◆元ヘリコプター護衛艦はるな
4月4日。北朝鮮の長距離弾道ミサイルを用いた人工衛星実験実施への緊張が迫る中、舞鶴基地は予定通り一般公開されているとのことで久し振りに舞鶴基地へ行ってみた。
舞鶴基地沖、フェリー埠頭として知られる前島埠頭に、元ヘリコプター護衛艦はるな、はブイ係留されていた。ここは舞鶴警備隊本部からすぐの場所で、護衛艦が隣の北吸桟橋から日本海へ向かう途上必ず目にする位置で、すぐ近くには、舞鶴航空基地があり、日本海の守りの要として活躍し、海上自衛隊最初のヘリコプター搭載護衛艦はるな、が除籍後係留される場所としては、最適の場所である。
能登半島沖北朝鮮工作船侵入事案、海上自衛隊最初の海上警備行動命令が発令されたあの夜から、今年の3月20日で10年が経った。5インチ砲による威嚇射撃には、北朝鮮は余程恐ろしい思いをしたのか、工作船の侵入は日本海側では見られなくなり、日本海は平穏であったのだが、はるな除籍と時を合わせるかのように弾道ミサイルを用いた人工衛星発射の準備を開始、再び環日本海の情勢は緊迫化しつつあった。
北朝鮮による長距離ミサイルによる人工衛星発射試験の実施が間近に迫る昨日の4月4日、当方は、久しぶりに舞鶴基地に行くこととした。久し振りに友人と会うべく駒門に行こうと思えばまさかの中止。しかし、舞鶴基地は一般公開しているということなので、ミサイル実験を前に、海上自衛隊は?という興味もあり、始発の普通電車で東舞鶴に向かった。北吸桟橋には、補給艦ましゅう、掃海艇ながしま、護衛艦あまぎり、護衛艦はまゆき、が停泊している。
掃海艇ながしま、に搭載されていたS-7機雷処分具。水中カメラで機雷を発見して処分するために一種のロボット。顔は描かないのですか?と乗員の方に聞いてみると、あれは阪神基地隊だけです、と答えられた。ながしま、は、うわじま型掃海艇の一隻で、舞鶴地方隊第44掃海隊に所属している。普段は掃海艇桟橋に停泊している。すがしま型以前の掃海艇は、掃海具を普段は陸上に保管しているので掃海具、ながしま、は待機態勢にあることを意味する。
護衛艦あまぎり、搭載艇として7.9メートル内火艇が搭載されている場所に、黒いゾディアック社製の複合艇が搭載されていた。調べてみると、昨年あたりから、一部の、あさぎり型護衛艦に、この大型ボートの搭載が搭載されているようで、瀬戸大橋開通20周年行事に参加した、さわぎり、にも同じボートが搭載されていたとのこと。
護衛艦はまゆき。出航準備を行っていた。見学は1130時からです・・・、出航しなければね。こういう話だったのだが、1100時から北朝鮮の弾道ミサイルが発射されるかもしれない状況、満載排水量4000㌧の、はまゆき、ガスタービンは運転を始めており、潤滑油が燃焼し薄い白煙が昇っていた。とうとう始まったか!?という状況。
舞鶴基地の週末一般公開、北吸桟橋への入口を入ったところに、停泊艦艇一覧、が提示されているのだけれども、第2ミサイル艇隊のミサイル艇はやぶさ、うみたか、停泊していると表示されていたのが、見えない。ステルス性を高めて透明になった訳では決してなく、出航しているようだ。産経新聞に、ミサイル艇は弾道ミサイルによる人工衛星発射試験により北朝鮮海軍の動きが活性化することを警戒して新潟沖に派遣する、という話があったのを思い出した。
舞鶴みなと巡り観光船に乗るべく、舞鶴基地をあとにして三条桟橋へ。土曜日曜限定で1130時と1230時から運行されており、料金は1000円。舞鶴基地から三条桟橋まで、早歩きで20分弱。桟橋で切符を買い乗りこむと出航。造船所にて整備を受ける、イージス艦あたご。満載排水量10000㌧、世界有数の大型水上戦闘艦だ。
