北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上防衛作戦部隊論(第五二回):ペントミック師団(五単位師団),将来の戦車三〇〇両体制

2016-05-21 22:28:36 | 防衛・安全保障
■将来の戦車三〇〇両体制
 ペントミック師団としての五単位師団案について,無理に新防衛大綱に基づく戦車300両体制に拘るのではなく将来の戦車300両体制を展望しつつ、その過渡案を前回に続き考えてみましょう。

 師団は五個連隊、旅団は三個連隊、連隊戦闘団の編成は統合、と。普通科連隊は本部管理中隊に第一中隊と第二中隊に第三中隊と編成を師団旅団共に統合化し、師団は五個普通科連隊基幹、旅団は三個普通科連隊基幹、戦車大隊や戦車中隊、特科連隊か特科隊か、という編成単位の区分は師団が五単位部隊で旅団は三単位部隊として編成する、教育訓練も統合化でき、連隊管区が連隊の能力均等化により配置が合理化できる、ペントミック師団案とはこうしたものです。

 機械化大隊を基幹とする旅団普通科連隊基幹の5単位編成師団、しかし機械化大隊の骨幹となる戦車中隊をどうするか、ということになります、現行の14両編成、4両編成小隊3個基幹に本部所要2両を加えた編成を採りますと、5個中隊で70両必要となります、戦車連隊ということで勇壮な編成ですが、これでは陸上自衛隊全体で必要な戦車数が1998年頃の自衛隊戦車定数が必要となってしまうでしょう、すると縮小する他ない。

 8個師団6個旅団、その戦車中隊所要は、師団所要40個、旅団所要18個、となります、この場合縮小編制として10両、即ち各戦車小隊3両編成と中隊本部1両を基本とし、小隊陸曹は戦車ではなく軽装甲機動車を以て機動させる小型の中隊を採った場合でも必要戦車定数は580両、ここに機甲師団所要170両を含めますと全体で750両となります。戦車定数300両という転換を前に少々大袈裟な定数かもしれませんが、十年前の定数です。

 50両、戦車中隊を10両編成として大隊本部所要車両を全て軽装甲機動車や装輪装甲車により充当すれば、5個中隊基幹の編成であっても50両で抑え、戦車大隊編成とすることができます。戦車数は非常に多くなるのですが、量産する事で非常に低い費用で世界最高度の戦車を取得できるので、これは一つの選択肢です。例えばレオパルド2A6のスペイン仕様車両等は1両16億円となり、M-1A1D豪州輸出費用も10式戦車よりも高いのですから。

 広域師団編成案として示しました装甲機動旅団と航空機動旅団編制を採った場合の戦車定数は350両、これは現在の防衛計画の大綱に明示された300両をその枠内で採り、且つ全体の陸上防衛力の均衡を破綻させない長期的最低水準を、全国への配置による教育訓練基盤維持と、装甲戦闘車との連携を前提とした機械化大隊編成という新方式を併せての折衷案として算出した定数でした。戦車を減らすことが目的か、それとも手段なのか、と。

 縮小編制の戦車中隊で装甲戦闘車ではなく装輪装甲車化された中隊という編成ですが、そもそも装甲機動旅団と航空機動旅団に分けるのではなく、現行編成を効率化するという目的で編成統一が目的なのですから、師団には5個戦闘団が置かれます、10式戦車10両と96式装輪装甲車改良型が30両に火力戦闘車5両かFH-70榴弾砲6門程度、軽装甲機動車21両、攻撃衝力は、師団がこの編成の部隊を5個持っているのですから、相応に大きい。

 一応利点はこのほかあります、折衷案なのですが、装甲戦闘車を配備した場合、機関砲の射撃訓練が必要になりますが、射程が1000m以上ありますので、中演習場以上の規模でなければ射撃場が確保できません、もちろん、縮約砲の併用や、訓練機材の演習場集約と人員の転地訓練等、つまり装甲戦闘車を一定巣演習場に置き、射撃訓練と併せた訓練時のみ人員のみ高機動車により駐屯地から展開するという手段も考えられます。

 もちろん、繰り返しますが攻撃衝力の持続性は低いですし不整地突破能力も低い、装甲機動旅団案と比べれば脆弱です、ただ、戦車を増勢する事で人員削減が可能となり、更に駐屯地を求める自治体の声にも対応出来、訓練面と戦術研究の体系化には有利です、無理に戦車を縮小するのではなく、全体として低い予算に抑える選択肢には、装備体系を単純化するというこの方式を広域師団案への対案の一つとして挙げてみました。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.05.21/22)

2016-05-20 23:45:47 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
 G7先進七ヵ国伊勢志摩サミットがいよいよ近づいてまいりました,世界の課題に先進国首脳が責任ある対応策を討議する場です。

 自衛隊は各国首脳を中部国際空港からサミット会場へ輸送するべくCH-47,UH-60JAを中部国際空港へ約20機を展開させており、その様子は中部国際空港展望デッキから見る事が出来ます、また、伊勢志摩地区には移動監視隊が展開、特殊武器防護部隊等を志摩地区と中京地区へ展開させ、開催中は護衛艦と早期警戒管制機を飛行させ、万全の警備体制を採ります。

防府航空祭、土曜日と日曜日に開催されます。防府北基地と防府南基地が航空祭と一般公開を実施しまして、土曜日に防府南基地、日曜日に飛行場である防府北基地が一般公開、所属するT-7練習機による飛行展示等が行われます。熊本地震によりその開催が危ぶまれてきましたが、災害派遣任務がひと段落し、実行が決定しました。

第4師団創立62周年・福岡駐屯地開設66周年記念行事は中止になりました。第4師団HPへの掲載です、第4師団は九州北部を防衛警備管区とする陸上自衛隊の師団で、今回の熊本地震による被害を受けた大分県も警備管区に含まれるため現在も災害派遣任務を継続中です、災害派遣中ですが、来年度には復興した九州と師団祭を楽しみにしたいところですね。

大村航空基地HPより、“大村基地開隊59周年記念日行事(基地一般開放)中止のお知らせ. 熊本地震の状況に 鑑み、5月22日(日)に海上自衛隊大村航空基地で予定しています「大村基地開隊59 周年記念日行事基地一般開放」を中止することを決定いたしました。 ”とのこと、第22航空群の大村航空基地祭ですが、第4師団祭と並び中止となりました、SH-60を装備する西日本哨戒ヘリコプター部隊の中枢という精鋭です。

