北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

将来小型護衛艦の量的優位重視視点【2】 LAMPS軽空中多目的システムの水上版LSMPSという構想

2016-05-07 22:19:06 | 先端軍事テクノロジー
■LSMPSという構想
 将来小型護衛艦は護衛艦の数の不足を補うと共に、高性能護衛艦であっても同時に複数海域へは展開できない物理的限界への多面的アプローチという側面から提示するものです。

 護衛艦の数の不足、というのは、一定海域へ常時哨戒出動していなければならない海域が複数広域的に存在しまして、艦隊の護衛艦としての能力、これは軍事的な視点からのものなのですか、こちらよりもその海域に護衛艦が遊弋し警戒監視にあたっている、といういわば政治的にこちらは我が国の領域である、若しくは我が国はその海域に対して極めて強い関心を有している、という示威、政治的な役割がある事を挙げます。

 たとえ小型であっても、艦砲とミサイルを搭載し、潜水艦や水上艦艇と航空機を警戒する事が可能な日本の艦船が遊弋している、ということはそれだけで意味があり、他方で、大型護衛艦であってもその任務には対応する事は可能なのですが、一隻の護衛艦は同時に複数の海域に遊弋する事は出来ませんし、護衛艦が長期航海に対応していたとしても乗員の疲労度は、そもそもどれだけ水上戦闘艦の技術が発展しても乗っているのは人間だという点は変わりません。

 ハイローミックス、護衛艦隊に配備され機動運用に用いられる護衛艦とは別の水上戦闘艦として哨戒任務に当たるというものです。陸上自衛隊の89式装甲戦闘車と軽装甲機動車、の関係に似たもの、というべきでしょうか。若しくはアメリカ海軍のフリゲイト艦載ヘリコプターLAMPS軽空中多目的システムの水上版として、Light Airborne Multi-Purpose SystemはいわばLight Surface Multi-Purpose System、LSMPSというようなものとしての理解もできるかもしれません。護衛艦、しかしその性能云々よりもその護衛艦が一隻であっても遊弋し哨戒している、というだけで大きな抑止力にはなります。

 そして哨戒任務や沿岸部での任務に限定されていても、性能は無関係に護衛艦による哨戒任務を求められる海域に一隻投入する、その最低限度の性能を満たしている護衛艦であれば高性能艦であっても、例えばかつての護衛艦ちくご型のような護衛艦でも用を満たすような艦で当ても、一隻には変わりありません、他方、大型護衛艦でなければ対応できない任務は他にも確実にありますので、小型護衛艦を護衛艦隊とは別枠で建造し運用しておくのならば、大型護衛艦はその能力が求められる状況に集中できますし、その乗員も休息をとれます。

 一方、日本近海に侵入しようとする勢力に対しては小型の護衛艦で当ても航行し哨戒任務に当たっている事は確実に大きな抑止力となります、潜水艦であっても小型のソナーを以て航行している護衛艦が一隻居り、発見されたならば海上自衛隊が多数を運用するP-3CやP-1といった固定翼哨戒機とSH-60J,SH-60K哨戒ヘリコプターが大挙して展開する、という条件があるならば、潜水艦はその兆候を示すだけでもその後の数十時間から十数日間、の行動リスクを計算するでしょう。

 即ち有力な航空哨戒部隊、続いて展開する護衛艦に徹底して追尾される、という非常な脅威の下で活動する事を強いられます。将来小型護衛艦の量的優位重視、というものは兎に角、個々の性能に特化し優位性を求めるのではなく、大量に運用する数的優位とネットワークでの他の装備システムとの連携により全体で優位となる独自の運用体系を構築する、この為の海上における小型水上戦闘艦、というものを志向するものが必要だと考えます。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (6)
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