■G7伊勢志摩サミット
G7伊勢志摩サミットが明日より開幕します、世界の課題と将来へ責任ある先進七か国が解決策と協力方法を討議する場です。そこで、本日から国際社会への世界政治が突き付けられた課題について、考えてみましょう。
G7,我が国の安倍総理大臣、アメリカのオバマ大統領、イギリスのキャメロン首相、フランスのオランド大統領、ドイツのメルケル首相、イタリアのレンツィ首相、カナダのトルドー首相、一堂に会しての会議となります。世界的な景気後退、中央アジア中東北アフリカ地域の騒擾、ウクライナ危機、欧州難民危機、南シナ海中国軍進出、北朝鮮核開発問題、パナマ文書租税回避地問題、山積する問題ですが、地域ごとの対応に留まらず先進国が一致した対応を採らなければ解決は容易ではありません。
欧州難民危機、昨年より続くこの大きな人道危機が、欧州での欧州連合加盟国の団結へ大きな影響を及ぼしており、イギリス離脱討議やトルコ加盟問題と複雑化させています。この問題について、地中海での密航阻止に関する欧州諸国有志連合の試みは失敗した、とイギリス議会が報告書に明示しました。もともと、この難民流入は当初、シリア難民など内戦からの難民へ冠せられた欧州難民危機ですが、いつの間にか北アフリカ地域からの騒擾、続いて経済難民が、その後は単なる上昇志向者の移民が難民というかたちで流入しました。
元来欧州連合加盟諸国は域内自由の反面、欧州の壁と云われるほどの厳しい国境管理と両立させていたわけですが、ドイツ等一部の国が難民を歓迎すると誤解させる行動を政策として採用しました。難民と移民の不明確な分水嶺等の問題は放置されたままです。この結果、多くの難民が密航ブローカーの手引きにより、地中海をゴムボートで横断させられるという状況に陥り、この結果として、大量の犠牲者を出す事となってしまいました。
この問題が表面化した時点で、難民を移民として歓迎する行動はその増加を助長するのではないか、と危惧を示してきましたが、この課題が現実のものとなっているかたちです、勿論、難民に罪は無い訳であり、経済移民に対しても元々労働者として少子化解消へ歓迎する姿勢は歓迎されるべきでしたが、結果として、危険な行動に自ら飛び込む形での難民増加へ誤解させる政策を採った事は間違いなく、少々、思慮を欠いた施策が大量の地中海遭難者を出した、といえるのかもしれません。
アフガニスタンでの情勢悪化、欧州難民危機への背景にはこの問題が大きく影を落としている事は間違いありません。こうした中、タリバンの指導者マンスール師がアメリカ軍の無人機攻撃により殺害されました、マンスール師はアフガニスタンではなく隣国パキスタン領内において殺害されており、また、タリバンは昨年の指導者死亡に伴う交代から一年を経ずしてアメリカ軍により制圧された形となりました、マンスール師はここ数か月の無差別テロを中心としたタリバン攻勢を指揮していたことからアメリカは強硬手段に出た、としています。
タリバンは山間部が雪に閉ざされる冬季には攻勢に出ない為、今回、早い時期での攻撃を行った事となります、他方、タリバンはもともとアフガニスタンでのイスラム原理主義組織、つまりコーラン普及以前の原始的状態への回帰運動を掲げていますが、マンスール師が今回パキスタンに潜伏していたことから分かるように、その活動範囲は広域化しているところが読み取れるでしょう。
ISIL,活動地域が広域化し、更にテロ攻撃が主体となっている事が中東アフリカ地域全般の不安定化要素となり、更に様々な紛争地の問題を複雑化させ、欧州難民危機へ、更に欧州全域へのテロの拡散へ影響している事は世界への重大な問題と云わざるを得ないでしょう。この中で動きがありました、イエメン国内にて自爆攻撃を実施し41名が死亡したとの事です、イエメン内戦が停戦状況にありますが、イエメン内戦のさなかに深く浸透したものと考えられます、イエメンの拠点アデン市内の軍募集センターが自爆攻撃の標的となり、二度の自爆攻撃により犠牲者が増大したとの事でした、この地域はハディ暫定大統領派の制圧地域ですが、第三の勢力介入に内戦の停戦が不安定化するとの懸念が払しょくできません。