高知駐屯地創立50周年第50普通科連隊創隊10周年記念行事、感謝と飛躍を標語に5月22日高知駐屯地にて実施されます、第50普通科連隊は第14旅団隷下の普通科連隊で、高知県全域を防衛警備管区としています、第50普通科連隊の50という番号が示す通り新しい部隊で、高知県への普通科連隊配置求める永い県民の誘致運動により実現しました。

和歌山駐屯地祭、第304水際障害中隊の駐屯地祭で、94式水際地雷敷設車が配備されています、中部方面隊HPや和歌山地方協力本部HPに中止の公示は為されていませんが上級部隊である第4施設団の創設記念行事は中止されているため、こちらに足を運ばれる予定の方はご注意ください。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・5月21日:和歌山駐屯地創設記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/
・5月21日:防府南基地開庁記念行事…http://www.mod.go.jp/asdf/hofukita/
・5月22日:防府北基地航空祭…http://www.mod.go.jp/asdf/hofukita/
・5月22日:高知駐屯地創立50周年第50普通科連隊創隊10周年記念行事…
http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/14b/butaisyoukai/kakubutai/4_50i/
・5月22日:第4師団創立62周年福岡駐屯地祭(中止)…http://www.mod.go.jp/gsdf/wae/4d/
・5月22日:大村航空基地祭(中止)…http://www.mod.go.jp/msdf/22aw/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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シリア内戦復興,日本・国連UNDP協同で発電所復旧へ要員派遣 シリア政府へ安全確保要求

2016-05-19 23:00:39 | 国際・政治
■内戦下シリアへ復興支援
 日本政府は国連UNDPとの協同でシリア内戦へ復興の人員を派遣するとの事がAFP通信により報道されました。

 これは我が国の吉川元偉国連大使が昨日18日にシリアのジャファリ国連大使や国連開発計画UNDP高官とニューヨークで会談し明らかになったもので、シリア国内の火力発電所について、復旧支援を行う共同プロジェクトへの参画としており、この復興事業はシリア政府の要請により行われ、緊急人道支援として計約30億円の資金協力を行うというもの。この計画について日本政府はシリア政府に対し、発電所復旧支援の際のシリア政府による安全確保を要請したとの事です。シリアは停戦中ですが内戦状態、万一の際には邦人保護と自衛隊の緊急派遣という問題にも直面する問題です。

 シリア内戦は停戦となっていますが、国内では停戦交渉の対象とならなかったISILや一部武装勢力との間で戦闘が大規模に展開しており、ここで火力発電所を修復する事となります、これにより三箇所の火力発電所を復旧する事でシリア国内の電力需要59%をまかなえるとのことで、シリア軍による警備を要請するかたち。ただ、万一不測の事態となった場合には、邦人保護任務について、日本政府も責任を負うこととなるでしょう。即ち万一の際には自衛隊が救出へ展開しなければならない、ということに他なりません。

 シリア内戦は実質的に継続されています。現状ではロシア空軍の猛攻と欧州中東有志連合の航空打撃により、ISILが首都と位置づけるシリアのラッカ周辺まで追い詰められ、ISILは非常事態宣言が出されているとのこと、ISILは首謀者であるバグダディ容疑者がラッカ市内に潜伏していると考えられることから、航空攻撃により行動自由を封殺し、武器供給は鹵獲武器に依存するISILにとり既にイラクでの新生イラク軍からの鹵獲が途絶している状況で、時間をかけシリア軍が大量の兵力で包囲し、市街地戦闘により制圧する最終段階が見えてきました。

 しかし、これはISILによる攻勢が昨今、地域奪取を目的とする軍事的な攻勢から単発的なテロへと移行しており、これは彼我混合の競合地域以外の地域でも突発的に襲撃事件が発生する危険性が増している事を意味します。実際、イラクの首都バグダッド北郊にあるガス工場を15日に武装集団が襲撃、その後ISILが犯行声明を出す事案がありました、犯行の概要は8名が襲撃し自爆攻撃を中心に展開し、これにより石油施設従業員や警備要員など7名が死亡したと報じられています。

 ISILの攻勢はこのように数名単位でのテロ攻撃へ攻撃の主体が移行しており、今回もその表れであるとの見方を示しましたが、ここで思い起こされるのは2013年1月16日に発生したアルジェリアガスプラント邦人襲撃事件のようなテロ事件でしょう。アルカイダ系武装勢力イスラム聖戦士血盟団によるこのテロ事件により邦人10名が殺害され、この事件を受け自衛隊法が改正、在外邦人保護の陸上輸送任務が付与され、邦人救出のための輸送防護車等が配備された事は記憶に新しいところですが、現在のシリア情勢は当時のアルジェリアよりも危険と云って間違いありません。

 この地域へ我が国が関与の度合いを強める意味ですが、それは中東のパワーバランスへの均衡回復です。シリア内戦は停戦状態の中で対テロ作戦が継続的に進行中で、ロシア軍のシリアでの行動の度合いは依然大きく、冷戦期にソ連が理想としていました中東地域での恒常的な策源地確保に成功しました、アメリカ軍は冷戦期のサウジアラビアでの常駐は湾岸戦争後も継続され、イラク戦争を契機にサウジアラビア及びクウェート駐屯部隊がイラクへ進攻し、そののちの駐留を経て実質的に大隊規模の陸戦部隊と航空基地隊を残し撤退、これは中東全域からイラクに集約して後の本土への撤退であり、中東での米ロ均衡は反転したといえるでしょう。

 ただ、忘れてはならないのは2015年1月20日のシリアアレッポISIL日本人拘束事件です、この事件では二人の邦人釈放へ2億ドルの身代金が要求され、その根拠が我が国によるシリア難民人道支援への反発でした。難民キャンプ運営費の日本側負担、という平和的な施策に対しても、そもそもシリア難民そのものがISILの支配を受け入れない反逆者とのISIL独自の解釈があり、その難民支援を行う日本政府はISILの敵である、として拉致邦人二人、自称ジャーナリストと自称民間ミリタリーショップ会社経営者という一般市民を拉致したわけです。発電所復旧はISILの照り攻撃目標とされる可能性が高い。

