衛システムの代替となるミサイル防衛専用艦の概括など盛り込まれています。ただ、注目すべき点には無人機など正面装備もさることながら、持続性強靭性、装備品の稼働率や予備部品の維持、そしておそらくは国内防衛産業の維持という側面が装備稼働率を通じ示されたもの。

 過去最大。しかし忘れてはならないのは、過去最大の予算であっても、2000年代初頭から棚上げされ続けた防衛事業、例えば練習機の問題やヘリコプターの問題、そして防衛産業が持続できないまま少数生産を延々と継続し、少なくなった装備を補う為に別の代替装備を調達するべく種類だけが多様化し一つ一つの量産数が更に圧縮、悪循環は続いている。

 ミサイル防衛や島嶼部防衛など新しい防衛事業を防衛予算の総額そのままに20年以上継続した為にしわ寄せは防衛破綻という様相を帯びており、事項要求という方策を用いつつも、しかししわ寄せを、防衛政策の見直しにより例えば災害派遣等の任務を別組織に移管するというような決断でもおこなわない限り、厳しい状況は続きます。要求を概観した上でこのように感じました。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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