ISIL,シリアでも自爆攻撃を敢行しました、シリア地中海沿岸部のアサド大統領派勢力地域においてほぼ同時に自爆テロが敢行され120名以上が死亡、ISILが犯行声明を出しました、ISILが軍事攻撃を断念し自爆攻撃へ移行しているとのアメリカ政府の分析がつい先日だされたばかりですが、今回の規模はその中でも非常に大きいものでした、標的となったのはシーア派の集会で、バス停留所付近と病院なども襲撃されていると現地メディアが報じています。
イラクシリアでのISILですが、こちらについては沈静の道筋が見えつつあります、そして、ISILが過激派組織から国際テロ組織へ転換しつつある重要な転換点を迎えているのかもしれません。シリア軍はISILの首都として占領を続けている北部のラッカを隊群で包囲しつつあります。また、イラク軍はISILが制圧するファルージャに対し奪還札線を発動したとの事です、ファルージャはバクダッド西方にあり、ISILの勢力拡大の象徴となっていましたが、イラク軍により包囲され今回本格的な奪還作戦が発動しました。
ファルージャは2004年のアメリカ軍によるイラク治安作戦においてスンニトライアングルの要衝としてアメリカ海兵隊が第5海兵連隊を中心に4個大隊と戦車12両を投入し展開された大規模な戦闘は”ファルージャの6日間”と呼ばれています、今回奪還に当たるのはイラク軍で米軍を中心とする有志連合が航空支援を展開します、市内にはまだ市民5万名が残っており人道上の懸念もあるようです。
この沈静化への見通しと共に戦闘へ巻き込まれる非戦闘員の懸念は大きな憂慮すべき命題ですが、他方で、この問題へのアメリカの不関与の度合いが、結果としてロシアの中東進出を大きく促進した背景があり、欧州の大きな問題として昨年位置付けられた、ロシアのウクライナ介入に続く、ロシアの勢力圏拡大が新しい緊張関係を醸成しつつある状況を如何に安定化させるか、こちらも大きな課題といえるでしょう。G7伊勢志摩サミットは明日開幕、先進国の意志として一致した対応策を画定し臨むことが求められます。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)
G7伊勢志摩サミットが明日より開幕します、世界の課題と将来へ責任ある先進七か国が解決策と協力方法を討議する場です。そこで、本日から国際社会への世界政治が突き付けられた課題について、考えてみましょう。
G7,我が国の安倍総理大臣、アメリカのオバマ大統領、イギリスのキャメロン首相、フランスのオランド大統領、ドイツのメルケル首相、イタリアのレンツィ首相、カナダのトルドー首相、一堂に会しての会議となります。世界的な景気後退、中央アジア中東北アフリカ地域の騒擾、ウクライナ危機、欧州難民危機、南シナ海中国軍進出、北朝鮮核開発問題、パナマ文書租税回避地問題、山積する問題ですが、地域ごとの対応に留まらず先進国が一致した対応を採らなければ解決は容易ではありません。
欧州難民危機、昨年より続くこの大きな人道危機が、欧州での欧州連合加盟国の団結へ大きな影響を及ぼしており、イギリス離脱討議やトルコ加盟問題と複雑化させています。この問題について、地中海での密航阻止に関する欧州諸国有志連合の試みは失敗した、とイギリス議会が報告書に明示しました。もともと、この難民流入は当初、シリア難民など内戦からの難民へ冠せられた欧州難民危機ですが、いつの間にか北アフリカ地域からの騒擾、続いて経済難民が、その後は単なる上昇志向者の移民が難民というかたちで流入しました。
元来欧州連合加盟諸国は域内自由の反面、欧州の壁と云われるほどの厳しい国境管理と両立させていたわけですが、ドイツ等一部の国が難民を歓迎すると誤解させる行動を政策として採用しました。難民と移民の不明確な分水嶺等の問題は放置されたままです。この結果、多くの難民が密航ブローカーの手引きにより、地中海をゴムボートで横断させられるという状況に陥り、この結果として、大量の犠牲者を出す事となってしまいました。
この問題が表面化した時点で、難民を移民として歓迎する行動はその増加を助長するのではないか、と危惧を示してきましたが、この課題が現実のものとなっているかたちです、勿論、難民に罪は無い訳であり、経済移民に対しても元々労働者として少子化解消へ歓迎する姿勢は歓迎されるべきでしたが、結果として、危険な行動に自ら飛び込む形での難民増加へ誤解させる政策を採った事は間違いなく、少々、思慮を欠いた施策が大量の地中海遭難者を出した、といえるのかもしれません。