 シリアでの今回開始される発電所復旧支援はどのような規模の派遣となるかは未知数ですが、我が国政府からのシリア政府への要請が為された為、邦人が派遣される事を示しています。場合によってはシリア領内での邦人保護任務の可能性が生じると共に、併せて、シリア領域外においても、日本が国連と連携する形であっても、シリア領域内の復興支援に当たる事を逆恨みし、邦人がテロの標的となる可能性は高くなります、もちろん、ISILに従わない地域の人々は生存権が無い、としたISILの主張に賛同する余地は絶無であり、人道支援は我が国の精神からも求められる施策ですが、併せて、不測の事態への準備を世界規模で備える必要性がある事も、また重要であることに代わりありません。

北大路機関:はるな くらま
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巨大災害,次の有事への備え 03:福島第一原発事故当事者が把握していなかったCH-47の空輸能力

2016-05-18 22:25:48 | 防災・災害派遣
■責任者に求められる知識
 巨大災害,次の有事への備え、自衛隊にできる事とできないことがある、しかし、という視点から。

 自衛隊にできる事とできないことがある、しかし出来る事と可能な装備があるならば完全に発揮する必要がある、そしてそれ以上に、官民ともに自衛官でなくともその指揮を執る判断を行う立場の者が、自衛隊にできる事と出来ない事という視点からその能力や装備を正確に把握しなければ、せっかくの装備を最大限使用することは出来ない、だからこそ責任者に求められる知識がある、という視点について。

 東日本大震災では的確に東京電力化東北電力の高圧発電車を空輸できていれば、あの原子力災害が回避できた可能性があります。福島第一原発事故は交流電源を要する原子炉冷却機能が淡水による大容量注水機能について機能喪失、交流電源を要しない原子炉冷却機能も熱交換器を介した冷却機能は機能喪失し、原子炉圧力容器内水位が燃料露出水位まで下がりました。

 中央制御室の操作性は交流電源喪失により悪化し照明監視系のみ回復しています。福島第一原発事故の概略を見ますと、3月11日1446時地震発生、1545時に発電所敷地内燃料タンクが大津波によって流失し原子炉停止後非常用発電装置も破損します、1号機1636時に冷却装置が注水不能となり非常用炉心冷却装置ECCSをバッテリーにより稼動、2号機も全交流電源喪失に陥ってしまった、わけです。

 原子炉冷却、バッテリー動作冷却装置注水は12日まで非常用炉心冷却装置のポンプが作動中であり冷却水を注水するための非常用ディーゼル発電機が稼働せず非常用バッテリーにて稼動していた訳です。同日1903時、初の原子力緊急事態宣言が発令されました。メルトダウンですが、一号機は国会事故調査委員会報告書を見る限り、12日0049時には圧力異常上昇となっていることからこの時点で格納容器は高圧状態で破壊されていなかったと塩調査委員会報告書にはあります。

 これもバッテリー切れにより、1400時頃に核燃料の一部が溶融し1412時には原子炉周辺モニタリングポストでの放射性物質異常数値が検知されセシウムが溶融し炉心融解、メルトダウンの発生が推測される事態となりました、1430時に圧力逃がし弁の開放に成功したものの損傷となっている訳です。ここで、今日的に錯誤が要因と考えられる事態が発生しています、東京電力は在京アメリカ大使館へ米軍のヘリコプターで真水を大量輸送する要請が行われているわけです。

 実は、在日米軍の輸送ヘリコプターは第1海兵航空団が普天間飛行場に配備しているCH-53のみで、航続距離の面から福島第一原発へ即座に展開できません、沖縄からフェリー空輸ならば福島第一原発近傍の神町駐屯地飛行場へ直接展開可能なMV-22はまだ在日米軍に配備されておらず、配備されているCH-46はやはり航続距離が不足します。厚木航空基地の第五空母航空団にはバートレップとして艦艇間の物資輸送用にUH-60が数機、空軍の横田基地にはUH-1N,陸軍もキャンプ座間へUH-60をそれぞれ数機、運用されている。

 ただし、海軍は精密部品などの輸送用、陸軍と空軍は要人輸送用に配備していまして、もともと大きな物資輸送は考えていません。ヘリコプターですので共に水は吊下げ空輸により輸送は可能ですが、バンビバケットによる吊下げを行う場合、一度の真水空輸能力は0.5tまでです。東京電力が企図した大量の真水、の総量については不明です。ヘリコプターによるバンビバケットでの真水輸送能力ですが、UH-60系統の航空機では限度がありました。責任者に求められる知識というものがある、これを欠いていると自覚するならば幕僚を置くべきだ。

 当時原子力災害対処への政府対策本部の優先順位により左右する命題ではあったのでしょうけれども、陸上自衛隊と航空自衛隊が大量に装備するCH-47輸送ヘリコプターであれば6t、UH-1やUH-60の12倍を空輸可能です、福島第一原発付近では木更津第1ヘリコプター団と相馬原の第12ヘリコプター隊、入間ヘリコプター空輸隊に三沢ヘリコプター空輸隊で約50機が配備されており、震災支援へ稼動機全機が運用中となっていましたが、真水輸送能力により回避できる被害があったならば、投入されていたでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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将来小型護衛艦の量的優位重視視点【3】 小型護衛艦へ進んだ沿岸警備艦構想と駆潜艇

2016-05-17 21:21:26 | 先端軍事テクノロジー
■冷戦期海上自衛隊の構想
 LSMPSという構想から前回、将来小型護衛艦の必要性を提示しました、この方式はデータリンクで繋がる、兵器システムのセンサーとしての小型艦艇との位置づけを強調しすぎますと、先進的過ぎ、実現性が中途半端となったアメリカのLCS沿海域戦闘艦と似た響きを持つものですが、どちらかと云えば海上自衛隊の過去の装備計画を意識したものです。

