北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

日米同盟を考える: 航空自衛隊 次期主力戦闘機(F-X)候補 ?

2009-04-01 23:45:43 | 防衛・安全保障

◆本日から新年度

 2009年度、本日から新年度です。本年度もWeblog北大路機関をよろしくお願いいたします。また、予備ブログとして独自の道を歩む第二北大路機関[http://harunakurama.blog10.fc2.com/]の方も、よろしければどうぞ。

Img_8490  さてさて、四月一日ということで、真面目な記事を書いても多分受け止められず、AFP通信が博物館のジョークネタを真に受けてパリ航空ショーでコンコルド復活イベント、と素で誤報を出してしまったりという今日この頃。北朝鮮の弾道ミサイル試験に併せて自衛隊が警戒態勢に入ったということで、四月上旬の自衛隊関連行事も大幅に中止などの措置が取られているとのことながらも、こちらは北大路機関広報として、明日か明後日あたりに掲載したい。それでは何を、と考えたのだが、次期戦闘機選定について、ここは少し、夢のようなことを書いてみたい。

Img_8482  次期戦闘機選定(F-X選定)であるが、無理を承知で、F-14Jというものは考えられないか。ライセンス生産を前提として生産基盤を引くのであれば、既にグラマンの生産終了という点は、そこまで大きなマイナス面とはならない。ただし、ブラックボックス部品などについては、輸入に頼るため、この一点を生産再開する場合、大きな問題となるだろう。他方で、生産再開が全く不可能かと問われれば、F-22の航空自衛隊導入よりも、現実的な提案ではないのかな、ともいえる。F-14であれば、広範囲を警戒することができるAN/APG-71レーダーが搭載されており、少数機による広大な空域の制空戦闘を実施するという航空自衛隊の運用と合致している。最大射程140kmのAIM-54フェニックス空対空ミサイルを搭載するF-14は、200km以上もの距離を索敵可能なレーダーから情報を得てFCSは、24目標を追尾、この中から脅威度の高い6目標を自動的に選択してフェニックスにより同時攻撃することが可能だ。

Img_8602  F-14Dは、F-14Aと比べて、新型エンジンを採用したことで航続距離が増大しており、基地(米海軍の場合は空母)から560km先の空域で90分の戦闘空中哨戒が可能、A型の50分よりも大きく増大している。560kmといえば、宮城県の松島基地から北海道中部上空の距離にあたる。加えて、コンピュータは全てデジタル化されたものが採用されているため、近代化改修が容易となっているのも挙げられる。付け加えるならば、GPSと連動した赤外線航法・目標指示装置LANTIRNを搭載することができ、対地攻撃任務にも対応している。この改修型は、爆撃能力を有するトムキャットということで、ボムキャットという愛称がある。

Img_8492  F-14は、可変翼を採用したことにより仮にF-22と模擬空中戦となっても有視界戦闘であれば機動性などで対処できる可能性がある。また、エンジンがF-110を採用しているため、F-2支援戦闘機との互換性も生じてくる。また、変な話、航空祭では、F-14はF-22に対抗し得る容姿を誇る。これはどうでも好さそうなことではあるが、重要なことだ。

 なぜ、次期戦闘機がF-14である必要があるのかについて、視点を供したい。まず第一に、航空自衛隊がF-15Jを導入した際のF-15のポテンシャルと、今日のF/A-18EやF-15FX、そしてEF2000タイフーンが有するポテンシャルとの相違について、注目してみるとわかる。F-15が導入された際、F-15Cは世界最高性能の制空戦闘機であると同時に世界でも最も高価な航空機と言われており、導入できた国も、アメリカ空軍の制空戦闘機として導入されたものの、調達費用と運用の相違からNATO諸国には普及しなかった。

Img_8485  アメリカ以外でF-15を導入できたのは、航空自衛隊のほかには産油国のサウジアラビア、アメリカともっとも密接に結びついた同盟国とされるイスラエルが導入できたのみでだ。ライセンス生産を行うことができたのは、日本のみであった。ライセンス生産を行うということは、生産基盤を国内に有しているため、稼働率を高く維持させる上で必要な措置であった。同時に一機当たりの調達単価は、航空自衛隊所要分のみしか生産しないため量産効果が高まらず、高騰に直結するものの、F-15のライセンス生産は当時の日本の経済力からすれば、なんとか為し得る装備品の整備であった。

