特異な形状をもった「石山緑地」は、訪れた者が異空間に誘い込まれたような錯覚に陥る。特にネガティブマウンドと称する「石の広場」はまるでヨーロッパの古代遺跡に迷い込んだようにさえ感ずる。石山緑地は、間違いなく札幌市を代表する公園と言って良いだろう。
※ 「石山緑地」を代表するネガティブマウンド(野外ステージ)です。
石 山 緑 地 118,810㎡(ドーム2個分強)
「石山緑地」の場所を説明するのは難しい。これまで何度も行ったことのある私でも今回訪れた時には迷ってしまったほどである。ここでは札幌市南区の石山地区にあるとだけ説明しておこう。
「石山緑地」の指定は1993年と比較的早くから指定されている都市緑地である。辺り一帯は「札幌軟石」が産出された場所で、明治年間から昭和初期にかけて盛んに発掘された跡である。緑地は中央に道路が走り、大きく北と南のブロックに分かれる。(緑地マップ参照のこと)異空間に誘い込まれたような錯覚に陥るのは南ブロックの方である。
南ブロックは、札幌軟石の石切り場跡に5人の彫刻家たちが札幌軟石を活用した彫刻やさまざまなテーマの広場を形成した緑地である。
「石山緑地」と刻まれた園名板(石)のところから中に入ると、「芝生広場」、「水の広場」と続く。水の広場には「スパイラルスプリング」という大きな彫刻があり、夏は水が通っているのだが、コロナ禍ということもあり水は通されていなかった。
※ 緑地に入った直後にあった「手つなぎ石」と題する彫刻です。
※ 通常はこのスパイラルスプリングの塔の上から水が溢れ出しているのですが…。
※ そうしたその水がこのスパイラルな水路に流れ込むはずなのですが…。
続いて、沈黙の森、オブジェ「赤い空の箱」の前を通り「石の広場」に出る。ここに「ネガティブマウンド」と称する野外ステージがある。札幌軟石を用いて円形状に階段席を設けたところなどは中世ヨーロッパの野外劇場を彷彿とさせる。また広場の背景は切り出されずに残った札幌軟石が広場を覆うように見上げるほどの崖状に聳え立っている。
※ 南ブロックはこうした切り出されずに残った札幌軟石があちこちに顔を出しています。
※ 東屋風の建物も他とはちょっと違った雰囲気です。
※ 東屋風の中にあったテーブルです。これは札幌軟石ではないように思われますが…。
※ 灰色一色の空間の中で、まったく異色、異質なオブジェが目を惹きます。
※ 「石山緑地」のシンボル、ネガティブマウンドです。高いところから撮るとなおその素晴らしさが伝わるのですが…。
最奥部は「彫刻広場」と称されたところだが、そこにあった彫刻は直線状の同じような形のものばかりでやや期待を削がれた思いがしたのは残念だった。
※ 彫刻広場です。私が見逃していることも考えられますが、ちょっと寂しい。
※ この背景が異空間的雰囲気を醸し出しています。
さらに一帯に配されたベンチなどもオリジナルな形状のベンチが目を引いた。
※ 緑地内に配されたベンチも磨きこまれた石が鎮座していました。
※ 緑地内の街灯の基部にも石が嵌め込まれて…。
続いて北ブロックであるが、こちらはこれまで訪れた緑地と大同小異という感じで、ゲートボール場、テニスコート、コンビネーション遊具などが配された都市公園風の造りとなっていた。
※ 早くに公園化されたところにはこうした使われなくなったゲートボール場が目立ちます。
※ テニスコートは崖下にあり、崖のところに札幌軟石の切り出し跡が…。
※ 子どもたちのためのコンビネーション遊具も備えられて…。
「石山緑地」の特に南ブロックは、これまでの私の緑地観を覆すほどのものだった。その土地の特徴を最大限に生かし、異空間とも思える緑地を創り出したことは一札幌市民としても誇らしい思いだ。札幌の歴史を、そして産業を伝える公園として広くPRして良い緑地だと感じた。
※ 北ブロックにはこのような森の中を散策する通路もありました。
※ 北ブロックで唯一、南ブロックとの共通点となるモニュメント(?)がありました。