 将来小型護衛艦の量的優位重視視点、としましたが、小型護衛艦、これは自衛艦隊に配備する艦隊護衛隊ではなく、また、旧地方隊に配属され現在は二桁護衛隊と呼称される沿岸配備用護衛艦よりもさらに小型のものを意識したものです。具体的には、地方隊警備隊のミサイル艇に匹敵する水準の水上戦闘艦として、兎に角数を有し、沿岸警備から沿岸部での船団護衛に最小限度の対潜哨戒を行う。

 航空攻撃を受ければ自演戦闘を展開しつつ沿岸部に展開する陸上自衛隊高射特科群の防空網下へ退避し、対水上戦闘では水上打撃を担いつつ陸上自衛隊の地対艦ミサイル連隊と協同し、沿岸部での対潜哨戒では哨戒ヘリコプターに協力しつつ基本的に単独での水上戦闘艦としての戦闘システムを構成するものではなく、陸海空自衛隊の沿岸防備ネットワークの一端を構成する装備、という位置づけです。

 護衛艦いしかり、具体的に想定するのは海上自衛隊が2000年代まで運用した小型護衛艦のような水上戦闘艦です、いしかり、は海上自衛隊護衛艦として初めてハープーン艦対艦ミサイルを運用する沿岸部での水上打撃力をかなり重視した艦艇となっており、基準排水量は1290t、満載排水量も1580tと非常に小型で全長は85m、掃海艇より数割程度全長が長いというものでした。

 いしかり、はディーゼルエンジンとガスタービンエンジンを併用するCODOG方式推進を採用、最高速力は25ノットで、76mm単装砲、ハープーン艦対艦ミサイル、三連装短魚雷発射筒、ボフォース対潜ロケット発射機を搭載する小型護衛艦でした。DE,小型護衛艦として能力は限られており、レーダーはOPS-28-1対水上レーダーとOPS-19航海レーダーを搭載しています。

 対空レーダーを搭載していない為、76mm単装砲用射撃管制装置81式射撃指揮装置2型FCS-2を構成するFCS-2-22Cを高空目標索敵用に、OPS-28-1対水上レーダーを低空目標追尾用に用いるという変則的な方法を採用しています。ソナーはSQS-36D-Jを採用、小型のもので探知距離は10km程度というものではありますが、探知目標に対しボフォース対潜ロケットを投射し迅速な対処が可能です。

 元々は沿岸警備艦PCE,として計画された、護衛艦いしかり、にはこうした背景がありました。そもそもこの発想の背景には海上自衛隊は沿岸哨戒用に駆潜艇という小型水上戦闘艦艇を多数運用していまして、この後継となる水上戦闘艦を、という視点から建造された為です。駆潜艇として海上自衛隊が最後に建造したのは駆潜艇みずとり型の8隻でした。

 海上自衛隊は創設以来駆潜艇かり型、駆潜艇かもめ型、駆潜艇はやぶさ、駆潜艇うみたか型、と建造してきました。みずとり型の最終艇ひよどり、は迎賓船として長く現役でしたのでご記憶の方も多い事でしょう。駆潜艇は、基準排水量440t程度と掃海艇並、乗員も80名で掃海艇と同程度、ですが列記とした水上戦闘艦であり、地方隊の貴重な装備でした。

 駆潜艇は小型とはいえ、艇隊を構成するため、隊付の幹部には初級幹部が充てられるものの任務は規模こそ違え護衛隊と同じ区分を求められるため、初級幹部が艦隊勤務を修練する最適の艦艇、ともいわれていましたが、小型過ぎて対潜哨戒任務へ対応できなくなり、沿岸警備艦PCE、という新区分が構築されたわけでした。しかし、沿岸警備艦PCEのような区分の艦艇は、数的限界が突きつけられた今日でこそ必要となっているのかもしれません。

北大路機関:はるな くらま
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巨大都市競合地域“メガシティ”という新たな戦場【後篇】 専守防衛と平和国家としての軍事アプローチ

2016-05-16 22:05:09 | 防衛・安全保障
■日本のメガシティへのアプローチ
 巨大都市競合地域“メガシティ”という新たな戦場への一考察、最終回は日本という国家の専守防衛と平和国家としての軍事アプローチから考えてみましょう。

 冷戦時代にアメリカは柔軟な姿勢を示しました一方、冷戦後は、大量破壊兵器の拡散防止とテロ拡散防止を掲げた事で、その手段に民主化を第一に掲げた事から、そもそも民主制度の多様性を無視し、アメリカナイズされた民主主義プロセスを強行しようとしたことで失敗が続いています、冷戦時代のような、“建前と本音”の使い分けを行わない点が問題の根底にある、ともいえる。もちろん、言い換えれば、民主制と政治制度多様性の尊重という視点でもあります。また、アメリカが関与する事で独裁制度の行き過ぎを抑止する、という視点ともなる。

 ここまでしてでも極力避けるべきとするのは、軍隊の装備は全般での戦闘を想定し整備されています。このなかで市街地戦闘での必要な装備は、特に死角の多い市街では狙撃脅威が増大するため耐爆車両が必要となりますし、これらの前進を阻む即席障害物を相当するには防弾化された戦闘工兵装備が必要となります、これらは野戦での戦闘と異なり死角が多い事から最大の地形障害に守られる事も意味し、逆に野戦ほど車高等に制約は生じません、他方、火力は第火力の投射が市街地では付随被害を生むため砲兵火力を使いにくく、直接照準火砲と大きな防御力を有する戦車が必要となります。

 野戦と市街地戦闘はちぐはぐな装備体系となる、という事ですね、この部分ですが、例えばアメリカ国内の法執行機関の装備体系を見ますと、警察の重犯罪対応部隊を中心に耐爆車両を多用し、建物捜索班の装備や狙撃対策部隊と突入支援車両など、軍事機構よりも市街戦に適した装備を有しています、アメリカではメキシコからの麻薬密輸対策等により耐爆車両は既に500両ほどが警察へ配備されており、更に長距離行軍の必要性は野戦よりも少なくその分重量の大きな防護服を装備でき、一見すると州兵よりも重装備となるほどで、ここに市街地戦闘の特異性が見て取れるでしょう。

