石油由来のポリエステル製品を再利用(リサイクル)することは広く認知されてきたが、これまでの技術では一度の再利用がせいぜいだった。それが何度も繰り返し再利用する技術が確立したという。そんな夢の技術を開発した会社の経営者の話を聞いた。
今日(11月8日)も一日「ビジネスEXPO」が開催されていたアクセスサッポロに出向き、セミナーを聴き続けた。ただ、午前のセミナーは私の関心外(「知的財産を活用した経営戦略」)だったこともあり、急遽予定を変更し「ビジネスEXPO」の展示会場を見て回った。さて、今回のレポは昨日の「夢への挑戦 特別記念講演」として行われた二つのセミナーについてレポートすることにする。
その一つは(株)日本環境設計の会長である岩元美智彦氏が「次世代ビジネスのヒント~誰も出来なかったことへの挑戦~」と題する講演だった。この講演が私にはとても魅力的に映った。ここからのレポは、こうした科学の世界に疎い私のレポのためあるいは正確でないところがあるかもしれないことをお断りしておく。岩元氏のお話では、日本環境設計では「経済と環境が両立する循環型環境社会の実現」を目指しているということだ。
※ 日本環境設計がイメージするポリエステル製品の循環図です。
その理念を具体化したのがポリエステル製品の半永久的なリサイクル化だそうだ。従来のポリエステル製品のリサイクルは、回収したポリエステル製品(ペットボトルなど)を溶かしてチップ化し、それを糸にして衣料を作り再利用していた。しかし、この方法ではそれ以上の再利用は難しかったそうだ。ところが、日本環境設計の技術は回収したポリエステル製品を元素レベルまで分解して再生を図る技術を開発したという。(岩元氏のお話ではH〈水素〉、C〈炭素〉、O〈酸素〉を分離して再構成するということだ)したがって、ポリエステル製品の衣料が何度も作り変えられるということなのだ。ということは、これまでその多くを石油に頼っていたポリエステル衣料が石油に頼らなくてもよくなることを意味する。つまり「地下資源から地上資源」に取って代わることを意味すると岩元氏は強調された。岩元氏は世界から地下資源争奪の争いが無くなると戦争やテロが無くなり、CO2の削減にも繋がるという。こうした夢のような技術が日本から生まれたことを誇りに思うし、日本環境設計のような会社が次々と誕生してくることを願いたい。
続いての講演は(株)山上木工専務の山上裕一朗氏が「津別から世界へ ~地域の魅力は企業の力~」と題してお話された。山上木工は、来る東京オリンピック2020のメダリストに贈られるメダルの木製ケースの受注に成功したことで注目を浴びる木工会社である。山上木工は社員22名の小企業である。しかし、山上氏が工作機械メーカー(森精機)に在籍した経験を活かし工作機械を積極的に導入することによって小さいながらも各方面から注目を浴びる木工会社に変貌してきたそうである。そうした中で製品の販路を海外にまで視野を広げつつあるとのことだった。
※ 山上木工が受注することになった東京オリンピック2020のメダルケースです。
メダルケースの受注の秘話もうかがったが、山上氏としては次の3点を強調され、意気軒高なところ見せてくれた。その3点とは、①零細企業でも、ド・ローカルで世界と戦える。②すぐやる。必ずやる。できるまでやる。ことをモットーとしたい。③近い将来、ローカルが都会よりイケてる時代が必ずくる。と受講していた北海道の、小企業の経営者に、そして将来起業を夢見る若者にエールを送った。
その後、この日の最後にはオリンピック女子レスリングの金メダリスト吉田沙保里氏がスペシャルトークのゲストとして登場した。テーマは「“夢追い人”からビジネスマンへ~心に響く応援メッセージ~」と題して札幌の女性経営者(氏名は失念した)の質問に答える形でトークを展開した。内容的には失礼ながら、特に取り上げてレポするようなことはなかったと記憶する。ただ、吉田沙保里さんはテレビで見せる姿そのもので飾ることなく、フランクな話し方で非常に好感が持てた。現在は、マスコミへの露出や、講演活動などを主とした活動のようだが、彼女にはやはり豊富な経験を後輩に伝えることが大きな使命だと思われる。ぜひそうした面での活躍を願いたい。