北大路機関

京都防衛フォーラム:榛名研究室/鞍馬事務室(OCNブログ:2005.07.29~/gooブログ:2014.11.24~)

陸上防衛作戦部隊論(第五一回):ペントミック師団(五単位師団),戦車急縮小と高価な装甲戦闘車

2016-05-11 22:16:21 | 防衛・安全保障
■戦車急縮小と高価な装甲戦闘車
 五単位師団方式のペントミック師団、この方式の一つの利点は統合機動防衛力整備と南西諸島防衛や北方脅威増大という背景のもとで、論理展開を進めてきました。

 陸海空自衛隊の中でも従来の専守防衛を単純な本土決戦主義という平和憲法型防衛政策の想定外というべき近年の状況へ対応する中での海空重視政策へ、過度に防衛力を縮小する事で防衛力全体の均衡が破綻しないよう留意した、つまり無理をし過ぎない編成である点が特色です。本質的に戦車縮小という新防衛大綱下で更に人員規模を縮小する無理矢理な試案を提示したものが装甲機動旅団と航空機動旅団から成る広域師団編成案なのですが、言い換えれば陸上自衛隊が縮小し過ぎた戦車数の下で更に数万規模の陸上防衛力を縮小する無理難題へ、人員を縮小する分装甲戦闘車を配備して機動打撃力により精鋭化を実現しよう、という視点が本質でもあったわけです。

 さて、装甲戦闘車ですが、装甲機動旅団案に際し提示した案では、89式装甲戦闘車のような大口径機関砲と長射程の対戦車誘導弾を備えた高性能車両は理想的としながらも、大量に配備するには経済性が重要であり、対戦車ミサイルを省き、機関砲を35mmから25mmとすることで火器管制装置を射程に見合った程度のものとし、大量配備を実現する、としました。現行の通り89式装甲戦闘車を、搭載する79式対舟艇対戦車誘導弾は旧式化が進み、中距離多目的誘導弾車載化や01式軽対戦車誘導弾長射程型等を検討すべきとなりますが、25mm機関砲搭載案は、予算不足故の苦肉の策として提示した物に他なりません。

 この装甲戦闘車ですが、25mm機関砲搭載のものは、近年でも大量配備が2003年から開始されたイタリアのダルド装甲戦闘車や続いて近年配備が始まったフレシア装輪装甲戦闘車、フランスのVBCI装輪装甲戦闘車等事例があります、しかし小口径機関砲自体は1970年代のマルダーやAMX-10P,1980年代のアメリカ製M-2装甲戦闘車に、敷いて加えればシンガポールのバイオニクス装甲戦闘車程度で、それ以降は大口径化が基本となっています。実際、7カ国が採用し欧州標準装甲戦闘車の地位を占める事となったスウェーデンのCV-90/Strf-90は40mm機関砲を標準装備し、輸出仕様も30mmか35mm機関砲を搭載しています。

 世界ではほかにもドイツのプーマ重装甲戦闘車も30mm機関砲を搭載、スペインオーストリアのASCODも30mm機関砲を採用していますし、1980年代の時点で既にイギリスがウォーリア装甲戦闘車へ30mm機関砲を採用していました、25mmは少数派なのです。ただ、大口径機関砲を搭載した装甲戦闘車は、その射程に見合った目標識別能力と射撃精度が必要とされる為、火器管制装置がどうしても高価となります。事実、現在欧州で選定が進む装甲戦闘車は、プーマ、CV-90,ASCOD等防御力強化や情報伝送機能付与により89式装甲戦闘車よりも高価になっており、10式戦車の量産価格、58両生産時の単価7億円と同程度かプーマ重装甲戦闘車の14億円と10億円以上の装甲戦闘車も出てきました。

 何故装甲戦闘車が高価格化するのかと問われれば、火器管制装置の高度化により取得費用が大きくなるため、一発の対戦車火器で無力化されないよう防御力を強化する事で増大した重量と機動力が損なわれないよう高出力エンジンを搭載し、上昇した費用に見合う性能を求め様々な追加装備を搭載し効率性を高めようとして更なる高性能化と高価格化の悪循環に陥る、という背景があります、それならば戦車を量産した方がよい。すると、10式戦車を量産し数を揃えた方が全体として安上がりとなるのではないか、と代案が上がります。

 防衛計画の大綱が戦車定数を300両として防衛計画を画定しましたが、それによる弊害や経済的負担増大が起こるならば戦車定数を600両程度とする代案を示し比較できるようすべきではないか。重要なのは攻撃衝力持続性ですので、足りない戦車を装甲戦闘車で支援し、対戦車火器や敵装甲戦闘車等戦車砲以外の機関砲でも撃破し得る目標ながら相手が我が戦車を破壊し得る打撃力を持つ目標への打撃力を補完する、という手段の一環が装甲戦闘車で、従って戦車が充分保有できるならば随伴できれば高度な火器管制装置は不要です。

 装甲戦闘車を機甲師団である第7師団普通科連隊用装備として、またC-2輸送機に搭載可能な最大規模の装備という特性を活かし中央即応連隊や空挺団への少数配備に留め、その他の普通科部隊用装甲車両は軽装甲機動車と96式装輪装甲車及び同改良型に留める、無理に師団と旅団を装甲機動旅団と航空機動旅団へ二分化する事も無く装備を簡略化可能です。また、将来的に機動旅団を主体とした編成に改編するかは、まず師団を旅団型普通科連隊五個体制に改め、その上で更に二個普通科連隊を縮小するかどうかの防衛警備及び災害派遣上の検証を行う事も可能です。

北大路機関:はるな くらま
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コメント (3)
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