 そのうえで、この装備面の特異性を知るからこそ、メガシティという新たな戦場、相手が非対称の戦いを挑む以上、米軍も正面からの戦闘を避け、メガシティという新たな戦場へは現地政府の治安部隊養成、住民支持への政治形態の真摯な研究に基づく非対称戦闘を企図する勢力からの支持離反促進と自軍への支持増大への施策、という点を考え、その上で米軍はその長所である打撃力と戦力投射に機動力という他の諸国が整備する上で課題を抱える部分から強靭に支援する態勢を構築する必要こそあるのかもしれません。

 一方、防衛側からの視点ですが、専守防衛を掲げる我が国としては市街地戦闘は重視される分野ではあります。勿論、ここで示したようなメガシティでの戦闘へ国際平和活動の一環として積極的に関与するべきとは思いません、むしろ、法執行機関養成や市街地での治安作戦などにおける警察任務の養成に注力するべきで、日本型警察機構を念頭とした組織、及び警察特殊部隊の養成支援という形で協力するべきでしょう。例えば国土交通省海上保安庁は、ソマリア沖海賊対処任務対処の一環として、ケニア海上警察の創設支援を行いました。

 日本型のメガシティという新たな戦場への対応は、海上警察養成の実績を陸上でも踏襲する事で、ケニアに続き、海上保安庁は、ヴェトナムやインドネシアにフィリピンといった国々でも海軍以外の海上法執行機関の養成支援を実施し、政府援助として巡視船などの供与も実施します。この形で、警察も市街地での取り締まりと、大規模なテロを未然に抑止できる安定した社会の実現に寄与する警察機構創設の支援を行う、という方式を採り、メガシティという新たな戦場への関与方法とすることが理想といえるでしょう。

 他方、前述の専守防衛という視点ですが、メガシティという新たな戦場とは異なるものの市街地戦闘の能力を強化する事は必要です。世界において戦術原則の一つである最大限の市街地戦闘から回避という原則に最初に挑んだのはスイス軍、永世中立国のスイス軍です。スイス軍は永世中立政策を掲げどの国からも支援を受けられないという前提の下で、自らの国土を限られた人口や経済力という防衛資源から防衛しなければなりません。

 スイス軍は市街戦を重視する政策へ転換したのは、従来の国防戦略が山岳戦闘を重視し持久戦を強いるものでした。しかし、これは都市部の人口密集地防衛を断念する事でもあり、この場合自国民を致し方ないとはいえ見捨てる事となる政府をスイス国民が支持し続ける事が出来るかとの厳しい問題があり、この上で、市街地を防衛する施策を選択した訳です。非常に困難ではあるが防衛側には事前集積が容易で国民皆兵制を採るスイスでは市街地を確実に防衛する技術を構築する事を選んだ訳です。

 専守防衛の国にはこの施策は一つの選択肢と云え、スイスを外敵から“攻めにくい国家”とすることが出来、この視点から敢えて困難に挑んだ訳でした。この為大火力を集約可能な戦車の更新や装甲戦闘車を山岳戦用部隊に代えて導入し、市街地要塞化を図りました。我が国の場合は、メガシティという新たな戦場、ではなく、従来型の市街地戦闘を国内で展開し、防衛力は確実に国民と共にある、という示す必要はあるように考えます。他方、その能力を整備したとしても過信し、海外での投射に使う事が無いよう、法執行機関養成というお家芸を示せるよう臨む、こうした使い分けを採るべきと考えます。

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アメリカのリスク 大統領選にみる変容と国際公序再構築【2】 日本自衛隊の巨大な国土防衛力

2016-05-15 21:52:00 | 国際・政治
■日本国土を守った自衛隊
 本日は沖縄本土復帰の日、遠い将来であっても日本国土を我が国の防衛力だけで防衛できる国民の決意が、と考えるところですが、トランプ氏、大統領就任すれば日本防衛費の全額負担を要求する考えを表明 応じなければ駐留米軍を撤収する持論曲げず、とした報道がありました。

 自衛隊は大型水上戦闘艦部隊の規模、航空哨戒部隊の規模、潜水艦部隊の規模、ヘリコプター空輸能力の規模、防空ミサイル部隊の規模、世界的に見てかなり高い水準にあります。トランプ氏の主張する“米軍が日本を守っている”という主張は完全に否定する事はあえて避けますが、肯定する事もしません。日本本土の防衛に限れば、日本の現在の自衛隊で辛うじて対応できる水準だと考えます。

 防衛、根拠として縮小されていますが機甲戦力をアジア地域では比較的有力な水準で保持し、地対艦ミサイルとヘリコプターを大量に保有し、水上戦闘艦と潜水艦保有数も多い日本、海を越えて日本に侵攻してその上で後方連絡線を維持する事は大変です。対して在日米軍の規模は、航空戦力で空軍が嘉手納と三沢の二個航空団、それに海軍が厚木の第五空母航空団と海兵が岩国の第一海兵航空団、戦闘攻撃飛行部隊、と。

 水上戦闘艦が駆逐艦と巡洋艦合わせて七隻、原子力空母一隻、ドック型揚陸艦及び強襲揚陸艦が四隻、陸上戦力は沖縄の第3海兵師団と海兵遠征隊、この規模を、原子力空母は作戦拠点が本土防空に限れば別として、こういいますのも原子力空母を一隻保持することは、稼働率の意味から意義がありません、もっとも、垂直離着陸可能な戦闘機を数隻のヘリコプター搭載護衛艦へ分散艦載は可能かもしれませんが。さて、水上戦闘艦と揚陸艦に戦闘機だけを考えた場合、補填は不可能ではありません。

 米軍の能力として大きな部分は、地域ごとに貼り付けられている戦力ではなく、必要に応じ緊急展開する能力であり、この展開を全地球規模で展開する事が出来るのはアメリカを置いてほかにありません、が、これは日本を防衛しているのではなく、アメリカが進める公正と自由貿易を基調とする国際公序を維持するための国際公益ですので、敢えて日本防衛のために駐屯しているわけではありません。更に、ブッシュ政権時代の米軍再編において、アメリカは米本土と少数の海外戦略展開拠点へ米軍部隊を集約したものですから、現在米軍が駐屯している戦地以外の場所は、米軍が長期的に駐屯する事に有利な基点へ集約された結果、日本本土を選んで展開した、という実情も忘れるべきではないでしょう。

