◆MV-22充足、普天間のCH-46,完全退役へ
防衛省によれば現在普天間基地に残る旧式化したCH-46について、今年夏に大隊のMV-22を配備することで完全退役させる方針が米国防総省から伝えられたとのこと。
この方針は昨年6月29日にアメリカ国務省と国防総省より伝えられた内容で、既に第265回転翼機飛行隊と第262回転翼機飛行隊の二個あるCH-46飛行隊のうち、第265回転翼機飛行隊は、第265可動翼機飛行隊へ改編、同飛行隊が有する12機のCH-46は、昨年10月に12機のMV-22により代替されました。MV-22は性能面で、速度と行動半径が従来機より大きく延伸した新型機です。
残る12機のCH-46を運用する第262回転翼機も今年夏にMV-22の12機を以て第262可動翼機飛行隊へ代替され、これにより24機のMV-22が普天間基地へ配備されることとなります。これにより、三個ある海兵航空団で最後のCH-46からMV-22への機種改編が完了することとなります。
第262可動翼機飛行隊へ配備されるMV-22は、船舶輸送にて一旦第1海兵航空団が展開する岩国航空基地へ陸揚げされ、その後所要の整備を経て普天間基地へ移動するとのことで、この方式は海兵王九段司令部と補給整備能力を有し、港湾施設に面した岩国にて整備を行い、展開させる、昨年の最初のMV-22配備と同じ方式が採られる。
もともとCH-46は設計が古いのですが、生産が継続されているCH-47等とは違い、加えて生産終了からかなりの期間を経ているため、耐用年数の上限と共に老朽化部分の補強改修を行い維持していた航空機であるため、早期の代替が必要とされていました。米本土の海兵航空団から順次代替が進められ、ようやく日本駐留部隊へも置き換えがはじめられたわけです。
MV-22は、可動翼機という離陸時に回転翼機として発進し、離陸後に回転翼を前方へ偏向し固定翼機として飛行する稼働翼機構造を採用したため、試作当時は事故が多く発生し、欠陥機ではないか、と危惧されていましたが、動力伝達機構や姿勢制御システムの完成により事故発生率は既存の航空機と比較し非常に低くなりました。
可動翼機という航空機体系は、空軍向けCV-22と海兵隊向けMV-22により量産に至りましたが、既に民間用5名乗り可動翼機AW-609が市場に投入されており、新しくアメリカ陸軍のUH-60を置き換える普及型可動翼機としてV-280の開発が開始されるとのことで、技術的には安定し十分な信頼性を得るに至っています。
一方のCH-46は前述の通り旧式化と老朽化が進んでいることから年々事故の危険性が高まっているほか、音響ステルス性という発想が無い世代の航空機であることから、近年特に航空機の騒音に対し配慮が求められる平時において、前の世代の航空機となりました、この点でMV-22への機種改編は安全性と環境面で歓迎すべきことです。
加えて近年、我が国周辺地域では我が国南西諸島及び台湾地域に対し、現在の秩序に対し軍事的に挑戦する緊張状態が醸成されており、速度面と航続距離が延伸するMV-22の配備は周辺地域の抑止力として大きな前進となることも特筆しておかねばなりません。
より直接的に表現すれば、CH-46では台湾有事に際し片道燃料で中継点を確保しつつ展開するしかありませんでしたが、MV-22はその行動半径に台湾が含まれます。併せて重装備を輸送するCH-53Eも近くCH-53Kにより代替が開始されますので、MV-22の橋頭堡をもとに部隊を展開させることが出来、こうした実力そのものが武力紛争の危険を封じるというはなし。
また、MV-22の話題とともにほぼ必ずテレビ報道などを見る限り、盛んに離発着する普天間基地の映像が流れているのですが、実際に何度か平日に一日の大半を普天間基地周辺で航空機を見ていますと、本州の基地と比べればそこまで多くの航空機が発着するわけではなく、岐阜基地や小牧基地と比較すれば発着数は非常に少ないということ、実際に行くのと報道でみるのとでは印象が異なる、ということを特筆しておきましょう。
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