北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

巨大災害,次の有事への備え 02:東日本大震災で判明、充分ではなかった幹部自衛官の人員規模

2016-05-06 22:44:34 | 防災・災害派遣
■日本を構成する一七一五市町村
 東日本大震災、2011年の文字通り“有事”というべき状況下、突き付けられた問題点について。

 東日本大震災を受け、様々な方々の当時の話をお聞かせ頂いたところ共通する事例として、幹部自衛官の不足というものがありました。我が国では幹部自衛官、諸外国では将校や士官と呼ばれる指揮官が全人員の中において比較的比重が高く、一般幹部候補生や防衛大学校の定員がそもそも自衛隊の規模に対し多すぎるのではないかとの指摘があります。この視点は、指定職の区分と省庁規模という、日本の官僚制度の枠組において理解しているのですが。

 その一方で実際に震災が発生しますと、幹部自衛官が不足していた、ということが明らかになっています。具体的に不足していたのは、多すぎる市町村への連絡幹部の派遣とのことで、連絡幹部といっても幹部自衛官であれば他の方面隊や地方隊と航空方面隊の基地から引き抜けばいいのかという話かと問われればそうではなく、当該地位での防災情報にある程度意思疎通ができており、その上で統合任務部隊司令部との意思疎通が可能な幹部自衛官でなければなりません。

 我が国には1715もの市町村が今年度四月一日時点で置かれています。幹部自衛官の不足、とある刑事ドラマでは、事件は会議室で起こっているのではない現場で起こっているのだ、という象徴的な台詞がありましたが、実のところ巨大な組織同士が調整し動くという状況下、巨大災害においては様々な省庁間の調整と現場の調整が必要となります、第一線だけが独立してあらゆる支援と調整を超越した巨大な組織が存在するならば、こうした調整は不要となるのでしょうが。

 しかし調整会議と連絡幹部が必要となるような巨大災害においては、調整のための幹部とは文字通り人的後方支援の象徴的な存在となり、併せてこの調整要員無くしては対処出来ません。特に、巨大災害に際して、第一線は自衛隊の小銃小隊ではなく、地方自治体市町村の防災職員と土木職員に消防救急であり臨時吏員としての消防団員が初動を担い主力を展開します。勿論、末端の消防と救急だけであらゆる災害に対応できるならばこれに越したことは無いとはいえるのです。

 これはこれで民間防衛という視点からも理想的ではあるのですが、巨大災害の破壊力に対応できる自治体防災能力を平時から確保する事は現実的ではありませんし非効率となります。それでは大規模災害に対し、連絡幹部の派遣は自動化する余地はあるのでしょうか。具体的には、衛星通信機能を全ての市町村に維持し、その上で市町村長を首班とする臨時防災対策機構と自衛隊の統合任務部隊司令部が常時意思疎通を行う枠組みや通信設備を準備する事で対応は出来る可能性はあるのです。

 理想論ではありますが、地震に際し確実に機能する防災庁舎、津波災害や震度七規模の地震が繰り返される中で倒壊せず津波から孤立せず、発電能力を維持し衛星通信を行う機能を持たせることは、機上で考える程容易ではありません。更に連絡幹部は、自衛隊の幹部として訓練を受けた要員ですので、自治体の情報と自衛隊への要請を的確に調整し上級司令部へ送る事が可能です、自治体が求めている事と自衛隊の能力の乖離と情報の氾濫のまま未処理で送る事は逆に混乱を生むため、連絡幹部は必要です。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (6)
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