アフガニスタンでの情勢悪化、欧州難民危機への背景にはこの問題が大きく影を落としている事は間違いありません。こうした中、タリバンの指導者マンスール師がアメリカ軍の無人機攻撃により殺害されました、マンスール師はアフガニスタンではなく隣国パキスタン領内において殺害されており、また、タリバンは昨年の指導者死亡に伴う交代から一年を経ずしてアメリカ軍により制圧された形となりました、マンスール師はここ数か月の無差別テロを中心としたタリバン攻勢を指揮していたことからアメリカは強硬手段に出た、としています。
タリバンは山間部が雪に閉ざされる冬季には攻勢に出ない為、今回、早い時期での攻撃を行った事となります、他方、タリバンはもともとアフガニスタンでのイスラム原理主義組織、つまりコーラン普及以前の原始的状態への回帰運動を掲げていますが、マンスール師が今回パキスタンに潜伏していたことから分かるように、その活動範囲は広域化しているところが読み取れるでしょう。
ISIL,活動地域が広域化し、更にテロ攻撃が主体となっている事が中東アフリカ地域全般の不安定化要素となり、更に様々な紛争地の問題を複雑化させ、欧州難民危機へ、更に欧州全域へのテロの拡散へ影響している事は世界への重大な問題と云わざるを得ないでしょう。この中で動きがありました、イエメン国内にて自爆攻撃を実施し41名が死亡したとの事です、イエメン内戦が停戦状況にありますが、イエメン内戦のさなかに深く浸透したものと考えられます、イエメンの拠点アデン市内の軍募集センターが自爆攻撃の標的となり、二度の自爆攻撃により犠牲者が増大したとの事でした、この地域はハディ暫定大統領派の制圧地域ですが、第三の勢力介入に内戦の停戦が不安定化するとの懸念が払しょくできません。
ISIL,シリアでも自爆攻撃を敢行しました、シリア地中海沿岸部のアサド大統領派勢力地域においてほぼ同時に自爆テロが敢行され120名以上が死亡、ISILが犯行声明を出しました、ISILが軍事攻撃を断念し自爆攻撃へ移行しているとのアメリカ政府の分析がつい先日だされたばかりですが、今回の規模はその中でも非常に大きいものでした、標的となったのはシーア派の集会で、バス停留所付近と病院なども襲撃されていると現地メディアが報じています。
イラクシリアでのISILですが、こちらについては沈静の道筋が見えつつあります、そして、ISILが過激派組織から国際テロ組織へ転換しつつある重要な転換点を迎えているのかもしれません。シリア軍はISILの首都として占領を続けている北部のラッカを隊群で包囲しつつあります。また、イラク軍はISILが制圧するファルージャに対し奪還札線を発動したとの事です、ファルージャはバクダッド西方にあり、ISILの勢力拡大の象徴となっていましたが、イラク軍により包囲され今回本格的な奪還作戦が発動しました。
ファルージャは2004年のアメリカ軍によるイラク治安作戦においてスンニトライアングルの要衝としてアメリカ海兵隊が第5海兵連隊を中心に4個大隊と戦車12両を投入し展開された大規模な戦闘は”ファルージャの6日間”と呼ばれています、今回奪還に当たるのはイラク軍で米軍を中心とする有志連合が航空支援を展開します、市内にはまだ市民5万名が残っており人道上の懸念もあるようです。
この沈静化への見通しと共に戦闘へ巻き込まれる非戦闘員の懸念は大きな憂慮すべき命題ですが、他方で、この問題へのアメリカの不関与の度合いが、結果としてロシアの中東進出を大きく促進した背景があり、欧州の大きな問題として昨年位置付けられた、ロシアのウクライナ介入に続く、ロシアの勢力圏拡大が新しい緊張関係を醸成しつつある状況を如何に安定化させるか、こちらも大きな課題といえるでしょう。G7伊勢志摩サミットは明日開幕、先進国の意志として一致した対応策を画定し臨むことが求められます。
北大路機関:はるな くらま
(本ブログに掲載された本文及び写真は北大路機関の著作物であり、無断転載は厳に禁じる)
(本ブログ引用時は記事は出典明示・写真は北大路機関ロゴタイプ維持を求め、その他は無断転載と見做す)