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【京都幕間旅情】上賀茂神社(賀茂別雷神社) 山城国風土記-皇后媛蹈鞴五十鈴媛命実母玉依日子と玉依日売の神話

2022-05-18 20:00:48 | 写真
■京都最古の社殿その歴史
 春迎えた桜の季節のその終りに撮影しました社殿の様子ですので桜花も爛漫過ぎ散り際のある種は妖艶な彩り醸す情景です。

 賀茂別雷神社、ここ上賀茂神社は京都最古、天武天皇6年こと西暦677年創建とされる神社ですが、謂れを紐解きますと、山城国風土記にも遡ります。ただ、この一帯には賀茂氏という山城国葛野郡と愛宕郡を治めた豪族の氏神神社でもあるのですが、歴史に残るのは7世紀から。

 山城国風土記では、祭神として祀られています賀茂建角身命はここから北、丹波国神野の伝承に遡りまして、鴨建角身命の子、玉依日子と玉依日売の話から始まります。ある日に玉依日売が当地に在ります石河瀬見小川を散策していますと、ふと珍しいものを拾います。

 神山、こうやまの当たりの小川が舞台となっていまして此処は神社の神域となっており、柊野にあります標高301.5mの山です、元々地名は、かもやま、とまあ賀茂を冠していました。神社を代表する風景に立砂がありますが、並ぶ二つの立砂は神山を模したものという。

 丹塗矢、いまでいう破魔矢のようなものが上流から流れてきたというのですね。玉依日売は思わず拾いますと持ち帰り、飾っておきましたらばなんと妹の玉依日売が妊娠して子を生んでしまったという。変なものを拾ってはならないという説話の様にも思えるのですが。

 玉依日売を妊娠させた丹塗矢というものは、火雷大神、ほのいかづちのおおかみの化身であったといいまして、ギリシャ神話でもゼウスさんが良くやる手だったのですね。懐妊を知った際に丹塗矢が光りながら天に還って行ったことで神の化身であると知ったという。

 鴨建角身命というのは伝承では八咫烏の化身でもあるといいまして、神武天皇を当地に、といっても天孫降臨の地は高千穂、今の宮崎県ですので若干新幹線と九州横断特急の無い時代には無理がある距離ですが、神武天皇を日本に導いた伝説の鳥さんでもあるのですね。

 賀茂建角身命とは鴨建角身命の別名ですので、まあ流れとしては子供になるといえますので賀茂別雷命と名付けられ、賀茂氏一族がこの出来事を奉斎した事が、神社の始まり。なお、賀茂建角身命が祀られていますのが下鴨神社で、ここから歩いて葵祭半分の距離です。

 玉依日売は玉櫛媛ともいい、この名は初代皇后の媛蹈鞴五十鈴媛命の実母という神話上の伝承となっています。山城国風土記という伝承ですので、神武天皇と媛蹈鞴五十鈴媛命の伝説は全国津々浦々にありますが、当地上賀茂神社が平安京遷都のあと、意味を持ちます。

 媛蹈鞴五十鈴媛命と繋がる神話上の人物、その生誕に所縁ある神域ということで、上賀茂神社は平安遷都ののちに、皇城守護という位置づけを持つと、更に大きな意味を持つようになります、それは平安時代初期かた鎌倉時代初期まで斎院が設置されたからなのですね。

 伊勢神宮の斎宮、未婚の皇女を占いにより選び神に奉仕させる制度はもともと朝廷の戦勝祈願に際し時の帝が、戦勝成れば皇女を差し出すという少々無理な祈願が通った為の制度なのですが、潔斉という宮中を出て斎院にて禊を済ませた後に伊勢神宮へ赴いていたもの。

 斎宮を上賀茂神社へ置いた事で、皇城守護の意味を持つ上賀茂神社はそのままその祈祷所に直結する、伊勢神宮への入り口といえる社殿となった歴史があります。そしてその群行という斎王を送る行列がそのまま葵祭を形成してゆくという、まさに国家行事なのでした。

 斎王、鎌倉初期には制度としてなくなりますのは、皇城鎮護は正に征夷大将軍の責務となるわけでして、勿論祈るだけで平和が勝ち取れるという考えは恰も現行憲法九条のようですけれど、こうした考え方の根底を、この社殿からもなにか感じられるようで、興味深い。

北大路機関:はるな くらま ひゅうが いせ
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