「映画を見ない人生よりも、見る人生の方が豊かだ」この言葉は映画館「大黒屋」の三代目館主が言った言葉だそうだ。最近映画づいている私はこの言葉に共感しながらこの映画を見た。
最近の私はすっかり映画づいてしまった。
それは映画が私たちシニアにとってはコストパフォーマンスに優れたエンターテイメントだと思うからだ。
私たちシニアはいつでも僅か1,000円でおよそ2時間の間、さまざまな世界に遊び、いろいろと思索させてくれるのが映画である。
今回の映画「小さな町の小さな映画館」は以前に蠍座で予告編を見て興味を抱き、5月14日(土)に見たものである。
映画は人口1万4千人の北海道浦河町に93年にもわたって営業を続ける映画館「大黒屋」をめぐるドキュメンタリーである。
映画館「大黒屋」4代目館主三上雅弘夫妻とその母親の三人を中心として、映画館に関わる街の人たちが次から次へと登場してくる。
今では人口10万~20万の都市でも映画館が消えていく時代だという。それがなぜ人口1万4千人の街で今日まで続けてこられたのだろうか。
第一は4代目館主である三上雅弘さん夫妻と三上さんの母親の三人の「続けよう」とする気持ちの強さなのだろう。しかし、三上さんはそのことに肩肘張るようなところは少しもなく、淡々と今の状況を受け入れながら営業努力は怠らずに努めているといった姿である。
一方、街の人たちは「大黒座サポーターズクラブ」、「浦河映画を見る会」などを組織し、なんとか浦河から映画文化の灯を消さないようにと一生懸命に大黒座を支えている。
映画はそんな三上さんの家族、街の人たちを淡々と映していく。その淡々として映し出すだけで、決して声高に何かを主張しないだけに、その底流に映画を愛する制作者の思いがずーっと流れているように感じた。
4代目館主の三上さんはその朴訥とした語り口で「映画館で映画を見るのは、母親の胎内にいるときのような気分になる」と語っている。
母親の胎内と似ているか否かは私には判断できないが、映画館で映画を見ることが、自宅のテレビでDVDを見るのとは明らかに違うと私も思っている。
冒頭に紹介した3代目館主の言葉「映画を見ない人生よりも、見る人生の方が豊かだ」そんな思いに共感する浦河町の人たちがたくさん増えて、これからも小さな町の小さな映画館が続いていくことを願いたい。
私もいつか「大黒座」を訪れてみたいと思った…。