Img_8601  同時に、F-15は、性能について、不確定要素があったということも挙げられる。導入できる国が限られており、その能力は米空軍やイスラエル空軍が運用する実戦データ以外では稀有であり、その実戦における性能は高く評価されていた。高価高性能で、日本とアメリカくらいでしか生産できない機体であったのだ。航空自衛隊が前のF-X選定に際して、世界に広く普及するF-16を導入していた場合、今日、F-15を運用する航空自衛隊のようなポテンシャルを維持できたか、と問われれば、疑問符が付くのではないか。

Img_8597  さて、F-15FXのもととなったF-15Eをみれば、アメリカ空軍とイスラエル空軍(F-15I)、サウジアラビア空軍(F-15S)に加えて、韓国空軍(F-15K)として採用され、シンガポール空軍でも採用の動きがある。場合によっては、採用国が増加する可能性もあり、F-15は、比較的普及する航空機となり得る。これは、電子戦データや機動性、運用特性などが第三国に露呈する可能性の窓口が増加していることを何よりも意味し、F-15Jを導入した時のような、能力の秘匿性から生じる敵対勢力への不確定要素というものが、低下している。F/A-18Eにしても、スペイン空軍やオーストラリア空軍など採用する国があり、EF2000タイフーンについても、欧州共通戦闘機というかたちで、普及する戦闘機であるので、この点、F-15Jのようなポテンシャルは有していない。しかし、F-14であれば、少なくとも、アメリカでは生産終了しているので、国内でライセンス生産を行えば、日本以外の国がF-14を採用する可能性は無い。

Img_8604  F-4とF-15とを比較した場合、F-4はベストセラー機として普及していたではないか、それならば、F-4後継機にも、何故F-15FXやF/A-18Eに難色を示すのか、と問われるかもしれない。これにも応える必要があろう。F-4が導入された当時は、極東ソ連に配備された戦闘機はSu-15やMiG-19などが多く、隣国にもF-5など、軽戦闘機や旧式戦闘機が多く、今日、周辺諸国がSu-30やMiG-31、F-15Eなどを運用していることを考えれば、当時と今日の周辺情勢が大きく変わっている、ということが挙げられる。また、脅威対象が多様化しており、より高いポテンシャルの機体が求められる、ともいえよう。

Img_8484  F-14について、ところで、やたら古い戦闘機を提案している、と思われるかもしれないが、実のところ、新型、しかし高性能高価であるものの、空戦性能に特化しすぎ、冷戦後の運用に適合しないとして少数導入にとどまったF-14Dは、古い機体ではない。F-14Dであれば、導入開始は1990年。基本設計は古いものの、これはF-15やF/A-18にも当てはまることである。レーダーについては、今日的には陳腐化している部分が挙げられるものの、近代化できる要素は大きい。レーダーの近代化というのも、レーダーの搭載ができるか否かは、機体の大きさ、特に機首の容積に左右されるものだから、F-14はもともと、大型の戦闘機であり近代化改修を行うにも、それを受け入れるだけの余裕がある。

Img_8605  ただし、F-14について、幾つかの制約点はある。調達価格、そして可変翼を採用しているため整備などの運用コストが大きい、ということはもちろんだが、もうひとつ、F-14最大の特色といえた最大射程140kmのAIM-54フェニックス空対空ミサイルであるが、今日的には、大型の空対空ミサイルであり、機動性は新鋭ミサイルと比べると劣る。F-14の200km以上もの距離を索敵可能なレーダーから情報を得てFCSは、24目標を同時に追尾し、脅威度の高い6目標を自動的に選択、フェニックスにより同時攻撃する、という戦法は、ミサイルの更新を含め新しく開発する必要はある。ただし、F-14は米軍からすれば過去の機体であり、もちろん、F-14を運用するイランに情報が漏れないように、という要求のような制約はあるものの、導入するとなればライセンス生産が前提となるので、航空自衛隊がF-15Jをもとに近代化改修を行ったような、独自の改修は可能であろう。

 F-14Dを元にしたF-14Jの導入は、このように書いたものの、F-4EJ改の後継機としてあてる場合のF-22の導入と同じくらい、難しいことは確かである。しかし、導入できる戦闘機の上限が防衛大綱により定められている航空自衛隊は、限られた少ない戦闘機により、広大な日本列島の隅々まで、防空体制を確保しなければならない。性能や、抑止力水準からみた場合、F-14Jは、魅力的とも思えるのだが。4月1日ならではの、F-X候補、として本論を締めくくりたい。

HARUNA

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コメント (22)
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