試写会を終え「えーっ、これで正規の入場料を払って観るのは辛いなぁ…」というのが、私の偽らざる感想だった。漫画家・手塚治虫氏が描いた原作は評判が高いと聞くが、映画ははたして原作の魅力を描ききれたのだろうか?
試写会は私たちのようなシニア層には当選確率が低いという私の思い込みがあり、あまり応募することはないのだが、友人の誘いもあり応募したところ招待券が舞い込んだ。
HBCの主催による映画(アニメ)「ブッタ」~赤い砂漠よ!美しく~の試写会が4月27日(水)道新ホールであった。
私はそれほど映画を鋭く批評できる力もないし、まして試写会で招待された場合には辛口の批評は控えるようにしている。
しかし、今回の映画についてはどうしても辛口にならざるをえなくなった。
その訳は…。
ストーリーが弱いと思った。
舞台は2500年前、現在のインドに多数の王国が乱立し争いが絶えなかった。その中に世界の王になると予言された男の子が誕生した。シャカ国の王子ゴータマ・シッダールタ(後のブッダ)である。
そのゴータマが国を支配する厳しい階級社会に疑問を抱き、家族、身分、富の全てを捨て悟りの道に入るという内容である。
私は当然ゴータマが仏門に入ることを決意するまでの迷いや逡巡、苦悩が全編を通じて描かれていると思った。そこの描き方が決定的に弱いと思った。
私はゴータマ一人を中心に描けばと思ったのだが、映画ではゴータマのシャカ国に対抗するコーサラ国のことを描くことにもかなり割いていたのだが、その必然性をあまり感じなかった。
仏教を開祖したとされるブッダである。求道者として生きようと決心するまでのゴータマの心の迷いや苦悩を深く知りたいと思ったのだが…。
映画を観終わって会場を後にするとき、手塚治虫の原作を読んだという友人が「原作はもっと違った描き方をしているんだけど…」と話していた。
映画は制作者の意図によってどのようにでも編集できるものである。それだけに制作者には映画を創る醍醐味があるのだろう。しかし、それだけに(と言葉を敢えて重ねる)制作者の責任も大きい。
私の感想はかなり辛口のものとなったが、はたして他の方々にはどう映ったのだろうか?
私の批評をさらに批評してくれたらとも思う。
映画は5月28日(土)から全国ロードショーが始まるという。