毎年3月末、札幌市教育文化会館で行われる「おバカな高校演劇対決」を楽しみにしてきた。しかし、13回続いたこの催しも今回で最後だという。名残惜しみながら、高校生たちの最後の舞台を楽しんだ。
3月28日(日)夕刻、札幌市教育文化会館で「おバカな高校演劇対決」を楽しんだ。今回出演した高校演劇部は、大阪精華高校、札幌藻岩高校、滝川高校の3校だった。このイベントは、現在滝川高校演劇部の顧問をされている二瓶耕一氏が札幌の高校演劇部の顧問をしていたときに、道内外の高校に声をかけて始めたイベントだとうかがっている。特色は大阪からわざわざ手弁当で参加している精華高校演劇部の参加である。精華高校のバカバカしさに徹底した舞台がこのイベントをより意味ある(?)ものにしているようにも私には見える。
当日の舞台は、その大阪精華高校の舞台で幕が切って落とされた。演題は「一生懸命演劇部」と「おしゃべりはやめて」という2本立てだった。精華高校の舞台はこれまで同様のドタバタ劇でお爺ちゃんにはイマイチその面白さが伝わってこない。でも若い人には受けているんだろうなぁ…。「おしゃべりはやめて」の方は、昨年コロナ禍のためにこのイベントが中止となり参加できなかったOGが参加していたことが印象的だった。
2番目に登場したのは札幌藻岩高校である。彼らの演目は「かくれんぼ2021」という舞台だった。私にはこの藻岩高校の舞台が一番しっくりくる舞台だった。というのも、“かくれんぼ” という誰もが幼いころに遊んだ体験をもつものを題材として、そこに現代高校生らしい笑いやオーバーアクションも挟みながら、感動の舞台を創っていく巧さを感じた。藻岩高校の舞台はこれまでも何度も見させてもらっているが、客席からの共感を呼ぶ舞台が多かったように思う。
最後はこのイベントを主宰する二瓶耕一氏が指導する滝川高校が「ステキな舞台の作り方」という演劇を披露した。精華高校のテーマも演劇部志望者が減少しているという危機感を題材にしていたが、滝川高校も僅か4人の部員で、その少なさを補うために廃材部員という廃材で作った人形もキャストに加えるという奇手を編み出し、さらには黒子役で顧問も出演するという舞台を創り出した。その努力は買えるとしても客席の共感を得られたかどうかの評価は保留することにする。
感動はその後にやって来た。第13回を最後にして最終回を迎えた「おバカな高校演劇対決」の最後を飾り、3校に出演者全員が舞台に集合し、ミュージカルのレ・ミゼラブルで歌われた「民衆の歌」の歌詞を高校演劇讃歌の内容に変えて、出演者全員がお腹の底から歌うさまが素直な感動を呼んだ。彼らが心の底から演劇を愛していることが私に伝わって来たからだ。私もまた高校演劇を心から楽しみにしている一人である。これからも別の舞台を追いかけたい…。