北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

歴史地震再来と日本安全保障戦略① 国家戦略と切り離せぬ巨大災害への備え

2013-05-26 23:27:55 | 防災・災害派遣

◆それは日本列島に生きる上で必要な選択

 防災・災害派遣関連での新しい特集連続記事を本日より掲載開始とします、今回から歴史地震の再来を扱う。

Qimg_9416 歴史地震、これは現代の観測器材による観測体制が確立する以前に発生した過去の巨大地震です。日本書紀を通じて日本史上初めて記録に残った684年の白鳳地震、三陸地方に最大級の津波を齎せた869年の貞観地震、内陸直下地震ながら連動し本州全域に被害を及ぼした1586年の天正地震など。

Qimg_3434 貞観地震など、観測体制が整って以来最大の津波を観測した明治三陸地震を越える津波が発生した痕跡が残りつつ、その発生リスクは一種SF的な心象を以て考えられ、事実三陸地方の防災対策は明治三陸地震を想定した水準で十分な対策が構築されていたことは多くの方にご存知のことと思います。

Qimg_9228 そして、3.11東日本大震災の発生と共に、その津波が明治三陸地震を越える規模で太平洋岸を押し流し、結果、その津波に匹敵する規模の過去の事例として、千年ぶりの巨大地震、というかたちで報じられることとなり、貞観地震の存在が千年に一度の規模の災害、という表現と共に、改めて認識されることとなりました。

Qimg_0805 今回から開始する特集では、必ずしも歴史地震の再来を念頭とした防災対策の重要性を提唱するわけではありません。無論、歴史地震に代表される規模を想定する防災体制を構築出来たなからあらゆる災害から国土を守れるのですが、その前に実行を経て財政破たんに至ります。これは大事なことです。

Qimg_2161 歴史地震、何故対抗できないか実例を出します。地震ではありませんが、例えば日本最大の火山である阿蘇山、その過去最大の噴火を例に考えますと、9万年前のAso-4と呼ばれる巨大噴火の火砕流到達範囲で、熊本県全域・大分県全域・長崎県離島除く全域・福岡県離島除く全域・鹿児島県北部中部・山口県南部および中部全域、となりこの域内は高熱の火山堆積物と火砕サージで全滅、とてもではありませんが避難体制を確立できません。

Qimg_7185 それではサイエンスホラー小説よろしく被害の大きさを想定し、真夏の夜を涼しく過ごすことが目的か、と問われればもちろん、そこまで不毛なことを考えるのではなく、災害のリスクを最大値で想定することは果たして妥当なのか、また、災害への想定と安全保障上のとり得る選択肢の均衡点はどういったところにあるのかを考えることが重要と考えるもの。

Qimg_1666 その実例として、原子力発電と地震想定の問題に原子力発電再稼働の問題を加えて考える、また、大規模地震の発生が我が国の防衛上の問題へ影響を及ぼす可能性について、また、安全保障体系への防災政策の影響などについても、考えてゆきたいと考えているところ。

Qimg_1875 防災に関する特集では南海トラフ地震に備える、として、実際には防災予算により防衛力強化を含めた、大規模災害への対応能力の向上を目指した特集となっていますが、今回はもう少し大きな視点から防災と防衛の関係、防災と国家の戦略について、考えてゆきたい。

Qimg_1188 これは、言い換えれば東日本大震災の復興が、特に同程度の地震が再来する念頭での復興計画を構築しているため遅々として進まない現状への疑問符を含めて考えるものであり、福島第一原発事故と敦賀原発二号炉廃炉政策についても、無論後者については現行法上仕方ないところなのですが、その妥当性についても考えてゆくつもり。

Qimg_5952 また、エネルギー政策が震災後の原子力発電停止が継続するという前提であれば、我が国は様々な面で外に出てゆかなければならない必要性が出てくるわけであり、これは他の問題領域にリンケージしてゆきます、即ち一つの解決策がスピルオーバーする可能性がある、ということ。

Qimg_9110 併せて、南海トラフ地震特集ではそれに想定する能力を整備することで自衛隊の様々な問題にも臨むことが出来るものでしたが、南海トラフ地震が歴史地震の観点から最大の想定を行っていた事を十分認識せず、想定被害の大きさから視野狭窄に陥っていた、という反省も含め、今回の掲載に反映してゆきます。日本列島にいる上で、災害を全て回避することは出来ず、取捨選択が必要、こういうもの。

Qimg_3312 特集は内容が内容だけに自衛隊関連のものだけとなるものではありません、防災政策ですので政治も当然からみ、国家間関係なども当然加わってゆきます。現時点では短期掲載となりますが、議論によっては長期掲載となるかもしれません、よろしくお付き合いください。

北大路機関:はるな

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コメント (6)
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