縄文小説を書いてしまえば、その小説の解釈は読者に委ねられると思う。そして、作者があまり意識していないことを読者の方から知らされることもある。今回の場合、『文化論的におもしろかった』とされた方が何名かいらした。確かに、今回の小説の柱は、5-6万年前に現在の人類の祖先はアフリカから出立し世界に広がっていったという、現在はほぼ定説化された理論をもとに仮説を展開し書いている。すると、人が平等なのと同じように、文化も本質的に平等といったらよいか、環境や歴史の差異により違いはあるが、本質的に優劣はなく平等だというイメージができてくる。文化の多様性のすばらしさを感じるというか。
さらに、もう一つ面白いことが導かれる。所詮同じ人間がアフリカから世界に散らばったわけであり、世界の全ての文化は紋来孤立的ではなく他の文化に対し開かれている、と言ったことだ。日本神話の一部がギリシャ神話の一部に酷似しているという現象があるが、その解釈はギリシャからシルクロードかなにかを通し伝来したとするなどが一般的だったように思う。しかし、日本の神話がシルクロードを通してギリシャに伝わったとか、本来二つの神話の同根に遠い祖先の神話の原型があったなど、似ていることの理由はいろいろと浮かぶ。
マリア・ギンブタスの『古ヨーロッパの神々』という本がある。この本はなかなか刺激的であり世界的にも有名な本だ。本の中にはギリシャ以前の古ヨーロッパの土偶などが沢山掲載され分析されている。それは、私たちが普段イメージする西洋とはかけ離れ、縄文の土偶や石棒などと不思議なほど似ていたりする。例えば6000年前といったとき、女神の世界があり、森の文化があり、遺物の形も不思議に似ていて、これは縄文だといっても納得できそうなものもある。ユーラシア大陸の東と西で常識的?には遠くて交流のありえない文化どうしなのだが。
いくら遠くて危険な場所でも、行きたいという動機があり、環境があれば人は夢を実現してしまうのではないだろうか。
新しい体験 6/10
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森 裕行 | |
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