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陸上自衛隊 春日井駐屯地創設42周年記念行事 装備品展示

2009-04-07 13:20:43 | 陸上自衛隊 駐屯地祭

◆春日井駐屯地祭[2009.03.08]

 五回にわたってお伝えした春日井駐屯地祭2009詳報も、今回が最終回。今回は、装備品展示の様子をお伝えしたい。偵察隊、施設大隊、後方支援連隊と多種多様な装備が展示されていた。

Img_3495  第10偵察隊の82式指揮通信車。特科中隊の指揮通信に用いる装輪装甲車として開発、その後、普通科連隊の本部管理中隊などにも配備が進んだ。重量13.6㌧、乗員は8名。232両が配備された。近年では、無線通信のみの指揮通信能力では、戦闘指揮には不十分ではないか、という声もあり、後継装備の開発が進められている。

Img_3251  今回目を引いたのは、この82式には、本来12.7㍉重機関銃M2と、62式7.62㍉機銃が搭載されていたのだが、今回は、62式機銃に代えて、信頼性が高いとされる新型の5.56㍉機銃MINIMIが搭載されていたということ。また、車体には国際貢献任務への対応か、冷房装置が取り付けられていた。

Img_3492  今回の春日井駐屯地祭は、装備品展示会場を数多く設けて、スタンプラリーを行う、という家族連れを意識した会場配置となっていた。写真は、偵察隊と施設大隊の装備品展示会場。手前には掩体掘削車、その陰に87式偵察警戒車、発煙機3型搭載の高機動車、82式指揮通信車などが並んでいる。

Img_3275  75式装甲ドーザー。最前線で、塹壕を埋めたり、戦車の機動に障害となる地隙を埋めるなど第一線での運用を考え主要部分が装甲化されている。車体規模は中型ブルドーザーと同規模だが装甲化されているので、重量は19.2㌧。第371施設中隊と書かれているので、豊川駐屯地の第6施設群に所属の車両だ。

Img_3209  野外洗濯セット2型。1型は、如何にも自衛隊装備という形で、洗濯槽と脱水槽そして乾燥機が別々になっていたものだったが、2型は民生品を多用しており、コンテナ型シェルターに家庭用全自動洗濯機が配置されているというものとなった。毎時40着の戦闘服を洗濯する性能を有する。

Img_3219  72式対戦車地雷。もちろんこれは演習地雷で爆発はしない。かなりの重量であるが、車両が踏むと高熱ジェットが真上に噴き上がり、装甲を溶かして浸徹、戦車に対しても大きな打撃を加えることができる。簡単に除去できないよう、管制地雷を用いた対人障害システムと併せて運用する。ただし、対戦車地雷は重く、これを一定密度で敷設するのはかなりの重労働だ。

Img_3226  83式地雷敷設装置は、トラックや装甲車で牽引して、重い対戦車地雷を毎時300発の割合で敷設する装備。地雷処理装置の開発でも有名な日立建機が製造しており、トラックの荷台から83式地雷敷設装置に地雷を人力で落としこむと、鋤型で掘り広げた地面に地雷を一定間隔で並べる。こののち、写真では取り付けられていないが、鍬型の装備で上から土を被せて偽装し、地雷原を構築する装備だ。

Img_3503  道路障害作業車の展示。作業装置はアイチコーポレーション製、車体はいすゞの73式大型トラック。クレーン、アースオーガー、コンクリートカッター、チェーンソー、ブレーカー、ダンパーと各アタッチメントを搭載して舗装道路などを掘削し、障害物に造り替える装備。1985年から装備が開始された。

Img_3473  74式戦車の体験搭乗。三菱重工製の74式戦車は、105㍉砲とレーザー測距機・弾道コンピュータによる高度を火器管制装置を合わせ、高い打撃力を有するとともに、油圧サスペンションを用いて上下左右に車体を傾斜させることができ、地形を最大限に活かした待ち伏せ攻撃なども得意とする戦車だが、一世代前の戦車でもあり、現在、後継の新戦車が三菱重工において開発中だ。

Img_3048  遠隔操作型油圧ショベル。体験乗車会場に向かう途中に撮影。キャビンは無人だが、アーム部分は、写真でご覧のとおり動いている、とはいっても別に暴走している訳ではない、遠隔操作できるタイプなのだ。これは、危険な地域での作業において、遠隔操作して危険を軽減するための装備だ。

Img_3058  野外手術システム。手術車、手術準備車、減菌車、衛生補給車と、1㌧水トレーラ、発電機二基からなる装備で、脳外科、胸部外科、消化器外科、泌尿器科などの緊急手術を行うことができる。手術要員は4名、病院天幕、ドーム、指揮所と併せて野戦病院を構成し、一日当たり10~15名の手術が可能だ。

Img_3066  手術車には、手術台一台と三基の手術灯、X線装置と患者監視装置、除細動器、麻酔ユニットが搭載。手術準備車には殺菌手洗い装置、血球測定装置、生化学検査装置、自動現像装置、手術器械セットが搭載。減菌車には、高圧減菌器、超音波洗浄機、医療用水製造装置が設置。衛生補給車には薬品保冷庫、手術機器セット、保存用血液恒温槽、酸素ボンベ、データ処理装置が搭載されている。