 日本防衛費の概算はどの程度であるのかは議論の余地が広そうですが、アメリカは防衛力の費用面で特に緊急展開のための様々な装備の比率が多く、例えば2000年代でのアメリカ国防費の最盛期は日本の防衛費の十倍という規模を誇っていましたが、戦力面で十倍かと問われれば、常設師団数で同数、これは日本の師団が小型でありかつ機械化の度合いなどで差異がありますので数字の上でしかありませんが。

 この他にも、米軍は戦略展開への装備の層がかなり厚い為、単純に正面装備だけの数をみますと、戦闘機数は空軍と航空自衛隊で7:1、哨戒機総数では5:3、水上戦闘艦は日米の巡洋艦駆逐艦と海上自衛隊の自衛艦隊で3:1、程度でしかない訳でして、在日米軍と同数の規模を自衛隊が整備する諸費用と、米軍が在日米軍の展開させる装備数を支える後方支援基盤までを含めた駐留規模の総額では、見えてくるものが違うでしょう。

 即ち、自衛隊が在日米軍の戦闘機数に匹敵する規模を補填するにはF-2支援戦闘機130機の増勢、おおすみ型輸送艦4隻の増強、全通飛行甲板型ヘリコプター搭載護衛艦の増勢、一個護衛隊群8隻の増勢もしくは、護衛艦隊隷下各護衛隊への護衛艦一隻の増勢、第2師団型師団一個の増設、現行予算では厳しいものではありますが、余り深い事は考えず在日米軍の規模だけを補うならば、不可能な水準では無い。

 日本の在日米軍に依存している最大の部分は、日本のシーレーン防衛への依存度で、特に自衛隊は専守防衛を念頭として防衛力を整備してきたことから、我が国へ非常に大きな圧力をかける中国が、南シナ海において戦力投射を行いシーレーンを遮断した場合、自衛隊の戦力投射能力は東シナ海全域へは充分その範囲内に収める事が出来ますが、南シナ海への戦力投射を行うには充分な部隊がありません。

 そして充分な部隊があったとしても、台湾とフィリピンやタイとヴェトナムへ一定規模の常設基地、小牧基地か八戸航空基地程度の兵站拠点、が無ければ行動圏外となります、アメリカの能力は戦力投射に重点が置かれている、ということを前述しましたが、日本の自衛隊は自国を防衛する能力は有しているものの、中東や果ては欧州から延々17000kmのシーレーンを防衛する能力は無く、また、列挙した諸国も在日米軍というアジアの米軍拠点からの展開に大きく依存しています。

 フィリピンやヴェトナムでは自国島嶼部を中国により不法占拠され、その奪還が軍事力において不可能となっていますし、一国二制度として事実上棚上げされている台湾海峡の中台対立も、在日米軍の緊急展開能力に依存しています、一方で日本防衛の視点として日本の主権者からすれば、沖縄や小笠原は当然日本防衛の境界線と考える事が出来ますが。

 ヴェトナムのハノイやフィリピンのマニラが日本本土として防衛の圏内に含める、という視点は戦後ありません。そして軍事圧力により東南アジアンや北東アジア地域において親中派が醸成される状況となったとしても、日本として打つ手はありません。その一方で、抑止力という概念と直接防衛という視点を区分して考えますと、在日米軍は抑止力として機能しました。

 その根拠として冷戦期、米軍は極東ソ連軍の脅威下に置かれていた北海道近傍に部隊を置きませんでした、自衛隊は四個師団を駐屯させ最精鋭部隊として充足率や装備更新を優先すると共に有事の際には南九州中国中京地方からの三個師団増援という準備のもとで防衛を展開していました、アメリカがこの地域を重視し青森県の三沢に空軍戦闘機を再展開したのは1980年代がみえてからのことでした。

 問題はアメリカが後退した場合、新たに出てくる勢力です。先日、アメリカ海軍のミサイル駆逐艦ウィリアムローレンスが南シナ海において中国が進める人工島の沖合南シナ海の南沙諸島にあるファイアリークロス礁付近を航行する航行の自由作戦を実施したとの事、一月に続く実施で当初示されていた時期よりもずらされた形ですが、中国の主張する領海に人工島は含まれないとし、行動したものです。

 海洋の占有に対するアメリカ海軍の具体的行動も今回が昨年10月のスビ礁付近、1月の西沙諸島トリトン島付近に続き三回目となりました、国際法上適法ですが、この航行の自由作戦による中国への抑制的な効果は見られません。中国の南シナ海での行動拡大は、押せば引くことを行動で示したオバマ大統領、引く先は米本土である政策が支持されるトランプ氏の大統領選での躍進が背景にあると考えられます。

 在日米軍撤退について推奨する訳ではありませんが、普天間の海兵航空群をフィリピンのクラークフィールド基地へ、キャンプハンセンの第31海兵遠征隊をフィリピンのスービック基地へ、三沢の第36戦闘航空団をヴェトナムのダナン基地へ、それぞれ移転させ、減った部分を自衛隊の増勢で補う、という施策も考えなければならない時期となっているのかもしれませんね。このように展開できるならば、妥協案となりますし、沖縄県での防衛力の日米転換にも寄与するでしょう。

北大路機関:はるな くらま
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熊本地震発災一ヶ月、九州を襲った直下型地震と激震連続発生と余震継続の緊迫を振り返る

2016-05-14 23:33:52 | 防災・災害派遣
■熊本地震発災一ヶ月
 熊本地震発災から一ヶ月が経ちました、一か月前の今日、宵の口に突如緊急地震速報が鳴り響き、夜闇に照明で浮かぶ熊本城が土煙に包まれる不気味な映像と共に震度七が速報されました。

 南海トラフ巨大地震による日本列島全域への津波被害が警鐘される中、2011年の東日本大震災以来の巨大地震は阿蘇を見上げる九州熊本を襲い、14日2126時の震度七という巨大地震を引き金に震度六の地震に限っても五回に分け発生する、日本地学史上稀にみる異常事態はその二日後の16日0125時再び緊急地震速報が発令、マグニチュード7.3の本震が発生し前駆地震が震度七との例のない地殻変動により大きな被害と混乱を及ぼしました、ここに改めて震災にひり被災された方々へお見舞い申し上げます。

