flow Trip -archive-

「漂い紀行 振り返り版」…私の過去の踏査ノートから… 言い伝えに秘められた歴史を訪ねて

鍋づる万灯

2008-08-16 00:00:35 | 民俗・伝承

(愛知県新城市市川 万灯山 市指定無形民俗文化財)
 昨年は見ずじまいだった鍋づる万灯を遠望した。当初は、行われる市川集落へ出向こうと考えていたが、松明を持った集団がいるだけで特徴がなく分かり難いという地元の情報をいただき、急遽、直線で約2km離れた対岸の「有海」からに変更した。そこでは大勢の観客がいると思いきや私だけであり、時折通り過ぎる住民が数人立ち止まるだけであった。そして、とあるケーブルテレビの取材の人が訪れ、私に「どの山に上がるのですか?」と尋ねてきた。付近の住民たちも「どの山だっけねぇ」と、口々に言う有り様だったが、無理もない、年に一度、数十分間灯るだけの行事であるから。然し、よく見ると一つの山が、伐採された木々や山道が「鍋づる:囲炉裏鍋の釣り手」の形を成していた。
  
 「鍋づる万灯」は、平安末期から鎌倉初期頃に、山伏によって伝えられた送り火の風習であるという。集落の各戸が三本ずつの松明を持って万灯山に登り、鍋づる状に並んで松明を地面に突き刺し、日没過ぎになると火を点けるものである。近年は、集落の人口減少によって松明の数が減り、他方からの応援で「鍋づる」の形を維持しているという。

 間もなくして、今年の万灯も終了した。


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コメント (2)
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