ジャズとクラシックの融合…、あまり聴き慣れていないだけに多少の戸惑いはあった。しかし、場数を踏んでいるだけに寺久保エレナの演奏は堂々としたものだった。そして札響の単独の演奏も楽しむことができた。
昨日(4月15日)午後、映画を鑑賞したその足で、札幌コンサートホールKitaraで開催された「ロジネットジャパンチャリティコンサート」に足を運んだ。チャリティーとはいえ、それは観客に対してのものではなく、チケット売上金の一部を各種団体に寄付するということであって、チケットそのものは多少割安の設定ではあったがそれなりの金額で販売されたものだった。
コンサートは第一部がアルトサックスの寺久保エレナと札幌交響楽団の共演、第二部が札幌交響楽団単独の演奏という構成となっていた。
寺久保エレナについて私は何の予備知識も持ち合わせてはいなかった。プログラムを拝見すると、札幌で生まれ育ち、早くからその才能を開花させ、バークリー音楽大学へ日本人初のフルスカラシップ(全額奨学金)で留学するという快挙を成し遂げた才能だという。現在はニューヨークを拠点に活動しながら、マンハッタン音楽大学院で研鑽を重ねているというジャズ界の才媛だそうだ。(これは大物!! 現在30歳だそうだ)
寺久保エレナが札響と共演したのは次の5曲である。
◆ディジー・ガレスビー/チュニジアの夜
◆カーギー・カーマイケル/ジョージア・オン・マイ・マインド
◆山下洋輔/ノース・バード
◆寺久保エレナ/ロッキー
◆ガーシュイン/「すべてを知っている場所」からの便り
お気づきと思うが、寺久保は作曲も手掛けているようである。また日本ジャズ界の巨匠山下洋輔が作曲した「ノース・バード」は寺久保エレナのために作曲した曲だそうだ。寺久保の演奏はさすがに音量も豊かで堂々としたものだった。(もっとも私の席からは繊細な音を聴きとることはできなかったのだが…)演奏の合間に指揮者の角田鋼亮氏とのやり取りの中で、フルオーケストラとの共演は特別感があると語っていた。確かにジャズの演奏の場合、普通はトリオやクワルテット、クインテットなど少人数での演奏が主流であろうから、その思いは理解できるような気がする。ただ、私の中では通常クラシックを演奏するフルオーケストラとジャズ奏法に親和性のようなものがあるのだろうか?という思いは 氷解しないままだった…。
第二部は前述したとおり札幌交響楽団の単独演奏だった。そこで演奏された曲目は…、
◆シベリウス/交響詩「フィンランディア」op.26
◆ボロディン/交響詩「中央アジアの平原にて」
◆リムスキー=コルサコフ/スペイン奇想曲 op.34
以上の3曲だった。いずれの曲も手練れた札響の楽団員による演奏はいつ聴いても心地良いものだった。特に私は最初の「フィンランディア」の演奏に心魅かれた。時には壮大に、そして時には繊細に紡ぎ出す音は文字どおり交響詩の醍醐味を与えてくれる。この「フィンランディア」はフィンランド国民から熱狂的に受け入れられ、歌詞がつけられ今や第二の国歌となっているという。ぜひ歌詞が付いた歌唱曲を一度聴いてみたいと思う。
余談的なことを二つ記したい。
一つは指揮者・角田鋼亮の若々しい指揮ぶりである。指揮台の上で跳ねるかのような指揮ぶりに好感がもてた。現在43歳ということだが脂の乗り切ったところか?いつかまた彼の指揮を楽しみたいと思う。
二つ目はつまらぬことである。私の席がちょうど指揮者の背中を正面から見る席だった。そこには第二ヴァイオリンの方々が着席し演奏していた。その第二ヴァイオリンの方々の中に3人の女性がいた。いずれもが半そで姿だったため、白い腕が正面に見えた。するとその3本の腕が、その角度、動きが見事にシンクロしている様が面白く感じた。プロフェッショナルな音楽家たちが演奏するのだから当たり前と言えば当たり前なのだが、見事にシンクロしている様は面白い発見だなぁ、と思いながら演奏を楽しんだ私だった。
なお、アンコール曲は◆エルガー/行進曲「威風堂々」第1番だった。この曲もよく聞き慣れた曲だったこともあり、良かったぁ…。
※ 掲載写真は全てプログラムから借用しました。