 気象庁により熊本地震と命名された今回の地震は右横ずれ断層大陸プレート内地震として布田川日奈久断層帯が時間をかけ歪みを開放する事で、大型の余震が断続的に続き、震源域が本震発生後から熊本県熊本地方に熊本県阿蘇地方と大分県西部へと拡大し、阿蘇山付近での震源移動は阿蘇山が我が国最大の火山カルデラであり、その地震が巨大カルデラ噴火を誘発するのではないか、更に移動を開始した震源は九州四国近畿を経て本州を横断する中央構造線地震を誘発するのではないか、発生確証は無いものの無関係と断言できない不気味な状況も続きました。

 日本海へ隔て我が国が震災からの復旧を全力で模索する同時期に、北朝鮮は新型潜水艦弾道弾実験を連続実施、更に北朝鮮国内での核実験場では衛星情報収集により核実験徴候といえる変化が確認され、政府は敬愛強化を命じている最中の発災でした。新型弾道ミサイルムスダンは、米本土を狙う潜水艦発射弾道弾であるとされ、その射程から実験が成功した場合高い確率で1998年の弾道ミサイル実験と同じ経路、東北地方上空を飛翔する可能性が高く、日本へ落下する可能性が生じる、核実験は前回実施し失敗した水爆実験となる可能性がある。

 防衛省自衛隊は、今回の熊本地震へ政府命令により25000名規模での災害派遣を実施しつつ、更に弾道ミサイル実験及び水爆実験への警戒監視を強化し万一の際の破壊措置への準備を展開、更に2011年の東日本大震災期とは比較できないほど高まっている中国軍からの南西諸島に対する軍事圧力への警戒監視を両立させる、二方面作戦ではなく実に三方面作戦を全て遂行することとなっています。実任務の増大の中の対応の困難さは想像できるところでしょう。

 今回の熊本地震について。二度の震度七激震が襲うとの、過去にない震災ではありましたが、東日本大震災のような東日本全域が数mから数十mの津波に襲われ沿岸部が広範囲に壊滅し原発事故が発生するという状況、1995年の兵庫県南部地震阪神大震災のような広域火災という状況は、辛うじて回避する事が出来ました、が、死者49名、行方不明者1名、これは犠牲者40名となった2013年の台風26号伊豆大島ラハール災害を越え、東日本大震災以降最大の災害となってしまいました。

 熊本地震について、考えさせられる事象は、平時と有事の切替という点です。今回の地震は余震が断続的に発生するなか、極めて早い時期に災害救助体制が確立しましたが、インフラ復旧が応急復旧と完全復旧を同時に遂行するべく、結果的に応急復旧へ時間を要する事となり、空港施設や鉄道迂回路線設定等が遅れると共に、避難所運営についても、避難所運営主体が対処能力を持つ決定者へ集約出来ず、結果として救援物資が整理されない、あの湾岸戦争における過度な物資集積と整理配分の失敗、アイアンマウンテンと同じ状況となった事は否定できません。

 もう一つ、自衛隊への過度な依存です。この視点は被災者の視点からは配慮が欠けているとの批判も甘んじて受け入れる覚悟で指摘しますが、現在の生活支援への災害派遣任務は任務の規模と比較し部隊規模が大き過ぎるのではないか、という点です。自衛隊への災害派遣は人命救助に関する災害派遣、続いて行方不明者捜索に関する災害派遣、そして生活支援に関する災害派遣が要請され、自衛隊は現在生活支援に関する災害派遣として熊本県において災害派遣任務を継続中で、13000名が派遣されている、とのこと。

 災害対処人員が不足している、とは熊本県での現状との事ですが、自衛隊は戦闘を目的とした組織であり、この為の自己完結能力が災害時、通常のインフラが破綻している状況において独立し機能を発揮できるため、能力を維持できるのですが、電力が復旧し、交通もかなりの部分が復旧した現状では、自衛隊の輸送能力や整備能力等よりも民間の能力の方が遥かに大きくなります。給食支援一つとっても民間の方が調理総量では圧倒的に大きく、物資仕分についても方式は異なりますが、取扱量では桁が幾つも違うのです。

 自衛隊に可能となる能力と、民間の能力について、その特性を理解し防災任務を実施しなければ、当方が仄聞する限りにおいて、現在の被災地での任務に対する派遣規模が大きい、という状況があるようです。現在自衛隊は13000名の人員を展開させ、給食支援を三箇所、給水支援を三箇所、入浴支援を七箇所で実施しています、現在行方不明者捜索は完了していますので、この13か所での給食や給水と入浴支援へ各1000名の13000名が展開している事となります、配布給食は11日実績で1600食、給水は8t、入浴2400名、の支援を13000名で実施している、と。

 災害派遣の規模は、人員約13000名で延べ567200名が派遣、航空機は26機派遣中で延べ2195機が派遣、艦艇派遣は0隻と終了しましたが延べ300隻を派遣しました。その上で、現在の生活支援は、重要な任務ではありますが、給食支援三箇所1600食配給と給水に5t給水車二台未満の容量を三箇所で行い入浴を2400名へ提供するために13000名の部隊派遣、民間への任務移行の時期を防災担当者は真剣に考えるべきでしょう。

 一方で、平時手続きと有事手続きについて、被災者対応と避難所対応の主体は不明確であり、集積した物資や情報を管理する手法について、対応方法は例えば戦術研究のような新しい能力構築への投資が置き去りとされているほか、大規模災害へ対応する様々な機関の能力は年々変化している中、共同訓練等は形式的な手続きの報告会としての防災訓練を実施している程度でしかありません。復旧と復興への移行というあり方や、大量に集積される物資を管理し配布する新技術の普及は主体が無いまま、今日に至ります。

 自衛隊が本来求められる災害対処能力は、発災72時間の自己完結した空輸能力を発揮しての道路復旧までの輸送支援、発災100時間までの人命救助、停電復旧までの医療支援任務、水道網一部復旧までの給水支援、道路一部復旧までの給食支援、というものは考えられるのですが、その後の避難所運営は、全国規模ビジネスホテルネットワークの方が衛生面でのノウハウは大きく、給食支援等は指定協力企業として大手飲食店チェーン支援を受ける、避難所での物資仕訳等はイベント企画会社と平時から避難所毎の運営計画を構築し、道路と水道と電気が一部でも避難所付近までを連絡可能となった場合には、素早く移行できる体制が必要です。そして行政に求められるのは、これらを調整し情報を集約するシステム、そして有事の際にも確実に機能する通信基盤の整備である、と考えます。