護衛艦すずなみ。後述する補給艦ましゅう、と共に韓国建国60周年国際観艦式に参加した護衛艦。満載排水量6300㌧、5隻の、たかなみ型は、9隻が建造された、むらさめ型の改良型で、今日の護衛艦隊の主力を構成する護衛艦だ。続いて建造される次期護衛艦19DDも、たかなみ型の設計を一部活かした設計になるようだ。
あさぎり型護衛艦あまぎり。満載排水量4800㌧、対空対艦対潜装備をバランスよく装備しているほか、ヘリコプター格納庫は1機のヘリと緊急時にはもう一機を収容することが可能、二本のマストが勇ましい艦容を誇っている。ちなみに基地で見たゾディアック社製の高速複合艇は、一隻のみのようで、左舷には、普通の内火艇を搭載していた。
舞鶴基地最大の自衛艦、補給艦ましゅう。海上自衛隊の任務増大に対応して満載排水量は25000㌧に達し、ヘリコプター護衛艦ひゅうが、よりも大きい。全長221㍍、幅は27㍍に達する、このため、北吸桟橋では、18㍉広角レンズでも収まらないので、港めぐり船から撮影したのだが、それにしても大きい。なお、海上自衛隊は、太平洋のみならずインド洋からアラビア海にまで広がっており、補給艦は、現在の5隻よりも、もっと数が必要なのではないかな、と思う次第。
出航準備をしていた護衛艦はまゆき、は、一般公開を始めていたようだ。さて、舞鶴みなと巡り遊覧船は、舞鶴基地北吸桟橋を海上から見学して、いよいよ三条埠頭に戻るところで、元ヘリコプター護衛艦はるな、に近づく。舞鶴の旗艦、というべき護衛艦はるな、は自衛艦旗を返納してのち、ここに係留されている。
はるな艦上、ヘリコプターが飛行していた甲板の上を、いまは海鳥たちが舞っている。満載排水量6800㌧の、はるな、は除籍されてなお、海上にみせる威容だけは現役から除籍へとは換わらず力強い。艦首は日本海へ向けられており、無言の圧力を日本の平和的生存権に対して挑戦する勢力へ掛けている。
元護衛艦はるな、はこのようなかたちで係留、いや停泊している。残念ながら、はるな、は保存されずスクラップとなるようだが、ヘリコプター護衛艦ひゅうが、が舞鶴に寄港することがあれば、はるな、ひゅうが、という二隻の護衛艦が昨年8月の横須賀沖以来の対面を果たすこともあるかもしれない。
北朝鮮の弾道ミサイルを用いた試験について一つ。93年にノドンミサイルが日本海に向けて試験された際には、米軍から数日後に通知されるまで気づかなかった日本は、1998年のテポドンミサイル試験の際に、イージス艦みょうこう、が追尾に成功した。2006年の試験の際にはFPS-5試作機とイージス艦が待機態勢に入った。今回の試験では、SM-3とPAC-3が万一に備えて展開した。技術の進歩は凄いものだ。次の試験のときにはAIRBOSSで弾道ミサイルの映像を記録するかもしれないし、そのころにはTHAADを航空自衛隊が装備を計画しているかもしれない。対して、北朝鮮は、前回1998年の失敗した人工衛星発射の際に行おうとしたように、宇宙から人工衛星で以て、将軍様を讃える歌、というのを流す計画であったらしい。弾道ミサイルの脅威へ、冷静に迎撃手段を整備し、世界的にも最も高い密度でミサイル防衛網を整備し、昨日までの平和を明日へ受け継ごうとする日本に対して、対照的な印象があると考えた次第。
しかし、如何に脅威が高まろうとも、日本の総意に支えられた舞鶴基地、“はるな”の任務を引き継ぐ護衛艦を始めとした精鋭が任務を続ける限り、安泰だ。
HARUNA
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