Img_3134  体験乗車に並び乗車。戦車は混んでいたので、高機動車と73式小型トラックの方に。体験乗車したのは、73式小型トラック。パジェロのショートフレームにオープンボディを載せた新型で、1996年から新排気ガス基準に対応するべく導入が開始された。81式自走架柱橋を渡っているところだ。

Img_3337  高機動車体験乗車の様子。トヨタ自動車により開発された汎用車両で、10名が乗車でき、普通科一個小銃班の機動や120㍉重迫撃砲のけん引に加え、対空ミサイルや対戦車ミサイルの発射器、レーダーを搭載したり、通信や電子戦用機材を搭載しなり、様々な用途に用いられている車両だ。

Img_3334  それにしても、今年の体験乗車は、山あり谷あり。さすがわ、施設大隊の駐屯する駐屯地ということもあって、土が盛ってある。オフロードカー愛好者なら、自分が運転したくなるような、という場所である。もちろん、野戦でも運用を考えた自衛隊の車両は、当たり前のように通過してゆく。

Img_3360  81式自走架柱橋を渡る高機動車。災害時でもなければなかなかこういうものを渡る機会はないのではないか。74式戦車を含め師団のすべての装備を渡河させることができる装備。誘導に従い慎重にわたってゆく、というのも写真ではわかりにくいが、下には深めの溝が掘られており、迫力ある展示。

Img_3521  浄水をテーマにした装備品展示の会場。野外入浴セットを用いた足湯。さすがに駐屯地祭で入浴してもらうわけにはいかず、これまではお湯を張って展示、というかたちが主流であったが、最近の足湯ブームに乗ったかたちで、一般に開放された。浴槽はキャンバス製で、浴場用天幕、貯水タンク、温水供給用湯沸機とともに野外入浴セットを構成する。一度に30名が入浴でき、災害派遣などにも重宝する装備だ。

Img_3530  浄水セットが、野外入浴セットに浄化された水を供給する。1基で7.5㌧の水を浄水できる。これは、冬の間使用されていない、プールの水を浄水し使用しており、浄水した水を用いて、無料のお茶提供なども行われていた。ほうじ茶や緑茶などがあり、来年あたり、カップ麺販売とお湯の提供をやってみると面白いかもしれない。

Img_2383  この装備品展示会場、偵察隊などに装備されている防弾盾。実際に小銃弾に耐える性能があるとのこと。邦人救出活動などを想定して装備されているもので、防盾は、今回ソマリア沖に派遣された海賊対処任務の護衛艦にも、ほぼ同じものが並べられていた。最近の警察に装備された透明の防盾に見慣れた当方には、いかにも防弾という盾は力強い印象を受けた。

Img_2391  戦闘防護衣。サリンやVXガスなど、化学兵器により攻撃を受けた場合に備える装備。なお、神経ガスは威力が大きいがすぐに拡散してしまうので、イペリットのような地域を汚染する化学剤のほうが厄介だそうだ。マスクと防護服に加え、靴も液体のガスはすぐに浸透してくるので、防護靴を戦闘靴の上に履かなくてはならない。

Img_3538  探知機を用いて模擬地雷を探す。金属物を発見すると電子音で知らせてくれる。位置がわかったら、棒を地面斜めに差し込んで、慎重に探してゆく。探知機は、不発弾処理にも用いることができる。施設大隊の任務には、地雷などの障害除去も含まれ、戦闘支援として重要な任務の一つに数えられる。

Img_3535  火砲を中心とした装備品展示会場。FH-70榴弾砲が置かれている。豊川駐屯地の第10特科連隊に所属する砲で、向こうには93式近距離地対空誘導弾と、81式短距離地対空誘導弾などが置かれている。こちらも豊川駐屯地の第10高射特科大隊に所属するミサイルである。

Img_2438  携帯火器を中心とした装備品展示会場。並べられているのは、64式小銃。1964年に制式化された小銃で、旧式化したこともあり、順次、隣に並んでいる新型の89式小銃に置き換わっている。64式小銃が展示されない駐屯地祭も増えてきたが、後方支援にあたる部隊や教育部隊ではまだまだ、現役の装備だ。

Img_2436  01式軽対戦車誘導弾。発射後誘導する必要のない撃ち放し式の対戦車ミサイル。第35普通科連隊の装備品で、守山駐屯地から持ってきたようだ。軽装甲車や陣地を想定し真っ直ぐ直撃か、戦車で最も装甲の薄い上部に命中するかなど、弾道を選ぶことができる世界的に見ても高度な携帯火器である。

Img_3566  第35普通科連隊の軽装甲機動車。後ろは、女性自衛官用隊舎であるが、こちらは非公開。軽装甲機動車では、戦闘服や戦闘装着セットなどの試着と記念写真ができたようだが、春日井駐屯地祭は、まもなく終了の時刻が迫っており、片付けが開始されていた。式典、観閲行進、訓練展示、装備品展示と見て回ったが、創意工夫に富んだ駐屯地祭、という風に改めて感じた次第。また来年も楽しみだ。

HARUNA

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