北大路機関:はるな くらま
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平成二十八年度五月期 陸海空自衛隊主要行事実施詳報(2016.05.14/15)

2016-05-13 22:31:10 | 北大路機関 広報
■自衛隊関連行事
熊本地震発災から明日で一ヶ月となるところです、被災された方へ重ねてお見舞い申し上げます。

現在西部方面隊が中心となり自衛隊は総力を挙げて生活支援に当たっています、この関係から今週末に予定されていました第3師団創設記念行事千僧駐屯地祭は、師団の災害派遣任務への展開の関係上、中止となりました。土曜日の予行と日曜日の本番共に例年一般公開が予定されていましたが、全面中止となっています。

新発田駐屯地創設記念行事、第12旅団HPを確認しましたところ、予定通り実施されるようです。明日土曜日に1400時から1430時にかけ市内パレードが行われ、日曜日1000時より記念式典及び訓練展示が行われます、新発田駐屯地には第30普通科連隊が駐屯しており、第2普通科連隊と共に日本海沿岸の防衛警備任務へあたっています。

さて、伊勢志摩サミットが近づいてい参りました、自衛隊は伊勢志摩サミットに合わせ伊勢湾岸地域へ護衛艦を展開させると共に早期警戒管制機を飛行させ不測の事態へ備え、加えて各国要人の輸送支援へ自衛隊がヘリコプターにより協力するとのこと、中部国際空港ではテロ対策として一部施設及び一部区域の開放が中止されているとのことです。

■駐屯地祭・基地祭・航空祭
・5月14日・15日:新発田駐屯地創設記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/eae/12b/
・5月14日・15日:(中止)第3師団創設記念行事…http://www.mod.go.jp/gsdf/mae/3d/

■注意:本情報は私的に情報収集したものであり、北大路機関が実施を保証するものではなく、同時に全行事を網羅したものではない、更に実施や雨天中止情報などについては付記した各基地・駐屯地広報の方に自己責任において確認願いたい。情報には正確を期するが、以上に掲載された情報は天候、及び災害等各種情勢変化により変更される可能性がある。北大路機関
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航空防衛作戦部隊論(第三六回):航空防衛力、拠点航空基地と国土防衛戦における法的後方支援基盤

2016-05-12 21:44:47 | 防衛・安全保障
■国土戦と法的後方支援
拠点航空基地と国土防衛戦における法的後方支援基盤という視点について。

拠点航空基地の場合は、後方の拠点となると共に平時には広報の拠点となります、広報は自衛隊においては平時の実戦として重要視されているもので、我が国中央官庁において防衛省ほど広報業務を重視している期間はありません。航空祭の支援を行うだけではなく有事の際における自衛隊への理解と協力の支援を受けるところになります。基地の拡大と共に土地接収を行う必要がどうしても生じます、武力攻撃事態法と国民保護法は防衛施設周辺における陣地構築や国民保護のための誘導措置等を盛り込んでいますが。

しかしいかに法整備がおこなわれた場合においても我が国は第二次世界大戦中の時代とは異なり、接収には理解と協力が必要となります。この為、航空祭は勿論、平素からの有事の際への協力関係を構築するためには常設の基地という位置づけは大きく、基地広報と住民の関係は有事の際に臨時に増設する施設では成り立ちません。また、有事の際の接収地域と民有地利用には補償交渉が必要となり、この部分については法務幹部と会計科の協力が必要不可欠となります。

勿論、法務幹部と会計科は平時の人員規模では対応できませんので第一線となる拠点航空基地に対しては全国の基地と航空自衛隊と協同する陸海自衛隊から人員支援が行われる事となるでしょうし、制度として実務経験及び予備勤務の制限などはりますが、可能ならば予備自衛官に法務幹部と会計科隊員を十分確保し、有事の際だからこそ増大する事務手続きを円滑に行う制度が必要ですが、受け入れる部隊が常設されているならば、補強する形で会計科隊員と法務幹部を増勢可能です。

法務幹部のほか、有事の際には国土防衛という視点から国土に位置する、つまり同胞の居住する市街地等が林立する国土での作戦には、防衛力という軍事科学のみで考える事は出来ず連絡幹部を基地周辺自治体へ送る必要が出てきまして、この観点から幹部自衛官に余裕を十分確保する必要があります、ただこれらの有事における関係は平時からの国民保護法制への取り組みの上での協力関係基盤を構築する必要がありますので、その受け手となる基地が必要、視点から拠点航空基地の位置づけは不変そのものでしょう。

一方、航空基地は有事の際には防空拠点となりその周辺部まで必要に応じ応急航空掩体を構築し対処する必要性を提示ましたが、周辺地域への影響はこれだけに留まらず、航空基地周辺に対空疎開の形で分散集積する事前集積品を必要に応じ基地へ搬入する、また、基地周辺の物資集積所の集積補充物資搬入などで、港湾や鉄道貨物駅付近と主要高速道路付近では大規模な交通規制が必要となり、場合によっては図上演習だけでも都道府県庁と周辺自治体に武力攻撃事態法指定協力企業と都道府県警に海上保安庁と国土交通省の統合の上での対処訓練を行う必要があります。

その上で、この対象とする基地をある程度限定しなければ、地方空港全てを有事の際に暫定的な基地として運用する場合でも、航空団の展開する拠点航空基地と同程度の綿密な訓練を行う事は容易ではありません。連絡幹部ですが有事の際には基地周辺全ての自治体との関係が必要となる一方、平時においては同時にすべての自治体と連絡幹部を置かず、日にちを分けて実施する事が出来ます。実は連絡幹部というものはかなりの人数が必要で、自衛隊が創設以来最大の動員を行った東日本大震災では幹部の不足が深刻となりましたが、平時の情報交換有無により手続きを簡略化出来る要素があり、その平時の拠点の意味大きいのです。

北大路機関:はるな くらま
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