◆P-3Cジプチ派遣
4月17日、浜田防衛大臣は、ソマリア沖海賊事案に対して、護衛艦に加え航空機部隊を派遣する準備を指示した。
ソマリア沖に派遣されるのは、海上自衛隊のP-3C哨戒機2機で、アフリカのジプチを拠点として洋上哨戒を行い、海賊などの不審船舶の情報を海上警備行動にあたる護衛艦や各国艦艇に伝達する任務にあたる。P-3Cは対潜哨戒機として海上自衛隊に100機が導入され、日本のシーレーンに対する潜水艦の脅威に備えるとともに、東シナ海などにおいて洋上哨戒任務にもあたっている。
海上自衛隊の哨戒機が実任務のために海外派遣される事例は、1965年10月のマリアナ沖漁船大量遭難事件に際しての災害派遣任務へ、P-2V哨戒機10機が艦艇とともに派遣された事例などがあるが、海賊対策という海上警備行動任務での哨戒機の海外派遣は、今回が初めてとなる。
P-3C哨戒機による警戒監視任務は、5月下旬に人員や機材などを派遣、洋上哨戒任務は、6月から実施される計画となっており、一機で四国と同面積の海域を哨戒することが可能なP-3Cへの期待は大きい。今回のソマリア沖派遣は、拠点となるジプチ共和国と日本との間で、航空自衛隊が物資輸送などの面で支援にあたるとのことだ。
また、今回の任務では、陸上自衛隊も基地警備任務などで支援を行うとのことで、陸海空自衛隊三自衛隊の協同任務となる。派遣部隊は150名規模となる見込み。ソマリア沖海賊事案は、収束の見通しが全く立っておらず、海賊行為の行われる範囲も、海賊行為により掠奪した身代金などにより広域化し、母船もこれまで見られないほどの沖合まで進出している。
海賊は、無政府状態となったソマリアを拠点としており、海賊を取り締まる機関がソマリアに機能していないことから、各国は逮捕した海賊を隣国のケニアなどに引き渡している。一方、海賊は、ソマリア沖に海賊対策のために派遣されている海軍艦艇の隙を突いたかたちで、警備の手薄な海域で活動しており、今月に入ってからはほぼ毎日1隻が被害にあっているという状況だ。
既に海上自衛隊は、音響妨害装置などを用いて三度、商船などに接近する目標を撃退している。哨戒機の派遣により、洋上の情報収集はより高度かつ精密に行うことができるが、他方で、現状の護衛艦2隻、そして今回加わる哨戒機2機では、充分かと問われれば、この海域を交通する船舶の数から考えても疑問であり、他方、海上自衛隊の艦艇や航空機数では、遠いアフリカ沖に派遣するには、限界がある。
ソマリア沖海賊事案を、根底から解決するには、国際平和維持活動による政府再建などが必要となる。しかし、ソマリアにおける国際平和維持活動は、1992年のUNOSOM2を筆頭に過去、大きな犠牲者を出した事例があり、一つの鬼門となっていることも事実だ。ソマリア沖海賊対処事案を、どういった形で解決するべきか、これはいずれ政治の問題として問われることにもなろう。
HARUNA
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